先週の日経平均は、1週間で324円上昇して16,736円となりました。1ドル110円台まで円安が進んだことが好感されました。米景気が4月から持ち直していることを示す景気指標の発表が続いたこと、18日に公表された4月のFOMC(米金融政策決定会合)議事録に6月利上げを示唆する内容が含まれていたこと、米国各地の連銀総裁が6月利上げに前向きな発言を繰り返したことが、円安要因となりました。

ただし、米国内では共和党の大統領候補ドナルド・トランプ氏が、利上げを進める米FRBを非難し、「大統領になったらイエレンFRB議長は再任しない」と述べるなど、米国の政治情勢を見ると、すんなり利上げを実施できるかわからない状況です。

為替・日経平均とも、やや膠着感が出ています。今週も、上下とも大きくは動きにくい展開が続くと考えています。

(1)日経平均は、当面ボックス圏で推移する見込み

日経平均週足:2015年1月―2016年5月(20日まで)

(出所:楽天証券マーケットスピードより筆者作成)

年初来、荒れ相場が続いてきましたが、最近、ようやく値動きが落ち着いてきました。週足チャートを見ると、日経平均で16,500-17,000円を中心としてボックス圏に収束しつつあるように思います。ここは過度に悲観的にならず、景気・企業業績の先行きをみきわめていく必要があります。

移動平均線を見ると、13週移動平均線が上昇に転じていますが、26週移動平均線は下落が続いています。移動平均線から見ると、投資判断は「中立」となります。しばらく、強弱感が拮抗し、大きくは上下とも動きにくい状況が見込まれます。

なお、日経平均の13・26週移動平均線を使ったシンプルなテクニカル分析については、以下のレポートを参照ください。

3分でわかる!今日の投資戦略4月12日「相場は相場に聞く、私のやり方

(2)強弱材料が拮抗

強材料

米景気持ち直し、6月利上げの思惑復活。それが、円安(ドル高)要因に。

1-3月に失速した米景気が4月から回復している見込みです。一時、年内利上げは難しいという見方が広がりましたが、今は、6月にも利上げありうるという見方が復活しています。それを受けて、1ドル110円台まで円安が進みました。

原油価格が上昇

昨年急落した原油など資源価格が一斉に反発。資源安ショックで悪化した世界景気に持ち直しの期待が出ています。

景気対策実施への期待

日本の景気・企業業績が軟化していることを受け、景気対策実施への期待が高まっています。安倍首相はG7で欧米各国に財政出動で協調することを提案しており、日本でも財政出動を準備していると考えられます。5~10兆円の景気対策が発表される可能性があります。ただ、公共投資には、一時的な景気底上げ効果しかなく、長期的な買い材料とはなりません。それでも目先の相場にはプラス効果がありそうです。なお、来年4月に予定される消費増税の延期が発表されれば、さらに相場の下支え材料となります。

中国景気持ち直しへの期待

10-12月に悪化した中国景気は、1-3月に持ち直している模様。ただし、4月以降、回復が続くかは、未知数です。

弱材料

米利上げの思惑復活で、世界的に株が調整する懸念

米景気持ち直しで、米利上げの思惑が復活し、ドル高(円安)が進んでいることは、日本株に追い風です。ただし、米利上げは、世界の株式市場が懸念する大きな悪材料です。米利上げへの警戒感から、世界的に株が下がれば、日本株にも外国人の売りが波及する可能性があります。

原油反落の懸念

OPECでは、サウジアラビアとイランが反目しているために、4月は増産凍結で合意することができなくなっています。6月のOPEC総会でも合意達成は困難です。世界的な需要増加によって、原油価格は支えられていますが、足元の原油価格の反発ピッチが速いため、今後、中東産油国の増産を材料として、原油価格が反落する可能性は気にかけていた方がいいと思います。

日本の景気・企業業績の失速

前期(2016年3月期)の企業業績は、下方修正が続き、最終的に減益となりました。GDPも低空飛行が続いています。日本はミニ景気後退におちいっている懸念も出ています。

中国の構造改革の遅れ

中国景気は足元、持ち直している模様ですが、中国政府が公共投資を増やして景気を支えているためと考えられています。ただし、これで、非効率経営のゾンビ企業が復活すると、中国の経済構造改革はさらに遅れることとなりそうです。足元、中国鉄鋼市況の反発が続いていることから、鉄鋼業のゾンビ企業が、再び増産に転じているようです。

世界的な反グローバル主義の広がり

米大統領選では、反グローバル主義・反資本主義の過激発言を続けるドナルド・トランプ氏が高い支持率を得ています。英国では、EU離脱を問う国民投票が実施されます。EU離脱が実現すると、ロンドンの国際金融市場としての価値は著しく低下する見込みですが、それでも英国では、EU離脱を支持する国民が半数近くに迫っています。欧州での反移民運動も含め、世界的に反グローバル主義が広がりつつあることは、世界の株式投資にとって、リスク要因となります。

(3)3月決算のまとめ(日本経済新聞の集計ベース)

前期(2016年3月期)の業績予想は、徐々に下方修正され、最終的に減益となりました。今期(2017年3月期)は、反動で小幅増益となる見通しです。

前期(2016年3月期)全産業(除く金融)ベース経常利益(前年比)会社予想の推移

集計日 前年比増減益率
2015年5月時点 +8.7%
2015年8月時点 +8.0%
2015年11月時点 +6.9%
2016年2月時点 +2.3%
最終着地 ▲1.3%

今期(2017年3月期)全産業(除く金融)ベース経常利益(前年比)会社予想

集計日 前年比増減益率
2015年5月時点 +2.7%

(出所:日本経済新聞。集計対象は、全国上場の3月本決算会社。電力除く。ジャスダックとマザーズ上場企業も除く。決算期変更会社、親子上場企業の子会社も除く)

(4)シニアグローバルストラテジスト香川睦のレポートにご期待ください

今週から、「3分でわかる!今日の投資戦略」の金曜日は、5月1日入社のシニアグローバルストラテジスト香川睦(かがわむつみ)が執筆いたします。グローバルな視点から、日本株の投資に有用な情報をタイムリーに提供します。

金曜日の執筆者に香川を迎え、よりパワーアップする「3分でわかる!今日の投資戦略」に、ぜひご期待いただきたいと思います。なお、月~木は、引き続き、窪田真之が執筆いたします。