17日の日経平均は、前日比186円高の16,652円でした。為替が1ドル109円台の前半へ、やや円安に進んだことが好感されました。また、原油価格が予想以上に堅調であることも、追い風となっています。資源価格の反発が続けば、今期の日本企業の業績を押し上げる要因となります。

世界経済に不安の種は尽きず、原油が反落することを懸念する声もありますが、最近、米シェールオイルの供給減少、原油価格が下がったことによる世界需要増加を材料として、一部に原油強気説も復活しています。

(1)原油先物の反発が続いていることは、世界景気に追い風

昨年、原油急落ショックが世界の金融市場に大きなマイナス影響を及ぼしました。産油国があわてて世界中の株を売りまくったことが記憶に新しいところです。原油急落で、世界景気が悪化する不安も高まりました。

今年に入って原油が反発しているので、世界中の投資家は、とりあえずほっとしました。このまま順調に原油反発が続けば、世界景気に好影響をもたらします。

WTI原油先物(期近)の動き:2014年4月1日―2016年5月17日

(出所:シェールオイル生産コストは楽天証券経済研究所の推定)

今の世界経済には、資源安ショックの影響で、下方圧力がかかっています。資源国の景気が悪化しているだけでなく、資源輸入国の景気も、資源安ショックの影響で悪化しています。日本は、長い目で見れば、資源安の恩恵をもっとも受ける国ですが、短期的には、資源安で大きなダメージを受けています。2016年3月期の企業業績は、資源安の影響で、大きく下ぶれしました。資源権益の減損、資源の高値在庫の評価損に加え、資源国でのビジネス悪化が、下ぶれ要因となりました。2017年3月期は、資源価格が反発していることが、増益要因となります。資源安で前期落ち込んだ利益が、回復します。

(2)米シェールオイルがようやく減少トレンドに向かう

最近、中東から出てくるニュースには、原油を再び下げてしまうようなものが多くて気になります。4月17日のドーハ産油国会議では、原油増産凍結の合意ができませんでした。イランに一定の増産枠を認めた上で、イラン以外の国が増産を凍結する案で、まとまる予定でした。ところが、イランと断交したサウジアラビアが、「イランが参加しない増産凍結には参加しない」と強硬に主張したため、合意はできませんでした。6月のOPEC会議で、再度、増産凍結に向けて話し合いますが、イランとサウジの溝が埋まらなければ、合意はできそうにありません。

このニュースだけ聞いていると、すぐにも原油が急反落してもおかしくなさそうです。ところが、原油は今のところ、順調に上昇しています。

原油市場で最近話題になっているのは、米シェールオイルの供給が減り始めていることと、原油の世界需要が拡大し続けていることです。中東産油国が増産凍結で合意できず、日産1.7百万バレル程度を増産してしまっても、シェールオイルの減産と、世界需要の増加によって吸収され、来年にかけて、原油の供給過剰は、徐々に解消に向かう見通しが出ています。

米国シェールオイルは生産コストが1バレル30~70ドルと高く、原油価格が一時30ドル以下に下がったことで、新規開発が大きく減りました。ところが、2015年中は、米国シェールオイルの生産はあまり減りませんでした。高コストの油井は生産停止に追い込まれましたが、低コストの油井が大幅に増産したためです。

ただし、シェール油井の新規開発が大幅に減少している効果で、2016年後半には米国の原油生産の減少トレンドが鮮明になると考えられています。

(3)原油の世界需要拡大が続く

原油需要は順調に拡大する見込みです。世界需要に大きな影響を及ぼすのは、米国と中国です。米国は、エネルギー価格の低下によって、需要が伸びています。アメリカ人の好きなガソリンを食う大型車の販売が好調で、小型車が販売不振になっていることからも、それはわかります。

原油需給の鍵を握るもう1つの国が中国です。中国の資源爆食が復活することはありませんが、中国政府が公共投資を追加している効果で、中国需要も小幅ながら増加する見込みです。価格下落による需要喚起効果もあって、世界全体で、原油需要は順調に拡大しそうです。インドの需要増加も大きくなっています。

原油をめぐる目先の材料と、世界的な原油需給の変化を、これからも良く見ていく必要があります。日本株の上昇下落に大きく影響するので、本欄でも継続してこのテーマを取り上げます。