執筆:窪田真之

先週の日経平均は、1週間で374円下落し、16,545円となりました。9月の米利上げ期待が後退し、さらなる円高が進む懸念が続いていることが、先週の日経平均が反落する要因となりました。

先週末のドル円は、1ドル101.19円と100円台に戻っていますが、先週は、1ドル99円台に何回も入っており、さらなる円高を試す可能性が残っています。

先週末のCME日経平均先物(9月限)は、16,475円でした。

(1)8月17日公表の7月FOMC議事録で円高進む

先週は、8月17日(水)に公表された、7月26-27日実施の米FOMC(金融政策決定会合)の議事録の中身に注目が集まっていました。9月利上げを示唆する表現の有無が注目点でした。FOMC議事録は景気下ぶれのリスクが減少していることを認める内容でしたが、9月利上げの示唆はありませんでした。9月利上げの思惑が低下したことから、円高(ドル安)が進み、1ドル100円割れをトライしました。

(2)今週の注目は8月26日(金)にFRBイエレン議長がジャクソンホールで行う講演会の内容

9月利上げに示唆があるかないかが注目点となります。市場予想では、9月の利上げは困難と考えられています。それには2つの理由があります。

  • 米景気は回復してきているものの、回復力は鈍い。
  • 11月に米大統領選を控えている。

共和党の大統領候補ドナルド・トランプ氏は、昨年12月に米FRBが利上げを実施したことを批判しています。利上げはドル高を招き、米製造業を苦しめるので、米FRBは利下げを行うべきと主張しています。

もし米FRBが9月に利上げを実施し、それをきっかけに世界の株式が大きく下がると、トランプ氏のFRB批判に対し、火に油を注ぐことになります。米大統領選に影響する可能性もあります。イエレン氏は、大統領選直前に利上げを実施する決断はできないと思います。

私は、9月に米利上げは実施されないと予想しています。11月の米大統領選で、民主党候補のクリントン氏が大統領に当選すると予想していますが、その後、12月に米利上げが実施されると、予想しています。

(3)9月のイベントを警戒

9月に米利上げがなく、日銀の大規模追加緩和もなければ、1ドル100円を割れてさらなる円高が進むリスクが高まります。9月は3つのイベントを注意したいと思います。

  • 9月2日(金)(日本時間では2日21時30分)

    8月の米雇用統計発表。9月の利上げ判断に大きな影響を与える。

  • 9月21日(水)昼頃

    9月20-21日に実施される日銀金融政策決定会合の結果発表。これまでの金融政策の「総括検証」を行うとしている。総括検証の中身を受けて、さらなる緩和を行うのか、緩和は限界と判断するのか、注目されています。

  • 9月21日(水)(日本時間では9月22日午前3時)

    9月20-21日に開かれる米FOMCの結果発表。

(4)日銀のETF買い取りについて

日銀は、7月29日の金融政策決定会合で、年3.3兆円の日本株ETF買い取りを、年6兆円に増額すると決定しました。これを受けて、8月に入ってから1日で707億円のETF買い取りを、実施するようになっています。これまでの1日の買い取り額が、ほぼ倍増しています。

ただし、いつ707億円の買いを出すかは、わかりません。8月に入ってからは、8月4日と10日に707億円買い取りを実施しています。10日以降は、707億円の買い取りは実施していません。

ETFを年6兆円買い取るために、今週にも、707億円の買い取りが出る可能性があります。どのタイミングで日銀の買いが出るかはわかりませんが、需給面で日本株の下値を支える材料として注目されます。

(5)「割安大型株から時間分散しながら投資」の判断を継続

9月に、米FRBの利上げがなく、日銀の追加緩和がなければ、一時的にさらなる円高が進み、日経平均が下落するリスクが残っています。ただし、円高で下がれば、そこは押し目買いの好機になると考えています。

9月の米利上げが見送られても、年内の米利上げが視野に入ってくれば、為替は1ドル102~107円に向けて円安が進むと予想しているからです。

日本の景気は近年、「ミニ景気後退」と「ミニ景気回復」を繰り返しています。年後半にかけて米景気が好調を維持し、1ドル100円までの円高でとどまれば、日本の景気は、ミニ景気後退を脱して、ミニ回復に向かうと予想しています。