今日のポイント
- ドル円の調整を悪材料に日経平均も下落。トランプ次期大統領の記者会見に失望感。ドル円は75日移動平均線(110円)まで下落する余地があり、目先は神経質な動きに。
- 世界景況感の改善傾向は変わらず。OECD景気先行指数は、主要国(地域)の景気が回復傾向にあることを示している。業種物色では、金融や景気敏感株に分がありそう。
- 東証17業種別に新年の業績予想とバリュエーション指標を一覧。金融、エネルギー資源、円安メリット、インフラ資本財関連に「業績改善期待を加味した割安感」が目立つ。
(1)為替相場の調整が株式市場の重石に
今週の国内株式は調整。図表1が示す通り、昨秋以降の日経平均上昇は、米ダウ平均の上昇とドル円の上昇(円安)という2つのエンジンに支えられてきました。かつて(例:2013年前半のアベノミクス相場)でも、米国株とドル円の双方が上昇する局面で日経平均の騰勢が強まった経緯がわかります。ただ、11日の記者会見で、トランプ次期米大統領が(市場が期待していた)財政政策に言及しなかった一方、大統領当選以降封印してきた排外的かつ保護貿易主義的な姿勢を示したことへの失望感で、ドルが売られ日経平均の重石となりました。11月以降の上げが急だっただけに、ドル円は75日移動平均線(110.30円)程度まで下落する余地があります。20日の大統領就任式での就任演説を前に、経済政策を巡る不透明感が続き、為替と株式が目先神経質な動きを余儀なくされる可能性があります。
図表1:米ダウ平均、ドル円、日経平均の推移(過去5年)
(2)世界景気の回復傾向は続く見込み
米国を筆頭とする世界の景気、株式、為替(ドル円)の動向は、本年も日本株に大きな影響を与えそうです。図表2は、OECD(経済協力開発機構)が11日に発表した主要国(地域)別景気先行指数の前年同月比伸びを比較したものです。米国の景況感持ち直しに加え、中国の景況感回復が鮮明となっており、世界の先行き景況感が2016年春に底入れしたことがわかります。「世界景気に最も敏感な株式市場」と称される日本株が堅調に転じた要因と考えています。また、FRB(米連邦準備制度理事会)のイエレン議長が昨年示した「高圧経済(High Pressure Economy)」との概念にも注目です。雇用環境が回復基調でも、低成長・低インフレからの脱却を目指し、FRBとして金融緩和の解除(追加利上げ)を緩やかに実施する-との考えです。こうしたなか、トランプ次期大統領が景気刺激的な政策を実施するなら、金利上昇に弱い「債券売り」と業績回復を期待しやすい「株式買い」の動きが支えられ、業種別には「景気敏感株」の選好が続くと考えられます。
図表2:OECD景気先行指数の前年同月比伸び(%)の推移
(3)増益期待と割安感で有望セクターをチェック
(1)で示した短期的なスピード調整や巻き戻しによる押し目とは別に、(2)で示した中期的なファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)改善を重視し、昨年初と異なる相場環境に注目したいと思います。昨年の今ごろは、中国経済を巡る不透明感、原油相場の軟調、米景気減速と米長期金利低下、米国株式の軟調、日米金利差縮小とリスクオフ(回避)姿勢を受けた円高・ドル安が示現したなか日経平均も軟調を余儀なくされました。一方で現在は、中国の景況感が安定化、原油相場が戻り基調、米国景気は堅調で、トランプ次期大統領の政策期待を受けた日米金利差拡大とリスクオン(選好)姿勢でドル円が上昇に転じました。中期的な視野でこうした外部環境の改善が続くことを「メインシナリオ」と想定するなら、国内市場のセクター(業種)物色については、金融(景気回復と長短金利差拡大は好材料)、エネルギー資源関連、円安メリット関連、インフラ・資本財関連などが相対的に選好される可能性が高いと考えます。図表3は、「東証17業種指数」について最近の「3ヶ月騰落率」を降順に並べたものです。特徴として、金融や景気敏感業種などにPER(株価収益率)、PBR(株価純資産倍率)、配当利回り面でいまだ割安感があり、指数ベースの業績(暦年ベースEPS(一株当り利益)の前年比増減益率)予想で、「不振だった2016年から2017年は改善に向かう」(減益から増益、増益率が拡大、赤字から黒字)と見込まれるセクターが多いことがわかります(業績予想は市場予想平均/Bloomberg集計)。例えば、銀行を含む金融、エネルギー資源、鉄鋼・非鉄、商社などのPBRは依然1.0倍割れに留まっている一方、17年は業績の改善が見込まれています。目先の株価調整を生かし、こうした業種の銘柄に分散投資を展開していく投資戦略に注目したいと思います。
図表3:東証17業種の業績予想とバリュエーション
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