バーゼル3対応と英国銀行課税で負担増、新興国市場基盤と引当金低減が業績に貢献

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00005 匯豊控股(HSBCホールディングス)  79.75 HKD
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バーゼル銀行監督委員会は今年9月、銀行に対する新たな自己資本比率規制「バーゼル3」の概要を明らかにした。同委員会は普通株式と内部留保が主体の「狭義の中核的自己資本(コアTier1)比率」を現行の2%から2019年までに実質7%に引き上げる方針を示しており、さらにカウンターシクリカル資本バッファーが全面的に適用されれば最低水準は9.5%に上昇する。HSBCの10年6月末時点のコアTier1比率は9.9%(バーゼル2基準)。一見するとバーゼル3への対応は可能な水準とみられるが、バーゼル3では資産のリスクウェートを高める可能性が示唆されているため、リスク加重資産(RWA)の評価が厳しくなればその分、銀行の自己資本比率は圧迫されることになる。HSBCはバーゼル3の詳細が明確になっていないことを理由にその影響の度合いについて明言を避けている。BOCIはRWAの増加によりバーゼル3基準下の同行のコアTier1比率が最低でも200ベーシスポイント減の8%程度に低下するとみている。

バーゼル3ではさらに、銀行を国際業務の規模の大きい「金融システム上で重要な金融機関」と「その他金融機関」に分け、「重要な金融機関」にはより高い自己資本比率を義務付ける方向で協議が行われている。HSBCは「重要な金融機関」に分類される可能性が高く、さらなる負担を迫られる。コアTier1比率が1%上昇するごとにHSBCは130億米ドルの資産増強が必要になるとBOCIは試算している。

また、英国とフランス、ドイツでは、銀行課税の実施が計画されている。英国政府は来年から銀行のバランスシートに対する課税を開始し、12-13年までに年間25億ポンドの税収を見込んでいる。英国の銀行および英国内で営業する外国銀行の子会社や支店も課税対象で、HSBCもこの影響を避けられないとみられる。

一方、HSBCのポジティブな面として、香港を初めとするアジア・新興国市場での基盤の強さが挙げられる。同行は10-11年度の香港およびその他アジア太平洋地域の貸出残高がそれぞれ20%増、15-16%増に達するとの見通しを示しており、BOCIもこの見方を支持している。これに対し、欧州・北米事業の貸出残高は10-11年度にそれぞれ5-6%増、2-3%増にとどまる見通し(BOCI予想)。10年度にはアジア・新興国市場は同行総貸出残高の32%、税引き前利益の3分の2を占めると試算される。

さらに貸倒引当金の低減が10-11年度業績を支えるとみられる。09年度の引当金は265億米ドルに上ったが、10年度は143億米ドルに減少する見通し。グループレベルの引当金は11年度に18%、12年度に12%の減少が見込まれる。こうした見通しを踏まえ、BOCIは同行の10-12年度EPS増加率をそれぞれ127%、32%、18%と予想。ROEは09年度の5%から12年度には13.7%に回復するとみている。

BOCIは以上の観点を踏まえ、HSBCの株価見通しを中立の見方に維持している。れることがあります。