執筆:窪田真之

今日のポイント

  • 世界景気に回復色強まる。米国および中国が世界景気を牽引。世界的に株高進む中、円高への警戒から日経平均の上値重い。日本の企業業績は好調なので、日経平均はボックスを抜け、20,000円台を目指すと予想。
  • 2017年前半は株高継続を予想。年後半は世界の政治リスク・円高リスク顕在化で調整を警戒。

(1)NYダウの最高値更新続く中、日経平均は上値重い

日経平均にやや膠着色が出ています。強材料と弱材料ががっぷり4つに組み合っている印象です。景気・企業業績が良くなってきていることが日経平均の下値を支え、トランプ・リスク、円高リスクが上値を抑える展開が続いています。

日経平均週足:2016年1月4日―2017年2月17日

(注:楽天証券マーケットスピードより筆者作成)

一方、NYダウは最高値更新が続いています。米景気・企業業績回復の勢いが増しつつあること、トランプ大統領が大型減税実施を示唆していることが、追い風となっています。

NYダウ週足:2016年1月4日―2017年2月17日

(注:楽天証券マーケットスピードより筆者作成)

米国株だけでなく、欧州・新興国株も上昇基調が続いています。日本株に出遅れ感があります。日経平均はいずれボックスを上へ抜けて、20,000円台をつける局面があると予想しています。

(2)日本の企業業績回復モメンタム(勢い)が増している

10-12月に円安が進んだことが、業績に追い風ですが、円安だけで業績回復色が強まっているわけではありません。米国および中国が世界景気の回復を牽引し、それが、日本の企業業績にも恩恵をもたらしています。2017年の前半は、日本の企業業績の回復のモメンタムが強まり、政治不安があっても、株高が続くと予想しています。

発表が終わったばかりの10-12月期決算は、予想以上に好調でした。今期(2017年3月期)の東証一部上場企業の純利益は、約10%増加する見通しです。続く、来期(2018年3月期)も、さらに約9%増益する見込みです。10-12月期に円安が進んだ恩恵に加え、米国および中国の景気が回復している恩恵を受けています。

(3)中国景気は回復してきている

GDP規模で世界第1位の米国と、第2位の中国の景気が回復していることが、世界の景気回復を牽引し、日本の景気・企業業績の回復にも寄与しています。

米国は、経済統計が充実しており、景気実態がよくわかります。米景気が改善していることは明らかです。

一方、中国は、経済統計の信頼性が低く、景気実態がわかりにくくなっています。公表されているGDPで、成長率がわずかながら低下してきていることから、「中国の景気が足元悪化している」という、間違えた分析をよく目にします。

中国経済が構造問題を抱えていて、それが長期的な不安材料となっているのは事実ですが、少なくとも、足下の中国景気は回復してきています。

私は、GDP統計ではなく、中国の景気実態を表す李克強指数や、中国でビジネスをやっている日本企業の業況から、中国の実態を見ています。そこからわかる中国景気は、2015年10-12月期が底で、2016年以降、一貫して回復が続いています。

中国政府が公共投資を増やしていることだけでなく、自動車・スマホなど民間投資も増えている見込みです。1月も、中国景気の改善がさまざまな形で表れています。

  • 春節の中国消費は前年比11.4%増と好調

    中国では毎年、春節に大型連休があり、その期間に消費がふくらみます。春節の消費が前年比でどれくらい伸びるかが、中国の消費動向を知るのに重要と考えられています。2017年は、1月27日―2月2日が春節でしたが、その間の消費が11.4%増加しました。

  • 中国向けの工作機械受注が大きく伸びている

    1月の日本の工作機械受注が、前年同月比で3.5%増となりました。自動車や電気・精密関係の受注が好調の、中国向けが43.3%増と大きく伸びたことが寄与しました。

    日本の中国関連株(工作機械や工場自動化関連株)の10-12月決算説明会で、中国での受注が回復しつつあることが、聞かれました。

  • デフレ輸出国であった中国で、インフレ率が高まっている

    1月の中国の卸売物価指数が、前年同月比6.9%の上昇となり、5年5カ月ぶりの伸び率となりました。中国でデフレが終息し、再び工業製品の価格が上昇しつつあります。なお、1月の中国の消費者物価指数は、前年同月比2.5%増でした。

  • IMFが中国の成長率予想を上方修正

    1月に出したIMF最新の予想では、2017年の中国GDPの成長率予想を、前年比6.2%増から6.5%増へ、上方修正しています。

(4)世界の政治不安、円高不安が高まっていることには注意が必要

世界中で政治不安が強まっていることは大きなリスクです。政治不安を背景に、再び円高が進むリスクが日経平均の上値を抑えています。トランプ米大統領が、保護主義・排外主義の大統領令を乱発していること、円安を批判する発言を続けていることが嫌気されています。

政治不安は、欧州にも広がっています。欧州各国(フランス・イタリア・スペイン・オランダなど)で、トランプ大統領と同様の自国中心主義(反移民・反EU)を掲げる極右政党が、急速に勢力を拡大していることが懸念されます。

独裁国家の暴走も懸念材料となっています。具体的には、中国・北朝鮮の暴走が懸念されます。米国が、中国の海洋進出に対して強硬姿勢を取り始めていることから、米中緊迫化のリスクもあります。

2017年の前半は、株高継続を予想していますが、後半には、政治リスクの顕在化や円高によって、株が再び調整局面に入る可能性があると考えています。