16日の日経平均は54円高の16,466円でした。一時220円高の16,632円まで上昇しましたが、引けにかけて上げ幅を縮小しました。昨年10月以降、日本の景気・企業業績にブレーキがかかっていることが明らかになりつつあり、上値の重い展開が続いています。

今日は、16日で発表が完了した3月決算のまとめを書きます。

(1)今期は金融を除けば小幅増益、金融を含めると小幅減益の見通し

東証一部3月期決算企業の今期(2017年3月期)経常利益(会社予想)の前年比増減益率

集計対象 今期経常利益(前年比)
金融を除く1247社 +1.0%
金融を含む1357社 ▲1.6%
金融107社 ▲11.0%

(注:連結経常利益(米国基準・IFRS採用企業は連結税前利益)の会社予想を集計。三菱商事・三菱UFJ FG・みずほFGは、連結純利益の会社予想から連結経常利益を推定。楽天証券経済研究所が集計)

金融を除けば、わずかに経常増益の予想となるが、金融を含むと減益予想となります。金融業の予想減益額が大きいからです。マイナス金利のマイナス影響などが現れています。また、今期は、円高による輸出企業の減益予想額も大きくなっています。

(2)円高が輸出企業の今期業績の足を引っ張る

円高による今期経常減益予想額が大きい輸出企業

(金額単位:億円)

No コード 銘柄名 前期実績 今期予想 減益額 円高影響 前 提
1 7203 トヨタ自動車 29,834 19,000 ▲ 10,834 ▲ 9,350 105円/ドル
2 7270 富士重工業 5,770 4,200 ▲ 1,570 ▲ 1,686 105円/ドル
3 7201 日産自動車 8,623 8,000 ▲ 623 ▲ 2,550 105円/ドル
4 6301 小松製作所 2,049 1,450 ▲ 599 ▲ 320 105円/ドル
5 7261 マツダ 2,236 1,760 ▲ 476 ▲ 810 110円/ドル

(出所:各社資料より楽天証券経済研究所が作成)

前期(2016年3月期)は、円安が増益要因となりました。1-3月から円高が進んでいましたが、それ以前(2015年4-12月)に、十分に円安で恩恵を受けていました。今期(2017年3月期)は、円高がフルに効くために、日本企業の業績を悪化させます。自動車で特に影響が大きくなります。

ただ、減益予想額が大きいことが、必ずしも ビジネスが不振を意味するわけではありません。トヨタ・富士重工・日産自動車・マツダは、今期は世界の自動車販売台数が、順調に拡大する計画です。特に富士重工・マツダの車は、海外で人気車種となっており、円高がなければ、今期も順調に最高益を更新する見込みになっていたと思われます。

小松製作所は、円高がマイナスですが、鉱山機械の販売不振の影響も続きます。小松は円高がなくても、減益予想となっていました。

販売が順調に拡大する見通しの富士重工やマツダは、円高が一服するタイミングでは、買っていけると考えています。円高に加えて、販売も不振が続く小松製作所は、当分、投資対象としての魅力は高まらないと考えています。

(3)金融業が大幅減益予想となっている理由

今期経常減益予想額が大きい金融株

(金額単位:億円)

No コード 銘柄名 前期実績 今期予想 減益額
1 8306 三菱UFJ FG 15,395 13,200 ▲ 2,195
2 8411 みずほFG 9,975 8,100 ▲ 1,875
3 7181 かんぽ生命保険 4,115 3,100 ▲ 1,015
4 7182 ゆうちょ銀行 4,820 4,200 ▲ 620
5 8309 三井住友トラストHLDG 2,781 2,550 ▲ 231

(出所:三菱UFJとみずほは楽天証券経済研究所の推定、他は会社予想)

金融業は、例年、期初は、減益で予想を出すことが多くなっています。例年、株式や債券の売却益が、経常利益を押し上げていますが、期初の予想では、株式や債券の売却益を見込まないことが多いからです。

今年は、それに加えて、マイナス金利の影響も、金融業の業績の足を引っ張ります。かんぽ生命とゆうちょ銀行は、これまで収益の大半を国債運用益に依存してきましたので、長期国債の利回りがマイナスになった影響を受けて、減益が続く見通しとなっています。

ただし、期の途中で、金融業の利益は上方修正されていくと見込みます。今年も、株や債券の売却益が出ると考えられるからです。

長期国債の利回りがマイナスになった影響で、金融各社は保有する国内債券に、大きな含み益が生じています。日銀の買い取りに対応して、債券を売却すれば、売却益がかなり出ます。

ゆうちょ銀行では、3月末時点で、保有する有価証券に4兆1,864億円の評価益(税効果前・ヘッジ考慮後)があります。主な内訳は、国債の評価益が1兆7,447億円、外国債券の評価益が1兆9,678億円です。債券売却益を出せば、今期の見かけ上の利益を押し上げることは、いくらでもできる状態です。