執筆:窪田真之

4日の日経平均は93円高の15,775円でした。ブレグジット(英国のEU離脱)ショックが和らぎ、世界的に株価が反発している流れを受け、6営業日連続の上昇となりました。ただ、日経平均は4日までで、ブラックフライデー(暗黒の金曜日:6月24日)の下げ(▲1,286円)の64%しか取り戻していません。英米株に比べると、戻りが鈍くなっています。

円高が再燃するリスクが残っていることが、日本株の上値を抑えています。4日は、円高のマイナス影響を受けにくいディフェンシブ株で、配当利回りの高いものの上昇が目立ちました。

(1)時価総額上位5銘柄の4日の値動き

東証一部の時価総額上位5銘柄の株価変動と配当利回り:2016年7月4日

(金額単位:円)

"時価総額
ランク"
コード 銘柄名 株価 前日比 配当利回り "1株当たり
予想配当金"
1 7203 トヨタ自動車 5,127 +0.4% 2.9% 150
2 9437 NTTドコモ 2,870 +2.6% 2.8% 80
3 9432 日本電信電話 4,951 +2.9% 2.4% 120
4 9433 KDDI 3,295 +3.2% 2.4% 80
5 2914 日本たばこ産業 4,315 +4.6% 3.0% 128

(出所:1株当たり配当金は、トヨタは楽天証券予想、他は会社予想。
配当利回りは、1株当たり年間配当金を7月4日の株価で割って計算)

上記5銘柄を見ると、配当利回りが2.4~3.0%の水準にあり、いずれも好配当利回り株といえます。7月4日の株価変動を見ると、トヨタのみ上昇率が低いが、他の4銘柄は、いずれも大きく上昇しています。ここでは、トヨタのみ景気敏感株で、他の4銘柄はディフェンシブ株【注】です。円高や世界経済の不安が払拭できない中、景気敏感株を避け、ディフェンシブな好配当利回り株を買う動きが出たと考えられます。

【注】ディフェンシブ株:景気変動の影響を受けにくい業績が安定的な株。食料品・医薬品・通信などに多い。

(2)ディフェンシブ好配当利回り株は、株価が下がって配当利回りが上がれば、投資魅力が増える

円高や世界経済の不安が払拭できない中、トヨタなど景気敏感株は、配当利回りが高くても、買われにくくなっています。配当利回りは確定利回りではないからです。業績が悪化して、配当が減らされるリスクもあるからです。

そこで、業績が安定的で減配リスクが相対的に低いディフェンシブ株から好配当利回り株を選んで、物色する動きが出ているものと、思われます。

1株当たりの配当金が減らされなければ、株価が下がれば下がるほど、配当利回りが高くなります。それを、NTTドコモの例で見てみましょう。

NTTドコモの株価と配当利回りの推移:2015年7月1日―2016年7月4日

(注:配当利回りは、1株当たり年間配当金(会社予想)を日々の株価で割って計算)

昨年9月末に、NTTドコモ株は一時2,000円を割り込みました。「安倍首相が総務省にケータイ料金の引き下げを指示した」と報道があったからです。この時、ケータイ電話株は当分、買いにくいとのムードが広がりました。ただし、この時、配当利回りは3.5%を越えていました。後から振り返れば、そこが買い場でした。

総務省主導のケータイ料金の引き下げは、結局、骨抜きになりました。月間利用の少ないユーザーに、これまでより低い料金が提示されるなど、一定の引き下げはありましたが、抜本的な料金見直しにはつながりませんでした。ケータイ利用者としては残念なことかもしれませんが、NTTドコモの株主には朗報です。

総務省は、代わりに、新規加入者へのゼロ円ケータイの提供を禁止することに執念を燃やしています。これは逆にケータイ3社の収益に追い風です。新規加入獲得のために、多大な販売促進費をかけなくて済むようになるからです。もし、総務省の指導でなく、3社が話し合ってゼロ円ケータイをやめるならば、これは、「談合」として違法行為になります。

ところが、今回、総務省の強力な指導によって、堂々と3社で協調して、ゼロ円ケータイをやめることができるようになったわけです。他社を出し抜いて、加入者を増やすことが難しくなった一方、他社に出し抜かれて、加入者を引き抜かれるリスクも減ったわけです。

こうした結末を今だから語ることができます。安倍首相が料金引き下げを指示した直後には、わからなかったことです。ディフェンシブ好配当利回り株は、悪材料が出て下がった時に買い増すという考えがなければ、安値でNTTドコモを買い増すことはできません。

リスクはいつでもありますが、高収益・好財務のディフェンシブ株については、「下がった時にはコツコツ買い増し」の方針でいいと思います。

今のNTTドコモは、2015年9月に比べると、株価水準は高くなっています。ただし、それでも、配当利回りはなお2.8%と魅力的な水準です。長期金利がマイナス0.2%まで下がってしまった今日、こうした好配当利回り株には、これからも物色が続くと予想しています。