今日のポイント
- 都心は不動産ブームの様相を呈している。その恩恵で、大手不動産株は、軒並み最高益更新の見込み。
- 業績好調でも、不動産株は上値が重い。不動産市況がやや過熱していることが、警戒されている。個人投資家には、不動産株よりも、平均分配利回りが約3.7%のREIT(リート:上場不動産投資信託)の方が人気がある。
(1)不動産ブーム続く
アベノミクスが始まった2013年以降、景気回復と異次元金融緩和の効果で、不動産需給が改善しました。今、都市部は、不動産ブームの様相を呈しています。
都心5区オフィスビルの賃料・空室率平均の推移:2013年1月―2016年10月
三鬼商事の調査によると、2013年1月に8.56%であった都心5区の空室率は、2017年1月に3.74%まで低下しています。平均賃料は、2013年中は低下が続き2013年12月に16,207円/坪となりましたが、そこから上昇に転じ、2017年1月には18,582円/坪となっています。
(2)大手不動産会社で、賃貸不動産の含み益が拡大している
賃貸不動産の含み益上位5社の含み益:2013年3月―2016年3月
銘柄名 | 三井不動産 8801 |
三菱地所 8802 |
住友不動産 8830 |
東日本旅客鉄道 9020 |
日本電信電話 9432 |
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2013年3月 | 8,104億円 | 1兆9,444億円 | 1兆15億円 | 8,617億円 | 6,576億円 |
2014年3月 | 9,204億円 | 2兆676億円 | 1兆1,326億円 | 9,193億円 | 6,244億円 |
2015年3月 | 1兆2,159億円 | 2兆964億円 | 1兆2,901億円 | 1兆207億円 | 7,328億円 |
2016年3月 | 1兆5,644億円 | 2兆1,807億円 | 1兆6,975億円 | 1兆2,693億円 | 8,522億円 |
日本では、賃貸不動産に巨額の含み益が存在する会社が多数あります。賃貸不動産の含み益上位5社を挙げたのが、上の表です。上位3社は、大手不動産会社ですが、4位はJR東日本(電鉄会社)、5位はNTT(通信会社)です。
近年、金利低下と不動産価格の上昇により、賃貸不動産の含み益が拡大しつつあります。
(3)不動産ブームの恩恵で最高益の大手不動産株
大手不動産株の2017年3月期経常利益:4-12月実績と通期(会社予想)
コード | 銘柄名 | 4-12月実績 | 増益率 | 2017年3月期予想 | 増益率 |
---|---|---|---|---|---|
8801 | 三井不動産 | 1,561億円 | + 9% | 1,980億円 | + 9% |
8802 | 三菱地所 | 1,366億円 | +25% | 1,620億円 | +12% |
8830 | 住友不動産 | 1,312億円 | +17% | 1,650億円 | +11% |
都市部に優良不動産を保有する大手不動産会社は、不動産ブームの恩恵を受けて、軒並み最高益を更新する予想となっています。
(4)上値の重い不動産株
不動産業は市況産業です。過去に、不動産市況の上昇下落に対応して、ブームと不況を繰り返してきました。不動産業は今、ブームの渦中にありますが、不動産市況にやや過熱感があることが意識されて、不動産株は上値が重くなっています。
以下の「東証不動産株価指数の動き」をご覧ください。ここに、2001年以降の、不動産市況の推移が表れています。
東証不動産株価指数の動き:2001年1月―2017年2月20日
2001年は不動産不況のさなかにありました。その後、不動産市況は回復に向かい、2005-2007年に不動産ミニバブルと言われるブームがありました。このブームは2007年まで続きましたが、その直後、このミニバブルは崩壊しました。不動産市況も不動産株も大きく下落しました。
2013年から、不動産市況は上昇に転じ、今もブームは続いています。ところが、不動産株価指数だけは、先にピークアウトを織り込み、上値が重くなっています。
(5)長期投資を考えるならば、不動産株よりもREIT(リート:上場不動産投資信託)の方が有望
不動産株の上値が重くなっていますが、REIT(リート:上場不動産投資信託)の株価は堅調です。
東証REIT指数と不動産株価指数の動き比較:2012年末―2017年2月20日
アベノミクスがスタートしてからの動きを比較したのが、上のグラフです。異次元金融緩和を導入したことを好感して、最初は、東証REIT指数・不動産株価指数ともに急騰しました。ただし、その後の値動きがまったく異なります。東証REIT指数は、高値圏で堅調な動きを続けていますが、不動産株価指数は、2015年後半から、大きく下がっています。
どちらも主に不動産に投資するものですが、利益の分配方針の違いが、パフォーマンスの差に出ました。REITは、毎期の利益をほぼすべて投資家に分配します。分配金方針のわかりやすさと、相対的に高い分配金利回りから個人投資家に人気となりました。ちなみに、現在、REITの平均分配金利回りは、約3.7%です。個人投資家には、不動産株よりも、REIT(リート:上場不動産投資信託)の方が人気があります。
一方、不動産株は、投資家への利益還元方針が不明瞭です。大手不動産会社で、配当金利回りが1%前後と低く、個人投資家の投資ニーズが高まりません。
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