執筆:窪田真之

15日の日経平均は、60円高の15,919円でした。BREXIT(ブレグジット:イギリスのEU離脱)リスクが高まったことを嫌気して、朝方106円安の15,752円まで下がりましたが、その後、売られ過ぎと見た国内投資家の買いが入って、上昇に転じました。

最近、「ブレグジットが起こると世界恐慌になる」と危機をあおるレポートを目にしますが、それは極論に過ぎると思います。ブレグジットで、英国・EUがダメージを受け、世界経済にも影響が及ぶのは避けられませんが、世界恐慌を招くほどの問題とは考えていません。日本株も売られ過ぎの域に入りつつあると考えています。

ただし、円高リスクには注意が必要です。日本株にとって一番重要なのは、どこまで円高が進むかです。1ドル100~105円に円高が進むと、日経平均が15,000円まで下がるリスクはあります。6月は事前予想通り、米利上げはありませんでした。年内米利上げがまったく実施できないと、円高がさらに進むリスクがあります。

16日の午前6時現在、為替は1ドル106.02円、CME日経平均先物(9月限)は15,865円でした。

(1)6月は事前予想通り、米利上げはありませんでした

日本時間で今朝、米FOMC(金融政策決定会合)の結果が発表されました。事前予想通り、利上げはありませんでした。6月3日発表の5月米雇用統計がネガティブ・サプライズだった時点で、6月の利上げはないと思われていました。その後、ブレグジット懸念で、世界的に株が下がっていますので、6月利上げはますますやりにくくなっていました。

利上げがなかったこと自体は事前予想通りでしたが、FOMC声明で先行きの金利見通しが引き下げられたため、一時1ドル105.43円まで円高が進みましたが、その後、イエレンFRB議長の「7月利上げも不可能ではない」との発言が伝わると、ドル買いが強まり、一時106.39円まで円安が進みました。ただ、現在の世界情勢を鑑みると、7月利上げも難しいとの見方もあり、結局、1ドル106円前後と、元の水準に戻りました。

(2)今日の昼発表の、日銀金融政策決定会合の結果に注目

市場予想では「追加緩和なし」が大勢ですが、一部に追加緩和実施の予想も残っています。追加緩和があってもなくても、為替や株になんらかの影響が及ぶ可能性はあります。これまで日銀は、緩和期待がない時に緩和し、緩和期待がある時に緩和しない、サプライズ型の金融政策を続けてきたので、事前に結果を予想することが難しくなっています。

私は、以下のどちらかと予想しています。

  • 追加緩和なしと発表した後、黒田総裁が「必要になれば躊躇無く緩和する」との従来の発言を繰り返す。
  • 小手先の緩和策を出す。ETFの買い取り額の小幅増加や、金融機関へのマイナス金利融資の実施などが考えられます。大規模緩和とは言えないので、市場へのインパクトは限られるでしょう。ただし、何もしないというゼロ回答を避けた上で、「必要になれば、さらなる追加策を躊躇無く行う」と力強く語れば、先行きの緩和期待は残せるかもしれません。

(3)円高リスクへの警戒は続く

「米利上げなし・日銀の追加緩和なし・ブレグジット実現」と6月に3つ円高(ドル安)材料が揃ったとき、どこまで円高が進むか、注意深く見ておく必要があります。

ただし、私は、ブレグジットのリスクを世界の金融市場は織り込みつつあると考えています。ブレグジットが実現してもしなくても、イベントを通過すれば、世界の金融市場は落ち着くと見ています。

日本経済にとって、ブレグジットそのものが直接及ぼす影響を過大視すべきではないと思います。ブレグジットが実現すると、英国に作った日本企業の工場から、対EUで輸出する際に、関税をかけられるリスクが発生します。これは、大きな問題です。ただし、なんらかの形で、救済策が施される可能性もあります。現時点で、ブレグジット後にイギリスとEUとの関係がどう変わるか予想するのは困難ですが、単純に今イギリスが持っている特典がすべて白紙になるというわけでは、ありません。

具体的に言えば、EU脱退後も、イギリスが一定条件をのめば、EUとの貿易で「関税なし」の恩典が残る可能性もあります。交渉は簡単ではありませんが、イギリスとEUが、お互いのダメージを最小にするために、交渉して決めることです。

EUにとって一番恐ろしいのは、EU加盟国がイギリスに倣って次々と脱退に動くことです。イギリスと同様に、資金面でEUを支えているフランスやオランダの世論がどう傾くかが懸念されます。イギリスがEU脱退後も、なんのペナルティーもなく、EUとの貿易特権を維持できると、脱退連鎖を誘発することになりかねません。

さまざまな思惑をかかえたまま、イギリスとEUは難しい交渉を行うことになります。