執筆:窪田真之

今日のポイント

  • 3月のトランプ・イベントはことごとくネガティブ。先週は、保護貿易強化を打ち出し、中国や日本に矛先が向けられる可能性が出たことが嫌気され、日経平均は下落。
  • 日米とも景気回復色が強まっており、2017年の前半は、政治不安があっても日経平均上昇は続くと予想。

(1)日米とも景気回復 それでもトランプ・不安拡大で日経平均下落

先週の日経平均は、1週間で353円下がり、18,909円となりました。日本も米国も、景気回復の兆しが強まっていますが、トランプ・不安の拡大で、日経平均は売られました。

日経平均日足:2016年11月1日―2017年3月31日

(注:楽天証券マーケットスピードより作成)

日経平均は、2017年に入ってから、おおむね18,900-19,600円の狭いレンジのボックス圏で推移しています。先週は、その狭いレンジの下限を試したかたちとなりました。

(2)トランプ・イベントの市場評価

昨年11月にトランプ氏が大統領選に勝利して以降、世界の金融市場は、「トランプ期待」と「トランプ不安」に、振り回されています。

トランプ・イベントの市場評価:2016年11月―2017年3月

(注:楽天証券経済研究所が作成)

3月に入ってからのトランプ・イベントは、ことごとくネガティブです。3月6日の入国禁止令は、1月27日に発令した大統領令(中東・アフリカ7カ国からの入国一時禁止令)が一時差し止めに追い込まれたことを受け、内容を一部改訂して出したものでした。ただし、これにも反対意見が多く、3月16日に一時差し止めとなりました。入国禁止の大統領令を2度出して、2度も差し止めとなったことから、大統領の政策実行力に疑問符がつきました。

トランプ大統領に大きな失点となったのが、オバマケア(医療保険制度改革)の代替案を議会に提出したが、身内の共和党の賛成が得られず、撤回に追い込まれたことです。共和党を主導して政策を実行する能力が低いと判断され、大統領が公約している大型減税や公共投資の実現性も疑問視されました。

3月16日発表の予算方針は、軍事費を大幅に増やし、国際協力費と環境対策費を大幅に減らす内容で、国内外から批判を受けました。

3月29日には、米ギャラップ調査で、大統領の支持率が35%と、過去最低に落ち込んだことが示されました。

日本株にとって、ネガティブだったのは、トランプ政権が、再び、保護貿易主義の政策強化をターゲットとし始めたことです。3月31日には、中国や日本をターゲットとして、貿易不均衡の原因になっている不正行為がないか調査する大統領令を打ち出しました。

米国は、過去に輸入品に関税をかけるなど保護貿易政策を取る時、常に、「相手国が不公正な行為をしているので、制裁するために関税をかける」と表明してきました。今回も、その方法をとって、国境調整税の導入などをはかってくると考えられます。

2月の日米首脳会談以降、トランプ大統領からは、日本を名指ししての批判は出ていなかったのですが、貿易問題に踏み込むにつれ、日本への批判が復活する可能性もあります。

(3)景気指標は良好

先週発表された日本の景気指標には良好なものが多く、景気・企業業績に特に不安はありません。

31日に総務省が発表した、日本の2月の完全失業率は2.8%と、1月よりも0.2ポイント低下しました。雇用情勢が一段と改善していることがわかりました。人手不足が深刻な産業分野では、今後賃上げや料金の引き上げが広がると予想されます。31日に経済産業省が発表した2月の鉱工業生産指数は前月比+2.0%で好調でした。

今朝(4月3日)発表予定の3月の日銀短観では、製造業の景況感の改善が見込まれており、注目されます。

中国の景況も改善が続いています。中国国家統計局が発表した3月の製造業PMI(景況指数)は51.8と、前月比0.2ポイント上昇し、景況判断の分かれ目となる50を8ヶ月連続で上回りました。非製造業PMIは55.1と前月より0.9ポイント上昇しました。

(4)2017年前半は、株高が続くとの予想を継続

日経平均は、強材料(景気・企業業績の改善)と、弱材料(世界の政治不安・円高不安の拡大)の綱引きで、ボックス圏の動きがしばらく継続すると考えています。

ただし、2017年前半は、企業業績の回復モメンタムが強く、政治不安はあっても日経平均の上昇が続くという予想を維持します。