執筆:窪田真之

今日のポイント

  • 訪日観光客の増加が継続。インバウンド関連株に見直し余地。
  • インバウンド・バブル(爆買い)復活は見込めないが、外国人観光客による日用品の買い物や、ホテル・新幹線などの利用は増加が続く見込み。ジャパンホテルリート投資法人に注目。

(1)訪日外国人観光客数は増え続けている

インバウンド消費【注】は、2015年まで増加が続き、日本の消費に重要な要素となっていました。特に、中国人観光客による「爆買い」が、インバウンド消費を牽引していました。

【注】インバウンド消費:外国人による日本への旅行を訪日インバウンドと言います。訪日観光客による日本での消費支出をインバウンド消費と言います。

ところが、2016年に入ってからインバウンド消費は失速しました。中国人観光客による「爆買い」が減少したことが影響しました。円高・人民元安で、爆買いのメリットが低下した影響もありますが、それ以上に大きかったのが、2016年4月の中国政府による関税強化です。

中国政府は、中国人観光客による日本での爆買いにより、消費需要が海外に流出していると考え、爆買い封じのために、海外で購入した商品を中国に持ち込む際にかかる関税を大幅に引き上げました。その後、中国人による日本での爆買いは鳴りを潜めました。

日本のインバウンド関連株(百貨店、家電量販店、免税店など)は、2015年まで株価が大きく上昇していましたが、2016年に入って軒並み急落しました。爆買いの恩恵を受けていたインバウンド関連株に、インバウンド・バブル崩壊の影響が及びました。

ただし、訪日外国人観光客数は、以下の通り、着実に増加が続いています。

訪日外国人観光客数の推移:2011年1月―2017年1月

(出所:日本政府観光局(JNTO)より楽天証券経済研究所が作成)

訪日外国人の数は、東日本大震災の影響で、2011年3-4月に一時減りましたが、それを除くと、過去5年間、一貫して伸び続けています。

訪日観光客数の前年比増加率の推移を見たのが、以下のグラフです。

訪日観光客数の前年同月比増加率:2015年1月―2017年1月

(出所:日本政府観光局(JNTO)より楽天証券経済研究所が作成)

2015年に高水準だった「前年比増加率」は、2016年に入って低下しました。それが、2017年1月には再び、増加しています。インバウンドが、改めて見直される局面に入っている可能性があります。

(2)インバウンド・バブル(爆買い)復活は見込めないが、インバウンド見直しはあり得る

2014-15年のインバウンド・バブル復活は見込めません。具体的には、中国人観光客が中国に帰ってから転売する目的で、高額品を大量に買い込む「爆買い」の復活は、見込めません。

ただし、訪日観光客数の増加により、外国人によるサービス消費や、自ら使用する目的で購入する日用品の購入は、これからも増えると考えられます。

インバウンド消費では、百貨店での高額品、宝飾品の購入は、本格的な回復は期待薄です。ただし、化粧品・食料品・OTC医薬品の購入や、ホテル・新幹線の利用は、引き続き拡大が見込まれます。

(3)ジャパンホテルリート投資法人(8985)に注目

業績好調が続く、ジャパンホテルリート投資法人(8985)に注目しています。東証に上場するREIT(リート:上場不動産投資信託)の1銘柄で、他の上場株式と同じように売買が可能です。

ジャパンホテルリート投資法人の株価推移

(注:楽天証券経済研究所が作成)

ジャパンホテルリート投資法人は、主に日本の観光ホテルに投資するREITです。2014-15年には、インバウンド関連株として注目され、株価が上昇しました。2016年には、インバウンド・バブル崩壊を受けて、下落しました。

業績は、以下の通り、好調が続いており、2月27日の株価80,300円で評価した、予想配当利回りは4.4%と魅力的な水準にあります。

ジャパンホテルリート投資法人の経常利益推移:2012年12月期-2016年12月期(実績)および2017年12月期(会社予想)

(出所:同社資料より楽天証券経済研究所が作成)

最低投資金額(1口購入)が80,300円と、小口投資が可能です。10口以上保有すると、6月末に株主優待(宿泊割引券5枚及びレストラン割引券5枚)が得られます(2017年2月27日時点で公表されている優待内容)。

好配当利回りのREITや株は、最近、長期金利の上昇を受けてやや軟調でしたが、長期の利回り投資対象として魅力的と考えています。

投資の参考銘柄:好配当利回りのREITおよび株

コード 銘柄名 27日株価:円 配当利回り 売買単位 最小投資金額:円
8985 ジャパン・ホテル・リート投資法人 80,300 4.4% 1 80,300
8951 日本ビルファンド投資法人 637,000 2.8% 1 637,000
8952 ジャパンリアルエステイト投資法人 621,000 2.7% 1 621,000
2914 日本たばこ産業 3,778 3.7% 100 377,800
9437 NTTドコモ 2,688 3.0% 100 268,750

(注:楽天証券経済研究所が作成)