執筆:窪田真之

日経平均は、17,000円前後でやや膠着感が出ています。来週9月21日に、日米金融政策決定会合の結果発表を控え、上下とも大きくは動きにくくなっています。日米金融政策の結果により、為替がどう動くかが焦点となっています。また、決算発表の少ない時期に入っていることも、材料不足で動きにくい理由です。

ただ、7月以降の物色動向として、景気敏感株や金融株が買われ、ディフェンシブ株(景気変動の影響を受けにくい医薬品・食品株)が売られる流れが出ていることは、注目されます。世界景気がゆるやかに持ち直しつつあることを反映していると判断しています。鈍いながらも、GDPで世界第1位の米国と2位の中国景気が持ち直しつつある効果が出ていると思います。

今日は、9月21日に発表される、日米金融政策の事前の期待について書きます。

(1)9月21日に、日米金融政策決定会合の結果が同時発表

9月は、日米の金融政策決定会合の発表日が一致しました。発表は、日本が先になります。

  • 9月21日(水)昼ごろ:日銀金融政策決定会合の結果発表、同時にこれまでの金融政策の「総括検証」が発表される。
  • 9月21日(日本時間では22日午前3時):FOMC(米金融政策決定会合)の結果発表、その後、イエレンFRB議長による記者会見。

9月21日の日銀発表を受けて、21日の午後に為替や日経平均が動く可能性があります。22日(木)は、日本は秋分の日(祭日)なので、米FOMCの結果を受けて動くのは22日の海外市場が先になります。東京市場がそれを受けて動くのは、23日(金)となります。

(2)読みにくい日銀の金融政策

日銀は、これまでサプライズ型の金融政策を行ってきました。緩和期待がない時に大型の緩和を行い、緩和期待がある時に行いませんでした。新たな緩和手段(マイナス金利など)を導入する際も、巧みに隠蔽し、発表してからサプライズを起こすやり方を採っていました。

その結果、日銀金融政策決定会合の発表後は、いつも為替や株が乱高下して、市場が荒れていました。それでも、サプライズによって株式市場が急騰していた時は、あまり批判は出ていませんでした。ところが、今年に入って、日銀の発表後に、日経平均が急落するパターンを繰り返すにつれて、日銀の「市場と対話しない」姿勢に批判が集まっていました。

日銀は今回、これまでのサプライズ型の金融政策を反省し、市場との対話を改善する努力を行うと、率直に述べています。

現在、21日に発表されるこれまでの金融政策の「総括検証」をめぐって、市場ではさまざまな思惑が出ています。これまでの日銀は、間違えた思惑が広がっていても、特にコメントせず、発表日に市場を驚かせる手法を続けていました。

今回は、市場との対話改善の第一弾として、黒田総裁から、総括検証のヒントが出されています。

(3)9月の日銀金融政策の方向性、ヒントがあってもわかりにくい

黒田総裁が述べていることは、以下の通りです。

  • マイナス金利の導入にさまざまな弊害があることを率直に認める。
  • 「質・量・金利」の3次元の金融緩和は、さらに拡大可能とし、金融政策が限界との見方を否定。
  • 3次元の緩和以外の方法も、検討している。
  • 緩和を縮小するという話ではない。

これまでよりも、率直に考えていることを伝えようとする姿勢は感じ取れます。ただし、それでも、真意は読みにくいという状況に変わりはありません。

黒田総裁の意見から、9月21日の追加緩和の有無について、2つの異なる見方が出ています。

  • 「大型の追加緩和あり」説

    追加緩和ありとの解釈がやや優勢となっています。「質・量・金利」の3次元緩和は拡大可能とのコメントから、「マイナス金利の深掘り」を予想する向きもあります。「3次元の緩和」に加え、さらに、別の手段(4次元?)まで検討するとの発言もあり、さらなる追加手段への期待も出ています。「緩和縮小の話ではない」と明言しているので、いずれにしても、追加緩和に前向きのスタンスが継続されるとの期待につながっています。

  • 「小手先の緩和策が発表され、市場に失望される」説

    一方で、今回の黒田発言から、緩和が限界を読み取った向きもあります。マイナス金利の弊害を率直に認めたことから、これ以上のマイナス金利深掘りはないと解釈されます。3次元の緩和は理論上、拡大可能だが、今はやりにくく、やるとしても別の方法(4次元の緩和→小手先の緩和策)となるとの解釈です。

    私は、②と同じ解釈です。いずれにしても、9月21日のお昼ごろの日銀金融政策決定会合後に相場が荒れる可能性は考慮していた方がいいと思います。

(4)9月の米利上げがなくても、サプライズにはならない

FRB(米国の中央銀行)およびECB(欧州中央銀行)は、市場と対話し、事前に金融政策の変更を織り込ませることを、目標としてきています。金融政策の発表日には、市場がほとんど動かないことを理想としてきました。

FRBイエレン議長は、さらなる利上げが必要になってきているとの考えを市場に伝えています。ただし、経済指標しだいとも繰り返しています。8月の雇用統計やISM景況感指数がさえなかったので、9月の利上げはないと考えるのが普通です。

9月21日に米利上げなしが発表されても、FOMC声明文やイエレン議長の記者会見で先行き利上げに対する意欲が示されれば、市場にとってサプライズとはならないと考えています。