執筆:窪田真之
今日のポイント
- 日経平均は18,000円台回復も、日中値幅・出来高は低下。一気に上値を追うにはやや盛り上がりを欠く。
- 次に気になるイベントは12月13-14日の米FOMC。利上げがないと円高に反転するリスク、利上げがあると世界の株が調整するリスクに注意。
- 円安と米景気堅調の恩恵から、下半期の日本の企業業績は上方修正が増える見込み。
(1)一気に上値を追うには、出来高の盛り上がりがやや不足
21日の日経平均は、一時1ドル111円台をつけた円安を好感し、前週末比138円高の18,106円と、18,000円台を回復しました。
ただし、日経平均の日中値幅(日中高値と安値の差)は121円に縮小し、売買高も減少しつつあります。ボラティリティ(変動性)の小さなマーケットに戻りつつあるように思われます。
日経平均および東証一部売買高の推移:2015年8月3日―2016年11月21日
上のチャートをご覧いただくとわかる通り、トランプ・ラリーで売買高が増加したおかげで、日経平均は17,600円の節目を抜けて、18,000円台まで上昇することができました。
ただし、足元、出来高が再び減りつつあります。日経平均で18,000円前後の戻り売りをこなして一気に上昇するためには、やや盛り上がりを欠く状況です。しばらく18,000円前後で値固めが必要と思われます。
日経平均の日中の値幅(日中高値と安値の差):2016年1月5日―11月21日)
2016年前半(1-6月)は荒れる(日中値幅の大きい)相場が続きましたが、年後半にかけて値幅は小さくなり、大きくは上へも下へも動きにくい相場になりつつありました。
11月に入って、米大統領選でトランプ氏当選が明らかになると、日経平均は急落後に急騰しました。一時的に変動幅が大きくなりました。
ところが、その後、日中値幅は再び縮小しつつあります。ボラティリティ(変動性)低下のトレンドは、継続しているように見えます。
(2)日銀の日本株ETF買いが市場の変動性を減らす役割をしている
日銀が8月以降、年6兆円のペースで日本株ETFを買う方針としていることが、日本株の下値を支えるとともに、ボラティリティを低下させる要因となっています。
日銀は、日経平均が下がると買いを増やし、上がると買いを減らす傾向が、鮮明です。そのため、売り手は積極的に売りにくく、また、買い手も積極的に買いにくい状況を生じています。11月のトランプ・ショックでは、久々にボラティリティが高まりましたが一時的で、足元再びボラティリティは低下しつつあります。
(3)12月の米FOMCと、下半期の日本企業の業績モメンタムに注目
次にボラティリティが増加するのは、いつでしょうか。次の気になるイベントは、12月13-14日のFOMC(米金融政策決定会合)です。為替市場では、12月に米利上げが行われることを織り込みつつ、ドル高(円安)が進んでいます。ここで利上げがないと、円高に反転するリスクがあります。
12月に米利上げがあると、利上げを嫌気して世界の株が一時的に調製するリスクもあります。利上げをしても、利上げに打ち止め観が出れば、株の調整は限定的でしょう。
FOMCがどういう形の発表となるか、また、トランプ次期大統領が、利上げに対して、どのような発言をするかも、市場に影響します。内容次第で相場が荒れることを考えておく必要があると思います。
下期に期待されるのは、日本企業の業績モメンタムです。これまでは、下方修正が上回っていましたが、為替が円安に反転したことにより、下期は上方修正が上回る展開と予想しています。
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