執筆:窪田真之

先週の日経平均は、1週間で41円下がり、16,601円となりました。米早期利上げの見通し後退を受けて円高が進みつつあることが弱材料となりました。ただし、米早期利上げ見通しの後退は米国株および世界の株式には強材料です。先週の日経平均は6月9日まで米国株が堅調に推移したことが、下支え要因となりました。

ところが、週末(6月10日)には、欧米株式も下落しました。BREXITのリスク(6月23日の英国国民投票でEU離脱が可決されるリスク)や、原油の反落が売り材料となりました。欧米株式下落を受けて、先週末のCME日経平均先物(9月限)は、16,290円(東京市場の日経平均終値対比▲311円)まで下がっています。今週の日経平均は、続落が予想されます。

(1)英国民投票を6月23日に控え、BREXITのリスクが意識される

NYダウと日経平均の動き:2016年1月4日―6月10日

2016年の日経平均は、世界の株式市場の中で一人負けとなっています。米利上げ見通しの後退が世界の株式にとってプラスであるのに、利上げ後退で円高が進むため、日本株にはマイナスとなっているからです。

ただ、先週末(6月10日)は欧米株式も軒並み下がりました。改めてBREXIT(英国のEU離脱)のリスクが蒸し返され、特に欧州で「リスクオフ」の動きが広がりました。英国の国民投票を6月23日に控え、まだ世論調査で、賛否が拮抗していることが不安をかきたてました。

6月23日の国民投票で、英国のEU離脱が可決されるか否決されるかについて、世論調査とブックメーカー(賭け業者)のODDS(掛け率)で、異なる予想となっています。世論調査は賛否拮抗で、どちらに転ぶかわからない状況です。一方、英国最大のブックメーカーのODDSから算出される「EU残留予想確率」は75%と高くなっています。6月10日の欧州市場では、世論調査での賛否拮抗が、不安を高めたかたちです。

(2)今週のイベント:日米の金融政策発表

  • 6月14-15日:米FOMC(金融政策決定会合)

    政策変更(利上げ)なしが市場コンセンサスで、その通りに発表されてもサプライズはありません。市場の注目は、FOMC声明文の内容です。そこから7月の利上げがあるかないか、市場は読み取ろうとします。7月利上げもないとの見方が広がると、ドル安(円高)が進むリスクには、警戒が必要です。

  • 6月15-16日:日銀金融政策決定会合

    追加金融緩和がないことが、ほぼコンセンサスですが、一部に追加緩和の期待も残っています。追加緩和なしでも、サプライズとはならないと思いますが、その場合、問題となるのは、7月追加緩和の期待が残るか否かです。6月の追加緩和がなく、7月以降の緩和期待もなくなる場合は、円高が進むリスクがあります。

    市場へのインパクトの大きい大規模な追加緩和(バズーカ砲)は、私は7月以降も期待できないと考えています。ただし、なんらかの小規模な追加策を発表する可能性はないとは言えません。バズーカ砲がなく、小手先の追加策を出しても、効果は限定的と考えます。

    バズーカ砲となり得る大規模追加緩和には、日銀による債券の年間買取額10-20兆円の追加、日本株ETFの年間買取額5-10兆円の追加などがありますが、いずれも、副作用が大きい上に、将来の金融政策「出口」を困難にすることから、実施される可能性は低いと思います。

  • 日米金融政策が同時に明らかになる6月16日(木)に要注意

    米FOMCの結果発表はニューヨークで6月15日ですが、それは日本時間では6月16日早朝となります。また、日銀金融政策決定会合の結果発表は、6月16日の昼となる見込みです。日米金融政策に何らかのサプライがあると、いずれも6月16日東京市場の為替および日経平均に反映されることになります。