執筆:窪田真之

今日のポイント

  • 本日11時からトランプ大統領の議会演説がある。内容により、為替・株が大きく動く可能性がある。
  • 最大の注目点は、大型の法人減税への言及の有無である。2月9日にトランプ大統領が「2~3週間以内に税制改革で驚くべき発表をする」と発言してから、市場では、大型減税実施の期待が広がっている。

(1)午前11時からトランプ大統領が演説

トランプ大統領は、日本時間で今日午前11時(米国では2月28日の21時)から、上下両院合同本会議で施政方針演説を行います。内容によっては、為替・株が大きく動く材料になる可能性もあります。

東京市場が、演説内容に反応する最初の市場となります。金融市場の反応として考えられるのは、以下の3つです。

  • ポジティブ・サプライズ(良くて驚き):金融市場に好感され、円安(ドル高)・株高進む
  • ネガティブ・サプライズ(悪くて驚き):金融市場に嫌気され、円高(ドル安)・株安進む
  • ノー・サプライズ(驚きなし):内容は事前の想定範囲内で、為替・株とも大きくは動かず

(2)トランプ大統領当選後に注目された主なイベントと、イベント後の金融市場の反応

トランプ大統領がからむイベントで日本株にとって重要なものは以下の通りです。

  • 2016年11月9日(大統領選)勝利宣言→ポジティブ・サプライズ

米国民の団結・国際協調を提唱し、大規模な景気刺激策を取ることを主張。暴言を不安視していた金融市場にとってポジティブ・サプライズとなりました。

  • 2017年1月12日当選後初の単独記者会見→ネガティブ・サプライズ

保護貿易・排外主義を打ち出し、マスコミと対決姿勢を強め、ネガティブ・サプライズとなりました。

  • 1月21日大統領就任演説→ノー・サプライズ

保護主義・排外主義のネガティブな内容を含むが、12日の記者会見でわかった以上の内容はなく、サプライズはありませんでした。

  • 1月28日 イスラム圏7カ国からの米入国を制限する大統領令発動→ネガティブ・サプライズ

米国内だけでなく海外にも批判が広がり、一時、ドル安(円高)が進みました。

  • 2月9日 トランプ大統領が「税制改革」に言及→ポジティブ・サプライズ

ホワイトハウスで行われた米航空大手首脳らを招いた会合で、「2・3週間以内に税制改革で驚くべき発表をする」と発言。大規模な法人減税が近く発表されるとの解釈が広がり、円安・株高が進みました。

  • 2月10日 日米首脳会談→ノー・サプライズ(ややポジティブ)

トランプ大統領から日本の自動車産業や円安に対する批判が出る懸念がありましたが、日本批判はなく、終始友好姿勢でした。日米同盟の重視性を強調する発言があったことが好感されました。ただ、具体的な政策に言及したわけではないので、金融市場で材料とはなりませんでした。

(3)今日の議会演説(施政方針演説)の注目点

主な注目点は、以下の通りです。

  • 「大型の法人減税」への言及があるか否かが最大の注目点

トランプ大統領が、2月9日に「税制改革で2-3週間以内に驚くべき発表を行う」と発言してから、既に2週間以上、経過しています。金融市場では、大規模な法人減税が実施されるとの期待が広がっています。

具体的な規模(金額)を含む、大規模減税への言及があれば好感され、ドル高(円安)株高が進む可能性があります。ただし、具体的な言及がなければ、ネガティブ視される可能性もあります。

  • 大規模な公共投資実施への言及はあるか

大規模公共投資について、規模や時期について具体的な内容が示されるか、注目されます。

  • 保護貿易・排外主義を強める発言はあるか

国境税の導入や、イスラム圏からの米入国制限など、保護貿易・排外主義の内容が具体的に出てくるとネガティブ。

  • 軍事費の歴史的増加について、どう説明するか

トランプ大統領は27日、2017年10月―2018年9月の財政年度について、軍事費を約10%(540億ドル:約6兆円)の「歴史的増加にする」と述べています。予算全体をどういう形にするかについて、説明するか注目。

  • 「オバマケア」に代わる政策方針を発表できるか

トランプ大統領は、オバマ前大統領が始めた「オバマケア」(医療保険改革)を廃止すると明言しています。それに代わる制度について、踏み込んだ発言があるか、注目されます。

歴代の米大統領は、就任から議会演説までの期間に重要な施政方針を固め、発表してきました。ところが、トランプ大統領は、ツイッターで一方的に情報を発信することが中心で、共和党主流派を巻き込んでの政策論を十分に煮詰められていません。

トランプ政権で主要な政策を執行する閣僚も、まだすべて決まったわけではありません。トランプ大統領が選んだ候補者の、議会での承認が遅れています。施政方針演説を行う時点で、決まっていない閣僚がいることは、異例です。

こうした状況から、今日行われる施政方針演説で、具体的な政策内容に踏み込むことはできないとの見方もあります。

それでも、サプライズの多い大統領ですから、突然、具体的な政策でサプライズとなる発表をする可能性も否定できません。11時からの演説に注目したいと思います。