執筆:窪田真之

新年あけましておめでとうございます。本年も、当コラムを何卒よろしくお願いいたします。

今日のポイント

  • 新年のNYダウは上昇してスタートしており、日経平均も、上昇スタートが見込まれる。
  • 1月はリターン・リバーサルが多い。12月に強気一辺倒の上昇が続くと、1月は下落で始まることが多い。昨年12月の日経平均は前半に過熱気味の上昇となり、1月の反落が懸念されたが、12月後半に上値が重くなり、短期的な過熱感は低下している。

(1)年末年始の海外市場は小動き

昨年末は、NYダウ・日経平均とも、上昇ピッチの速さに警戒が広がり上値が重くなっていました。年明けのNYダウはとりあえず上昇スタートとなりました。

NYダウ:20,000ドル直前でやや上値が重くなっています。

12月30日:19,762ドル(前日比▲57ドル)
1月3日:19,881ドル(前年末比+119ドル)

ドル円為替:1ドル117円台を中心に小動きでした。

1月4日の日本時間午前6時現在:1ドル117.68円

CME日経平均先物(3月限)

1月4日の日本時間午前6時現在:19,285円(昨年末の日経平均19,114円対比+171円)

(2)1月に日経平均のスピード調整はあるか?

トランプ次期大統領の経済政策への期待から、昨年11-12月は世界的に株高が進みました。トランプ氏が大統領に就任するのは1月20日、そこから公約通りの大規模景気対策を実施するとしても、その効果が出るのは10月以降となります。期待を先取りして株高が進んでいることに、危うさを感じる投資家もいます。

私は、トランプノミクス(トランプ次期大統領の経済政策)への期待だけで株が上がっているとは考えていません。昨年末の世界的な株高の主因は「世界景気の回復」にあると考えています。いわゆる「トランプ・ラリー」は、11月にトランプ氏が大統領に勝利してから始まりましたが、当選前から、世界経済の好転は始まっていました。

トランプ氏は、大統領選に勝利してから、反グローバル主義の過激発言を控え、代わって過激とも言える大規模景気対策の実施を宣言しました。そのため、世界景気に対する強気な見方が広がり、金融市場でドル高・株高のトランプ・ラリーが進みました。

私は、当面は、世界景気回復を織り込むグレート・ローテーション(大転換:債券を売って株を買う流れ)が続くと考えています。ただ、そうは言っても、これまでの日経平均の上昇ピッチの速さに不安を感じる投資家もいます。1月中に短期的なリターン・リバーサル(上がったものが下がり、下がったものが上がる流れ)が起こっても不思議はありません。

1月は、経験則から、リターン・リバーサルが起こりやすい月であることがわかっています。果たして、今年はどうなるでしょうか?

(3)1月のアノマリー

1月によく起こる現象を、1月のアノマリーと言います。1月は「リターン・リバーサルが起こりやすい月」です。「12月まで大きく上がっていた株が1月から急に下がる」「12月まで大きく下がっていた株が1月から急に上がる」ということが、過去によく見られていました。このように、相場つきががらりと変わることをリターン・リバーサルと呼んでいます。

アノマリーと言われているものには、偶然もあります。たまたま過去がそうだっただけで、今後も同じことが繰り返す理由が何もない場合もあります。

ただし、1月にリターン・リバーサルが起こりやすいのは、偶然ではありません。それが起こりやすい理由がはっきりあります。

みんなが強気一辺倒ならば年内強く、年明けに下落

多くの人は、やるべきことは年が変わる前に済ませようとします。新しい年に向けて、準備すべきことを終えて、新年を迎えようという心理が働きます。たとえば、2017年に日本株が大きく上昇するというコンセンサスがあるとします。すると、多くの人は、2016年の内に株を買ってしまおうと考えます。「株を枕に越年で、よい初夢を」と考えるわけです。

ところが、ほとんどの人が年内に株を買ってしまうと、皮肉なことに年明けから株の買い手がいなくなります。そこで1月には、わずかな利益確定売りから相場が崩れやすくなります。

みんなが弱気一色なら年内弱く、年明けに上昇

弱気が蔓延していると、多くの人は年内に株を売ってしまおうと考えます。株なんか持っていたら、安心して越年できないというわけです。この場合は、年明けにはもう売り手がいなくなるので、上昇を始めます。

<参考>1月のリターン・リバーサル:過去の事例

  • 1987年12月→1988年1月:1987年10月にブラックマンデーがあって世界的に株が急落。12月まで下げ相場が続いたが、1月から急反発。
  • 1989年12月→1990年1月:1987年12月末に日経平均は史上最高値(約3万8千円)をつけ強気一色だったが、1月から急落。
  • 1999年12月→2000年1月:12月までITバブル相場で上昇したが、1月からITバブル崩壊。
  • 2005年12月→2006年1月:ミニITバブル相場でIT関連株が急騰したが、1月から急落。

上記は、1月に極端なリターン・リバーサルが起こったケースです。小さなリターン・リバーサルはもっとたくさん起こっています。

(4)今週の日経平均はとりあえず、19,000円台の値固めとなりそう

年初のNYダウが上昇しているので、今年の日経平均は、とりあえず上昇してスタートしそうです。去年のように、年初から日経平均が急落することはなさそうです。昨年12月の前半は、日経平均が急騰し、一時過熱感が出ました。ところが、12月後半に高値警戒感から、上値の重い展開となったため、一旦、短期的な過熱感は低下しています。

昨年とは、世界景気の状況も異なります。昨年は、中国景気の悪化、米景気の悪化、資源価格の急落、円高急進など悪材料が重なって、日経平均は年初から急落しました。

中国景気は、一昨年10-12月を底に持ち直し、米景気にも回復色が強まっています。原油など資源価格の底打ちにより、資源国・新興国の景気も回復しつつあります。