執筆:窪田真之

5日の日経平均は前週末比111円高の、17,037円となりました。朝方1ドル104.12円まで円安が進んだことを好感し、日経平均は一時、230円高の17,156円まで上昇しました。ところが、午後に1ドル103円台前半まで円高が進むと、日経平均は上げ幅を縮小しました。

今日は、最近の株式市場で、日経平均下落への恐怖感が低下しつつある背景について考えていることを書きます。

(1)日経平均には底打ちの兆しが出つつある

日経平均および13週・26週移動平均線推移:2015年1月―2016年9月5日

(出所:楽天証券経済研究所が作成)

上記チャートには、13・26週移動平均線だけ見た上での、ごく単純なテクニカル分析に基づく「強気」「弱気」を書き込んでいます。それぞれ、以下のように判断します。

  • 強気:13・26週移動平均線がともに上向き
  • 弱気:13・26週移動平均線がともに下向き
  • 中立(判断不能):13・26週移動平均線の一方が上向き、他方が下向き

上記は、中期的な相場トレンドを見るのに役立ちます。日経平均が17,000円台に乗せた9月5日に、13週移動平均線と26週移動平均線は、ともに上向きになりました。日経平均がこのまま17,000円台を維持できれば、13・26週線とも上向きの状況が続くことになります。上記のグラフに示した、単純なテクニカル分析で見て「強気」局面に入ることになります。このまま日経平均17,000円台を維持できるか、注目されます。

(2)急落リスクへの恐怖感が低下しつつある

日経平均は、強気局面入りできるか、正念場を迎えています。年初の頃と比べると、急落への恐怖感が低下してきています。

世界中にあるいろいろなリスクがなくなったわけではありませんが、リスクへの恐怖感が低下しつつあるといえます。

米大統領選への恐怖感が低下

反グローバル主義・反資本主義の過激発言を繰り返すドナルド・トランプ氏が大統領に当選すると、米国および世界経済へのダメージは大きいと考えられていました。トランプ人気が盛り上がっていく過程で、世界の金融市場にとって重大な悪材料ととらえられるようになりました。ただし、民族・宗教・人種の対立をあおるトランプ発言に米国の大衆もようやく食傷気味になってきており、トランプ氏への支持率は低下してきています。トランプ大統領誕生のリスクは低下してきたと考えられます。

ブレグジット(英国のEU離脱)への恐怖感が低下

英国内に、ブレグジットを国民投票で可決してしまったことへの反省が広がっています。英国・EU双方にとってダメージの大きい「ハードランディング型離脱」を回避し、話しによって双方のダメージが少なくなる道を探る「ソフトランディング型離脱」を目指そうとの機運が、英国・EU双方に芽生えつつあります。

原油急落への恐怖感が低下

原油下落は本来、日本にとってプラスのはずですが、去年はあまりに急激に下がったため、日本の資源ビジネスが急激に悪化し、日本の景気・企業業績が悪化しました。それだけでなく、世界景気にもダメージを与えました。

原油価格は、反発後、ようやく安定してきています。ここから再度原油が急落し、資源国や資源関連産業の景気・企業業績が一段と悪化する不安は低下してきていると考えられます。

円高への不安が低下

米景気がゆるやかに底打ちし、年内になんとか米利上げが見込めるようになってきました。これを受けて、一段の円高が進むリスクは低下してきています。

(3)日銀のETF買いが日本株を下支えする要因に

需給面からも、日本株が急落するリスクは低下してきていると考えられています。以下の2点が需給面の強材料と考えられています。

  • 日銀が年間6兆円、日本株ETFを買うことを決めている。
  • 裁定買い残高が8月26日時点で6,080億円まで低下している。

裁定買い残高については、詳しい説明は割愛し、結論だけ言います。裁定買い残高が1兆円を割れる水準まで低下しているということは、日経平均先物の投機筋による買い建てはほとんど整理されたと考えられます。今後、突発的な悪材料に反応して、日経平均先物に大量の売りが出るリスクは低下していると考えられます。