執筆:窪田真之

先週の、日経平均は1週間で565円上昇し、16,925円となりました。8月26日にイエレンFRB議長・フィッシャーFRB副議長が、利上げに前向きな発言をしたことからドル高(円安)が進み1ドル103円台をつけたことが、日本株の買い材料となりました。

9月22日のFOMC(米金融政策決定会合)での利上げ有無が注目されていますが、9月2日発表の8月米雇用統計が、その鍵を握ると考えられていました。出てきた数字は、市場予想を下回り、9月利上げの確度は低下したと解釈されました。2日の雇用統計発表直後に、一時、円高が進みました。ところが、8月の雇用統計は、年内利上げを正当化するには十分な強さと解釈されたことから、その後、円安に転換し、9月2日の為替は、1ドル103.99円となりました。同日のCME日経平均先物(9月限)は、17,130円(日経平均終値比+205円)でした。

(1)8月の米雇用統計は、市場予想を下回る

非農業部門雇用者増加数(前月比)推移:2014年1月-2016年8月

(出所:米労働省)

米景気の短期変動をよく表し、利上げ判断にもっとも重要と考えられている指標が「非農業者部門雇用者数 」です。8月(速報値)は、前月比で15万1千人の増加で、事前予想(17万人増)を下回りました。米景気好調と判断される20万人増も下回っています。

ただし、2016年1-8月の平均では、前月比18万人増加しています。月次で15万~20万人増加していれば、米景気は好調と判断できるとの見方もあります。

したがって、年内に米利上げが見込まれるという判断は変わりません。ただ、9月の利上げはやや難しくなったと考えられています。

完全失業率:2014年1月 - 2016年8月

(出所:米労働省)

8月の完全失業率は、4.9%で変わりませんでした。低水準にとどまっています。米国の雇用統計では、この水準は、実質完全雇用に近いとの見方もあります。

(2)8月の米ISM製造業景況指数は、50割れ

9月1日に発表された、8月のISM製造業景況指数は、好調不調の判断の分かれ目となる50を割り込みました。米国の雇用情勢は良好と判断されるものの、米景気の回復は鈍い模様です。

非製造業は好調が続いています。8月のISM非製造業景況指数は、9月5日に発表の予定です。

米ISM製造業・非製造業景況指数の推移:2014年1月 - 2016年8月

(出所:米ISM供給管理公社)

(3)米景気はゴールディロック【注】

米雇用情勢は堅調で、年内に利上げが必要と考えられます。ただし、回復力は鈍いため、利上げは9月ではなく、12月になると予想しています。米景気は、強すぎず、弱すぎない状況といえます。

【注】ゴールディロック:強すぎず、弱すぎない景気の状態。景気が弱いと株は下がるが、強すぎると、金利が急上昇して株は下がる。今、米景気は回復しつつも、回復力は鈍い。

(4)目先の警戒すべきイベント

9月21日(日銀金融政策決定会合の結果発表)と、22日(米FOMCの結果発表)に注意が必要と考えています。9月は、日銀の大規模追加緩和はなく、米利上げもない可能性があります。そこで、一時的に円高・株安が進むリスクを警戒しています。

ただし、深押しはないと考えています。年内に米利上げが期待されることから、ここから大幅な円高が進むことはないと考えています。また、日銀が年6兆円の大規模な日本株ETFの買い取りを継続していることが、日経平均の下値を支えると考えています。

9月のイベントをこなせば、年末にかけて、円安・株高が進むと考えています。短期的な波乱はあっても、割安な大型の金融株・景気敏感株が買われる流れは続くと予想しています。