12月6日 「中立」
石炭値上げ凍結措置の効力に疑問符、電力各社のコスト軽減効果は期待できず

中国の国家発展改革委員会(NDRC)はインフレ抑制策の一環として石炭価格の抑制措置を強化しており、11月22日には石炭生産者に自主的に2011年度向け発電用炭契約価格の値上げを抑えるよう要求した。その後12月1日には大手生産者を対象に11年度向けの契約価格の値上げを禁止し、10年度並みに据え置くよう指示。また、同時に石炭生産者による投機活動を厳しく禁止する方針を通達した。このニュースを受け、2日の香港市場では電力銘柄が軒並み大幅に値を上げたが、これはマーケットの一時的な過剰反応とみられ、翌3日には反落する展開となった。

BOCIはこうした政府当局の措置を「スポット価格の値上がり防止を目的としたけん制」と受け止めており、実質的な効果を疑問視している。実際に石炭スポット価格を抑制するのは極めて難しいとの見方であり、石炭積み出し港・秦皇島における5500キロカロリー種価格が11月22日以降に前週比1.3%高の1トン当たり810元に達したことを指摘した。また、中国政府は現在、CO2排出削減政策に基づく電力供給制限を行っているが、BOCIはこの措置が終わり次第、向こう3カ月にわたって電力需要が急増すると予想。これが結果的に石炭スポット価格を押し上げるとみている。

また、陝西省、河南省などではすでに2011年度の石炭契約価格の値上げが決定しており(陝西省では1トン当たり40元、河南省では同30-50元値上げ)、地方レベルでの値上げ禁止措置の徹底は難しいとされている。石炭会社側としても、契約販売比率を低減させ、スポット販売を増やすなどの方法で値上げ禁止措置に対処することが可能。実際、BOCIのリサーチによれば、電力各社側も発電用炭契約価格の前年比5%の値上げを見込んでいるという。

電力各社が大手石炭会社から年間契約ベースで調達する石炭は総所要量の15-25%で、その他一部は各省の中小生産者から調達する。NDRCの指示はこうした中小生産者に対しては必ずしも有効ではなく、BOCIは大手以外から調達する分の発電用炭契約価格について、前年比5%の値上げを想定。NDRCの値上げ凍結目標の達成率がほぼ同様の環境下にあった2008年並みの78-95%にとどまると予測し、電力各社によるスポット市場での石炭調達比率も11年には32-53%に上向くとの見通しを示した。こうした点から、電力銘柄が受ける政策の恩恵はほとんど期待できないとし、単位当たり燃料コストに関する予測値に変化はないとしている。

BOCIは電力銘柄の2011年利益モデルにおいて標準型石炭コストの前年比3%の上昇を想定し、電力セクター全般に対する中立的な見通しを継続した。個別では石炭価格上昇に対する抵抗力の強さなどから、華潤電力控股(00836)、大唐国際発電(00991)などの銘柄を有望視している。