20日の日経平均は、前日比32円高の16,906円でした。19日の海外市場でWTI原油先物(期近)が1バレル41.08ドルまで上昇したことが好感され、寄り付き直後に225円高の17,099円まで上昇しました。ただし、その後、上昇幅を縮小しました。①原油先物上昇の手がかりであったクウェートのストが収束したとの報道が出たこと、②上海総合株価指数が一時4%超の下落となったことが影響しました。20日の上海総合株価指数は、その後下げ幅を縮小し、前日比2.3%安で引けました。

今日は、日本の景気・企業業績に大きな影響を及ぼす、中国景気の足元の状況について報告します。

(1)上海総合株価指数の変動が、最近あまり話題になっていなかったのはなぜか?

今年の1月は、上海株の急落が引き金となって、世界同時株安が始まりました。中国経済の影響を受ける日本株にも外国人の売りが出て、日経平均も急落しました。

上海株の下げは1月で一服しましたが、2月前半、日経平均は原油急落を嫌気して、下げ続けました。産油国からの売りが、日本株の下げを加速しました。

原油価格は2月後半から持ち直し、世界の株は反発局面に入りましたが、日経平均だけは3月も大きく下がりました。3月から円高が急伸したことが嫌気されました。

現在、日経平均先物の短期ディーラーが注目しているのは、為替と原油先物です。円高・原油安なら日経平均を売り、円安・原油高なら日経平均を買うトレードが続いています。いつのまにか、上海株の値動きへの関心が薄れていました。20日は、上海株が一時4%超下げて、珍しく日本株に影響しました。

上海総合株価指数の動き:2015年末~2016年4月20日

上海株の値動きが乏しくなっていたことも、上海株への関心が薄れていた理由でした。ただし、それだけではありません。1-3月の景気指標を見ると、中国景気に持ち直しの兆しが出ていたことから、中国景気が急激に悪化する不安が薄れたことも、上海株を気にする人が減った理由でした。

IMFは4月の世界経済見通しで、2016年の中国GDPの成長率見通しを6.3%から6.5%に引き上げました。2017年についても6.0%成長から6.2%成長見通しに引き上げました。1-3月の中国景気に持ち直しの兆しが出ていたことが反映されたと考えられます。

中国景気は、昨年10-12月に悪化しました。1月の頭から上海株が急落したのは、10-12月の悪化が嫌気されたからです。日本の中国関連株の10-12月期決算発表でも、中国の製造業の悪化が顕著であることが、現地の声として報告されました。1月以降、一段と中国景気が冷え込むことが予想されていました。

ところが、意外にも、1-3月の中国景気は持ち直していました。いったい何が中国景気にプラスに寄与したのでしょうか?1つの説は、中国政府が年明けから公共投資の発注を増やしているというものです。中国では、3月の全人代(共産党大会)で、李克強首相が、2兆元の大型公共投資を実施する方針を発表しました。全人代は経済政策発表の場ですが、その方針は昨年12月時点で決定していたと考えられます。10-12月の景気悪化を見て、1-3月から既に投資を増やしていた可能性もあります。そう考えると、2月後半から原油など資源価格が一斉に反発していることも説明がつきます。

なお、為替の動きも、中国景気の持ち直しに、いくらか貢献している可能性があります。中国は、人民元を対ドルで切り下げました。それに加え、最近、ドルが円などに対して大きく下がりました。その結果、人民元の実効為替レートはかなり切り下がりました。人民元安で中国の輸出競争力が回復している効果も出ているかもしれません。

(2)20日に上海株が一時4%強下げたのはなぜか?

中国人民銀行が今後のさらなる金融緩和(利下げ)に消極的との報道が出たことが、上海株急落の原因となりました。さらなる利下げに期待していた短期筋が、上海株を売ったと考えられます。

ただし、その後、上海株は下げ幅を縮小しました。中国人民銀行が、利下げに消極的になった背景が重要です。1-3月の中国景気が持ち直しているので、さらなる利下げがしにくくなっていると判断したならば、中国株にとって単純に悪材料とはなりません。

世界の天然資源を爆食してきた中国の景気が本当に持ち直しつつあるのならば、それは、資源価格にも強材料です。ドーハの産油国会議で、増産合意ができなかったのに、原油先物が堅調な背景には、中国景気持ち直し期待があるのかもしれません。

(3)中国景気の現状を慎重にみきわめる必要がある

中国景気が持ち直す話を、私は半信半疑で聞いています。中国経済は構造問題を抱えていて、中途半端に今、公共投資を増やすと、構造問題をさらに悪化させる懸念があります。

そうは言っても、中国は計画経済です。習近平国家主席の指示で、景気を回復させるために強引に公共投資の大幅積み増しを行えば、中国景気が持ち直してしまうこともあり得ます。

両方の可能性を考えながら、投資判断を行っていく必要があります。まずは、これから始まる2016年3月期の決算説明会が注目です。中国関連株の決算説明会で、1-3月の現地の状況がヒアリングできます。現地の声を聞きながら、中国景気の現状を慎重にみきわめていきたいと思います。

中国景気の変動は、今後の日本株に大きく影響します。中国景気の持ち直しが本物ならば、外国人投資家が日本株にも積極的に投資をしてくる可能性があります。現時点でまだ、そこには確信が持てません。新しい情報が入れば、都度、本欄で報告いたします。

なお、4月21日の日本時間午前6時30分現在、為替は1ドル109.82円と円安に動いています。それを好感して、CME日経平均先物は、17,235円に上昇しています。