執筆:窪田真之

先週の日経平均は、1週間で665円(4.1%)上昇し、16,919円となりました。先週のドル円は、1週間で52銭、円高が進み、1ドル101.25円となりました。これまで、円高→株安、円安→株高と密接にリンクしていましたが、先週は珍しく円高で株高となりました。

日銀がETF買い取りを年6兆円に大幅増額した効果に加え、米国株の最高値更新が続いている効果が、円高の元での日経平均上昇に寄与しました。

今週の日経平均は、17,000円前後で堅調に推移すると予想されます。なお、12日のCME日経平均先物(9月限)は、16,810円でした。

(1)円高の元で日経平均が上昇した理由は?

今年に入ってから、円高→株安、円安→株高のリンクが鮮明でしたが、先週は円高の中で日経平均が4%も上昇しました。為替連動相場が途切れつつあります。

ドル円為替と日経平均の推移:2016年1月1日―8月12日

(注:楽天証券経済研究所が作成)

円高でも、日経平均が下がらなかったことには、2つの理由が考えられます。

米国株(NYダウ、S&P500)が「ゴールディロック」【注】の米景気を好感して最高値を更新中、つれて世界的に株式が堅調に推移していること。

【注】ゴールディロック:強すぎず、弱すぎない景気の状態。景気が弱いと株は下がるが、強すぎると、金利が上昇して株は下がる。今、米景気は回復しつつも、回復力は鈍く、早期利上げはないとみられている。米国株式が上昇するのに程よいゴールディロック状態。

日銀の株買い支え策が奏功。日銀が年3.3兆円のETF買い増し額を、6兆円に増額と発表。金額が大きいので、これまでのように日経平均の下値を支えるだけでなく、上値を追う要因となる可能性が出ている。

(2)日銀のETF買いが、1回に336億円から707億円に増加

日銀による日本株ETFの買い入れ状況:2016年7月1日―8月12日

(単位:億円)

約定日 従来のETF 新型ETF【注】
7月1日   12
7月4日   12
7月5日 336 12
7月6日 336 12
7月7日 336 12
7月8日 336 12
7月11日   12
7月12日   12
7月13日   12
7月14日   12
7月15日   12
7月19日   12
7月20日 336 12
7月21日   12
7月22日 336 12
7月25日   12
7月26日 336 12
7月27日   12
7月28日 336 12
7月29日   12
8月1日   12
8月2日 347 12
8月3日 347 12
8月4日 707 12
8月5日   12
8月8日   12
8月9日   12
8月10日 707 12
8月12日   12

(出所)日本銀行

【注】新型ETF:設備投資および人材投資に積極的に取り組む企業の株式を組み込むETF。なお、従来のETFは、日経平均連動型が中心。

日銀は、ほぼ毎営業日、新型ETFを12億円買い入れています。それは7月も8月も変わっていません。日銀がETF買い増しを発表した後、8月になって変わったのは、従来のETF(主に日経平均連動型)の1回の買い入れ額が、707億円に増加したことです。

(3)先週の日経平均上昇は、外国人が主導か

先週、日経平均は4%上昇しましたが、その週、日本銀行が買い入れた従来型ETFは、8月10日の707億円だけです。日銀のETF買い増し発表が、心理的に日経平均上昇に寄与していることは間違いないものの、先週の日経平均の上昇を直接主導したのは、日銀ではなく、外国人投資家と推定されます。

8月第1週(1-5日)、外国人投資家は日本株を4,586億円売り越ししているが、先週は、買い越しに転じたと考えられます。以下の①②の要因から、外国人投資家の一部が、日本株の出遅れ感に着目し、円高下でも日本株に買い増ししたと考えられます。

  • 米国株の最高値更新と世界的な株高
  • 1ドル100-105円でも日本の企業業績が大幅な減益とならないことの確認

ここで、重要なことは、日本の企業業績(連結純利益)が2016年1-3月を底に回復に向かうか否かです。7月以降、景気敏感株が上昇し始めていることを見ると、日本の企業業績は最悪期を脱しているとも解釈できます。

まだ日本株に投資するリスクは、いろいろ残っていますが、少しずつ、投資環境が改善しつつあると考えられる事象が増えています。割安な大型株から、時間分散しながら、少しずつ買い増しを考えていい時期に入りつつあると考えています。

(4)日本の景気回復は鈍い

本日、8時50分に日本の4-6月期GDP(速報値)が発表されます。GDPは4-6月期も低迷が予想されます。日本の景気・企業業績とも回復に向かるとしても、回復力は鈍いと考えられます。

まだ、外国人が積極的に日本株を買い上がる条件は整っていません。