今日のポイント
- 来週15日に米FRBが0.25%の利上げを実施する確率を、市場は96%と予想している。金融市場では利上げが確実視されている。
- 利上げを見込んでドル短期金利は上昇したが、長期金利は伸び悩んでいる。長期金利に先高感が出ないと、一段の円安も進みにくい。
(1) 金融市場は、来週の米利上げを織り込み済み
3月3日にイエレン米FRB議長は、「今月利上げすることが妥当」と述べ、3月14日・15日のFOMC(金融政策決定会合)での利上げを、事実上、予告しました。金融市場は、15日に0.25%の利上げ【注】が発表されることを織り込み済みです。
【注】0.25%の利上げ予想
米FRBが、政策金利であるFF(フェデラルファンド・レート)金利の誘導目標を、現行の0.5-0.75%から0.75-1%に引き上げることが、予想されている。
以下は、FF金利先物の価格変動から計算される、3月15日の利上げ確率です。3月8日時点で96%と、ほぼ確実視されています。
15日に0.25%の利上げが発表される確率(市場予想)の推移:
2016年12月30日ー2017年3月8日
米ドル3ヶ月金利は、利上げを織り込んで、以下の通り、既に上昇しています。
米ドル短期金利・長期金利の推移:2016年12月30日―2017年3月8日
来週、15日(水)に0.25%の利上げが発表されても、織り込み済みですから、為替や株に大きな波乱はないのでしょうか?
米利上げは、一般的に、ドル高(円安)・米国株安につながります。ところが、3月3日以降、金融市場は米利上げを確実視しているのにもかかわらず、NYダウは大きくは下がっていないし、ドル高(円安)もあまり進んでいません。なぜでしょう?
(2)米長期金利が伸び悩んでいることが気がかり
米利上げが確実視されるに至ったことに反応し、短期金利がすぐ上昇したのに比べると、長期金利(10年金利)の伸びは鈍いといえます。2.5%近辺から上へ抜けていません。より長い期間で見ると、長期金利が本格的な上昇トレンドに入ったとは、まだ言えません。
米長期(10年)金利の推移:2012年1月―2017年3月(8日まで)
2013年以降の長期金利の動きを、上のグラフにつけた3つの矢印①②③で説明すると、以下の通りです。
バーナンキ・ショックで長期金利が急上昇
2013年5月に当時FRB議長であったバーナンキ氏が「将来、金融緩和の縮小が必要になる」と発言したところから、ドル金利が急上昇。実際に金融緩和の縮小(テーパリング)が始まる2013年1月の直前には、一時長期金利が3%を超えた。
グローバルなデフレ進行で長期金利が低下
米FRBは、2014ー2015年に、量的金融緩和を終了し、利上げを実施しました。ところが、その間、米長期金利は低下が続きました。資源価格急落・世界景気減速を受けて、世界的にデフレ・金利低下が進んだことが影響しました。
具体的には、米FRBは、2014年1月に金融緩和の縮小を開始、2014年10月に量的金融緩和を終了、2015年12月に最初の利上げ(ゼロ金利の廃止)を実行したが、2016年6月まで、長期金利は低下が続きました。
トランプ・ラリーで長期金利が上昇
長期金利は、世界景気の底打ち、回復を反映して、2016年7月から、底打ちしました。トランプ大統領が、大統領選に勝利した2016年11月から、上昇ピッチが加速しました。2017年に入ってからは、再び伸び悩んでいます。
長期金利はまだ、2013年12月につけた3%に到達していません。米FRBが利上げをしても、短期金利ばかり上がり、長期金利は伸び悩む可能性もあります。言い換えると、世界の金融市場はまだ、世界経済が本格的なインフレ・長期金利上昇局面に入ったとは認識していないことになります。
ドル円が、1ドル115円を抜けて、一段のドル高(円安)に向かわないのは、ドル長期金利の上値が重いことが影響している可能性もあります。
(3)今後の注目点
1ドル115円を抜けて円安が進むためには、ドル短期金利だけでなく、長期金利も上昇する必要があると思われます。
来週15日に、予想通り米FRBが0.25%の利上げを実施した際、以下の3点に注目したいと思います。
- 6月の再利上げ予想が広がるか?
- ドル長期金利が上昇するか?
- 1ドル115円を超えるドル高(円安)が進むか?
予想通り、利上げがあった後の金融市場で、上記の①~③がすべて「はい」になると、日経平均は一段高になると予想されます。
私は、すぐに6月の利上げ予想が高まるとは考えていません。ただし、年内に再度利上げがあるとの予想は続き、ドル長期金利は2.6%以上に上昇、1ドル115円を超えるドル高(円安)が進む局面があると予想しています。そうなると、日経平均は20,000円台に乗せると予想されます。
ただし、①~③がすべて「いいえ」になると、日経平均は上値の重いまま、膠着が続くと考えられます。来週14-15日のFOMCにかけて、ドル金利・為替の動きに注目したいと思います。
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