執筆:窪田真之

今日のポイント

  • 世界の政治不安が強まっているものの、世界景気の改善期待は高まっている。その結果、1月は日経平均が下がってきているが、恐怖指数は低位に留まっている。
  • 材料待ちの状況が続いている。これから始まる10-12月決算で、利益の好転が確認できるか、1月20日のトランプ大統領就任演説は金融市場に好感される内容か、見極めたいとのムードが広がっている。

(1)円高への警戒が続く中、日銀のETF買いが日経平均を下支え

18日の日経平均は、前日比+80円の18,894円でした。朝方1ドル112.54円まで円高が進んだことを嫌気し、日経平均は一時▲163円の18,650円まで売られましたが、引けにかけて持ち直しました。

18日の日中に、為替が1ドル113円台まで円安に戻したこと、16・17・18日と日本銀行が3日連続で703億円のETF買いを行ったことが、下支え要因となりました。

日経平均がここから一段と下げるか、あるいは、持ち直すか、株式市場は材料待ちの状態です。2つの材料を待っているところです。

  • 1月20日(金)トランプ氏の大統領就任演説

大統領選直後の「勝利宣言」のような、金融市場に好感される内容か?あるいは、暴言をエスカレートさせて市場に失望されるか?

大統領就任演説で、共和党主流派ブレインの作文による原稿を読み上げれば、市場に好感されるが、思いつきで暴言を連発すると失望されます。期待より不安が高まっているのが現状です。

  • これから始まる日本の10-12月期決算

円安が進んだこと、米国および中国の景気が持ち直していることから、10-12月決算は利益好転が見込まれます。10-12月は、2017年3月決算の第3四半期に当たります。決算発表時点で、通期の業績見通しを上方修正する企業がどの程度出てくるか注目されます。ただ、為替が短期的にあまりに激しく乱高下しているので、今回の決算発表では利益予想の増額修正を見送り、保守的(低め)予想を継続する企業が多くなる可能性もあります。

(2)恐怖指数は低水準に留まる

恐怖指数とも言われる「日経ボラティリティー・インデックス」は、足元、低水準に留まっています。

日経平均および日経平均ボラティリティー・インデックス推移:2016年1月4日―2017年1月18日

(出所:日経QUICKより楽天証券経済研究所が作成 ©日本経済新聞社)

上のグラフをご覧いただくとわかる通り、恐怖指数(日経ボラティリティー・インデックス)は、日経平均が急落する局面で上昇します。上のグラフの①と②のところで、日経平均が急落し、恐怖指数が急騰しています。世界経済と政治の両方に、不安が高まっていたことが、恐怖指数の上昇につながりました。

ただし、③のところをご覧ください。2017年1月は、日経平均がゆるやかに下がってきていますが、恐怖指数は低位にとどまっています。

世界の政治不安は高まってきていますが、世界および日本の景気・企業業績に回復期待があるため、恐怖指数が急騰する展開にはなっていません。

これが、嵐の前の静けさなのか、あるいは反発に向かう前兆かは、まだわかりません。1月20日のトランプ大統領就任演説と、これから始まる10-12月期決算の内容を見て考えます。