執筆:窪田真之
- 日経平均の、13週移動平均線と26週移動平均線がゴールデンクロス。チャート面で、日経平均に底入れ機運が出ている。
- 円高リスク・米大統領選リスクなど、リスクだらけの環境は変わっていないが、リスクに対する恐怖感が徐々に低下する局面に入りつつある。
- 日銀が年6兆円のETF買いを実施することと、裁定買い残高がリーマンショック時の水準まで低下していることが、需給面での下支え要因となっている。
(1) 日経平均の反発力は弱いが、徐々に下値は堅くなってきている
日経平均および13週・26週移動平均線推移:2015年1月―2016年9月
(出所:楽天証券経済研究所が作成)
上記日経平均チャートに、13週移動平均線と26週移動平均線から形成されるデッドクロス(弱気シグナル)と、ゴールデンクロス(強気シグナル)を書き込んでいます。足元、13週移動平均線が26週移動平均線を下から上へ抜けるゴールデンクロスが出ています。日経平均の反発力は弱いものの、下値が堅くなっている印象です。
- デッドクロス
短い移動平均線が長い移動平均線を上から下へ抜けるポイント。相場が下落局面に入る時に出ることが多い。通常は、5日移動平均と25日移動平均線など、もっと短い移動平均線で短期的な相場動向を見るときに、使われる。13週・26週移動平均線のように、長い期間を使ったものは、長期的なトレンドを見るのに参考となるが、短期的な投資タイミングを計る上では、あまり役に立たない。実際、上のチャートでデッドクロスが出た後、日経平均は一旦、大きく反発している。ただし、より長期的には、大きな下落トレンドの開始を示していた。
- ゴールデンクロス
短い移動平均線が長い移動平均線を下から上へ抜けるポイント。相場が上昇局面に入る時に出ることが多い。ここでは、13週移動平均線が、26週移動平均線の下から上へ抜けたポイントを示している。短期的なタイミングシグナルとしては、あまり役立たないが、長期的には日経平均が底打ちしつつあることを示している可能性がある。なお、チャートは、売買の参考にはなるが、チャートだけで相場の動向が決まることはない。
(2)「恐怖指数」は低水準に留まる
今の相場を一言で表すと、「いろいろなリスク要因はなくなっていないが、1つ1つのリスクに対する投資家の恐怖心が低下しつつある局面」と言えます。それを象徴しているのが、恐怖指数として知られる、日経ボラティリティー・インデックス【注】の低下です。
【注】日経ボラティリティー・インデックス
恐怖指数として知られる。日経平均が下落する局面で、上昇する傾向が顕著である。オプション価格に表れている、市場の変動性予測値(インプライド・ボラティリティ)から計算される。
日経平均と日経ボラティリティー・インデックスの推移
出所:日経QUICKより楽天証券経済研究所が作成
日経平均が下落を始めると、恐怖指数と言われることもある日経ボラティリティー・インデックスが上昇します。最近、日経ボラティリティー・インデックスの水準が低下しているのは、投資家の相場急落への恐怖心が低下しつつあることを示しています。
円高や米大統領選のリスクを、市場はどう見なしているのか、明日のレポートで深堀りします。
(3)日銀のETF買いが日本株を下支えする要因に
需給面からも、日本株が急落するリスクは低下してきていると考えられています。以下の2点が需給面の強材料と考えられています。
- 日銀が年間6兆円、日本株ETFを買うことを決定。
- 裁定買い残高が9月23日時点で5,202億円と、リーマンショック時の水準まで低下。
日経平均と裁定買い残高の推移:2006年4月―2016年9月
(出所:東京証券取引所データより楽天証券経済研究所が作成)
裁定買い残高は、主に外国人投資家による、投機的な先物買い残高の変動を表しています。裁定買い残高が1兆円を割れる水準に低下しているということは、日経平均先物の投機筋による買い建てはほとんど整理されたと考えられます。今後、突発的な悪材料に反応して、日経平均先物に大量の売りが出るリスクは低下していると考えられます。
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