執筆:窪田真之

先週の日経平均は、1週間で1,002円下がり、15,599円となりました。一時1ドル103円台まで円高が進んでことが嫌気されました。米FRBが利上げを見送り、日銀が追加緩和を見送ったことが円高の原因となりました。また、6月10日の英世論調査でEU離脱派が残留派を上回り、英国のEU離脱が現実のものとなったと受け止められ、欧米株式が下落し、安全資産として円が買われた面もありました。

ただし、最新の英世論調査では、再び、残留派が離脱派を上回りました。残留派の女性議員が極右思想を持つ男に射殺されたとの報道が影響し、浮動票が残留に一部流れたと考えられます。

今週は、英国のEU離脱リスクがやや低下したことを好感し、週初は、欧米株式および日経平均が買い戻される可能性があります。ただし、世論調査ではまだ残留派と離脱派が拮抗しており、23日の英国民投票で、残留決定の結果が出るまで、日経平均の上値は重い可能性もあります。

(1)先週の日経平均は、三角もち合いを下放れる

日経平均週足:2016年1月4日 - 6月17日

(注:楽天証券マーケットスピードより筆者作成)

上の週足を見ていただくとわかる通り、日経平均は三角もち合いから下に放れました。13・26週移動平均線ともに下向きとなっており、短期的に下値リスクが高まったかたちに見えます。

ただし、私は、今週の日経平均は、反発して始まる可能性があると考えています。英世論調査で、EU残留派が離脱派を再び上回ったことから、英国のEU離脱リスクから下がったとして欧米株式がいったん買い戻される可能性があるからです。ただし、残留派が上回ったとはいっても僅差であり、国民投票の結果はまだ予断を許しません。

英国の世論調査会社の1つ、サーベイション社が17日と18日に行った調査では、残留派が45%、離脱派が42%で、残留派が3ポイント上回りました。これは、EUへの残留を呼び掛けて活動していた女性議員が男に殺害された16日の後、最初に行った世論調査であるので、注目されていました。事件の影響で、残留派が勢いを盛り返したことがわかります。サーベイション社が事件前に行った世論調査では、残留派が42%、離脱派が45%で、離脱派が上回っていました。

6月12日に米フロリダ州で、移民2世のイスラム教徒が起こした銃乱射事件で49人が死亡したニュースが伝わった時は、EU離脱派が勢いを得ました。テロが起こるたびに、反移民感情が欧米に広がるからです。EU離脱派は、「EUから入ってくる移民を規制できず、移民の流入が年30万人に及んでいること」を、EUから離脱するべきとする重要な理由としているからです。

(2)反発しても、日経平均の上値は当面重い

日経平均の動きに一番影響を与えているのは、為替です。先週は、①米利上げなし、②日銀追加緩和なしに加えて、③英国のEU離脱が決まる可能性が高いというムードの中で、一時1ドル103円台まで円高が進みました。

英国で16日、残留派の女性議員が殺害される事件が起きてから、17日には、英ポンドが上昇し、1ドル104円台に円安が進みました。この時点で、英国のEU離脱のリスクが低下したことを、すでに織り込み始めていたといえます。今日、どこまでドル円が円安に戻るか、注目されます。米利上げなし、日銀追加緩和なしの事実は変わらないので、英国のEU離脱リスクがやや低下しただけでは、大幅な円安には戻らないかもしれません。そうなると、日経平均はいったん反発しても、その後、上値が重くなる可能性があります。

(3)今週の最大の注目は、6月23日(木)の英国民投票が出る6月24日(金)

開票状況が、日本時間で24日(金)に出てくると考えられます。24日(金)の東京時間で、英国民投票の大勢が判明すれば、それに反応して株・為替が大きく動く可能性もあり、注目されます。