執筆:窪田真之

今日のポイント

  • 好配当利回り株を、権利付き最終売買日に買うのは、統計的には損な場合が多い。権利落ち日に株価が下がってから買った方が有利になる場合が多い。
  • 月決算で予想配当利回りが3.1%と魅力的なローソンは、2月に入ってから株価が下がっており、配当取りの買いが入った形跡はない。したがって、権利つきの今日買っても問題はないと考える。ただし、統計的には権利落ち後に買った方が有利である。

(1)配当落ち後に、株価が大きく下がる銘柄に注意

2月には、2月末決算で、配当金や株主優待が魅力的な株を買う動きが広がります。2月決算銘柄を、今日2月23日(木)までに買うと、2月期末の配当金を受け取る権利が得られます。ただし、明日2月24日(金)に買っても、2月末の配当金を受け取る権利は得られません。2月24日は、「権利落ち日」といいます。

今日、2月決算銘柄を買うと、2月末決算の配当受取権が確定します。買ってすぐ配当受取権が得られるので、権利落ち前ギリギリに買うと「お得」と感じる投資家もいます。このため、人気の好配当利回株は、配当落ち直前に、配当狙いの買いで上昇しやすくなります。

現実には、権利付き最終売買日の買いが、かえって損になる場合もあり、注意を要します。今日は、それを説明します。

好配当利回り株の中には、権利付き売買最終日に向けて株価が大きく上昇し、権利落ち日に株価が大きく下落するものがあるので、要注意です。

以下に、配当取りの買いで2月に上昇した銘柄が、配当落ち後に大きく下がるイメージ図を示しています。

好配当の人気株:配当取りと配当落ち(イメージ図)

(注:あくまでもイメージで特定の銘柄の株価を示すものではない。楽天証券経済研究所が作成)

上の株価チャートは、2月末に1株当たり30円の配当を得られる銘柄が、配当取りの買いで60円上昇し、配当落ち後に60円下がるイメージを示しています。このチャートで1,060円のところで投資すると、すぐに2月末の配当金30円を受け取る権利が確定しますが、配当落ち後の数日で株価は1,000円まで下がってしまいます。受け取る配当金以上に、株価が下がるので有利な投資といえません。

(2)ローソン(2651)に投資する場合、今日と明日、どちらが良いか?

ローソンは、2月22日の株価8,050円で計算すると、配当利回りは年率3.1%です。7期連続で増配(1株当たりの配当金を増やすこと)、10期以上連続で営業利益が増加しています。安定成長の好配当利回り株として、評価できます。

ローソンの今期(2017年2月期)の配当金と配当利回り

権利付与日 1株当たり配当金 配当利回り
2016年8月末 125円(実績) 1.55%
2017年2月末 125円(予想) 1.55%
合 計 250円 3.1%

(注:配当利回りは、2月22日の株価8,050円に対する利回りを計算、楽天証券経済研究所が作成)

さて、ローソンに投資する場合、今日(2月末の配当金を受け取る権利つき)買うのと、明日(2月末の配当金を受け取る権利なし)買うのでは、どちらが有利でしょうか?

日経平均は2月に入り、22日までで1.8%上昇していますが、ローソンの株価は、2月に入ってから2.3%下がっています。ローソンに、配当取りの買いで株価が上げた形跡はありません。したがって、配当を受ける権利つきの今日買っても、問題はないと思います。

ただし、統計的に見た確率論では、権利落ち後の明日買った方が有利です(あくまでも統計的な推論で、実際にどうなるかは、わかりません)。

ローソンの過去12回の中間決算/本決算での、権利落ち日の株価変動幅と1株当たり配当金

中間決算/本決算 ①権利落ち日の
株価変動幅
②権利を獲得した
1株当たり配当金
権利付き最終日の買い
2016年8月末 -410 125 ×
2016年2月末 -200 122.5 ×
2015年8月末 -30 122.5
2015年2月末 -190 120 ×
2014年8月末 -170 120 ×
2014年2月末 -190 110 ×
2013年8月末 -320 110 ×
2013年2月末 -220 100 ×
2012年8月末 -160 100 ×
2012年2月末 -75 93
2011年8月末 -75 87
2011年2月末 -135 85 ×

(注:楽天証券経済研究所が作成)

上の表を見ると、配当を受け取る権利付き最終日に買うのは、3勝9敗で、損な場合が多いことがわかります。配当を受け取る権利がなくなる権利落ち日に、株価が下がったところで買った方が、統計的には有利ということになります。

(3)3月決算の好配当利回り株を買うのは、いつが良いか?

3月に日経平均が大きく変動しないと仮定すると、3月決算の好配当利回り株は、2月末―3月初に買うとタイミングが良い場合が多いと言えます。ただし、それは、あくまでも一般論です。今年どうなるかは、わかりません。

参考:3月末決算の好配当利回り株

コード 銘柄名 株価:円 予想配当利回り
8001 伊藤忠商事 1,639.5 3.4%
8316 三井住友FG 4,553.0 3.3%
8411 みずほFG 212.0 3.5%
8591 オリックス 1,764.5 2.9%
9433 KDDI 2,950.0 2.9%
9437 NTTドコモ 2,698.5 3.0%

(注:予想配当利回りは、1株当たり年間配当金(会社予想)を2月22日の株価で割って算出、楽天証券経済研究所が作成)