執筆:窪田真之

12日の日経平均は、前週末比292円安の16,672円と、久しぶりに下げ幅が大きくなりました。世界的な長期金利の上昇を嫌気して、9月9日(金)にNYダウが394ドル安(▲2.1%)となるなど、欧米株式が下がった影響を受けました。

11日に米大統領選の民主党候補ヒラリー・クリントン氏が体調を崩したニュースも、悪材料として意識されました。共和党候補で反資本主義の過激発言を繰り返すドナルド・トランプ候補に有利な材料が出ると、金融市場では嫌気されます。

12日のNYダウは、前週末比239ドル高と反発しました。米FRBのブレイナード理事が、米経済は成長が鈍化、金融引き締めには慎重さが求められると発言し、9月の利上げ観測が後退したことが、好感されました。

今日は、改めて、米金利上昇と日本株の動きを分析します。

(1)7月以降、世界的に長期金利が反発

米英独日の長期金利の動き:2016年1月4日―9月9日

(注:長期金利は10年もの国債利回り)

上のグラフでわかる通り、下落が続いてきた世界の長期金利は、7月から反発しています。米FRBが利上げに前向きととれる発言を続けていることから、一時1.35%まで低下していた米長期金利は、先週末で1.67%まで反発しています。9月21日FOMC(米金融政策決定会合)での利上げ観測は後退したものの、年内の利上げ観測は残っています。

ECB(欧州中央銀行)が追加緩和を先送りする考えを示したことから、欧州の金利も上昇しています。一時▲0.19%まで低下していたドイツの長期金利は先週末で0.037%とプラス圏に浮上しました。

一時▲0.299%まで下がった日本の長期金利も、足元▲0.018%まで上昇しています。こうした長期金利の反発は、世界景気が最悪期を脱したことを表しており、日本株には基本的にプラスと考えています。

ただし、欧米株式に与える影響には、注意が必要です。欧米株式は、金利に敏感で、金利上昇を嫌気して下げることがあるからです。

米国株には、「Don’t fight the FED(FEDに逆らうな)」という格言があります。FED(米中央銀行)が金融を緩和する時に米国株は上がり易く、FEDが金融を引き締めるときに株が下がり易いことを、言っています。

(2)前回の米利上げ局面での日米株式の動き

日経平均とNYダウ、ドル円為替の動き:2004年6月末―2006年6月末

(注:日経平均とNYダウは2004年6月末の値を100として指数化、楽天証券経済研究所が作成)

前回アメリカが利上げを行ったのは、2004年6月―2006年6月でした。この時、FF金利(政策金利)は、1%から5.25%まで、2年間で5%以上も引き上げられました。金利上昇を嫌気して、NYダウは上値が重かったのですが、日経平均は大きく上昇しました。米景気が好調であったことと円安が進んだことが、日経平均を押し上げる要因となりました。

2004-06年と今とでは、世界の経済環境が大きく異なるので、単純比較はできません。ただし、今も変わらない特色もあります。米国の金融が引き締められる時は、日本株が米国株を上回るパフォーマンスを上げる傾向があるということです。

米利上げによって、一時的に世界の株が調整しても、ドル円が円安方向に動くならば、日本株は底堅く動くと予想しています。

日本株のリスクは、年内、米国が利上げできなくなることと考えています。米国の利上げがなければ、欧米や新興国の株にはプラスですが、日本株にはマイナスとなります。現時点では、12月に米利上げが実現するとの予想を維持しています。