13日の日経平均は、前日比452円高の16,381円でした。12日の海外市場で、WTI原油先物(期近)が1バレル1.81ドル高の42.17ドルと大きく上昇したことを好感し、欧米株式が上昇した流れが続きました。また、為替が1ドル108円台後半へと円安に動いたことも、追い風となりました。

14日の日本時間午前6時現在、為替は1ドル109.35円、WTI原油先物(期近)は、1バレル41.57ドル(前日比0.60ドル安)、CME日経平均先物(6月限)は、16,600円まで上昇しています。

今後の日経平均の動きを予想する上で重要なのは、外国人の売買動向です。4月1日まで13週連続で日本株を売り越してきた外国人の売りは止まったのか?今後、外国人の買い越しが続くのか?外国人の売買で日経平均の短期的な動きは決まるので、その読みが大切です。今日は、その考え方について書きます。

(1)13日の日経平均452円高は、外国人や公的年金の買いが牽引した可能性も

1-3月の下げ局面で日本株を買っていた個人投資家は、13日は買いの中心ではなかったと思われます。この日は、外国人や国内機関投資家好みの主力大型株が上昇を牽引していたからです。東証一部で見ると大型株指数が2.8%、中型株指数が2.3%、小型株指数が1.7%上昇しています。ただし、個人投資家の買いで動く東証マザーズ指数は、13日も2.6%上昇しています。

日経平均の上昇率が高い日は、多くの場合、外国人が買っています。外国人は買う時は上値を追って買うからです。13日の452円高は、外国人の買いも貢献したと考えられます。

公的年金も買った可能性があります。1-3月に日本株を買ってきたGPIF(公的年金)は、株の組み入れが3月末で一旦終わり、今はあまり買っていないと推定されます。ただし、GPIF以外の公的年金には買い余力があるので、4月に入って株を増やす動きに出た可能性はあります。

一方、日銀の日本株ETF買いは大きな貢献はしていません。日銀のETF買い入れ額は、毎日、公表されていますが、13日は新型ETFを12億円買っているだけです。

日銀による日本株ETFの買付額:4月1日-13日

(単位:億円)

約定日 従来のETF 新型ETF【注】
4月1日 336  
4月2日    
4月3日    
4月4日   12
4月5日 333 12
4月6日   12
4月7日 333 12
4月8日   12
4月9日    
4月10日    
4月11日 333 12
4月12日   12
4月13日   12

(出所:日本銀行)

【注】設備投資および人材投資に積極的に取り組んでいる企業を支援するためのETF

外資系証券の寄付前注文動向を見ると、13日は、620万株の買い越しでした。昨日のレポートに書いたとおり、このデータは精度が低いものの、それでもこのデータで見て、4月に入って買い越しの日が多いことは、注目に値します。ひょっとして、4月に入り、外国人が買いに転じている可能性もあります。

外資系証券の寄付前売買注文:4月4日-13日

(単位:万株)

  売り注文 買い注文 差額
4月4日 1,180 850 ▲ 330
4月5日 1,610 1,620 +10
4月6日 1,150 1,400 +250
4月7日 880 1,350 +470
4月8日 860 870 +10
4月11日 1,170 1,430 +260
4月12日 880 870 ▲ 10
4月13日 2,020 2,640 +620

(注:楽天証券経済研究所が作成)

本日の午後3時に、東証より、4月4―8日の週の「2市場1.2部主体別売買動向」が発表されます(東証のHPで確認できます)。そこで、海外投資家が14週連続の売り越しになっているのか、あるいは、14週ぶりに買い越しに転じているのか、注目されます(明日のレポートで報告します)。

外国人の売買動向が変わったのならば、短期的な投資判断を「強気」に変える必要があります。現時点でまだ、それが確認できているわけではありません。

(2)外国人の買いは一時的か?継続するか?

公的年金は上値を追って買ってくることはありません。ここから、さらに日経平均が上昇していくためには、外国人の買いが続く必要があります。13日は、日経平均の先物にも、外国人の買いが入っていたと思われます。業績悪化で売られていたファーストリテイリング(9983)が6.6%も上昇していたからです。外国人の先物買いによって誘発された、裁定買いが入ったと考えられます。ファーストリテイリングは、日経平均の構成比が最大の銘柄で、裁定売買の影響で、大きく動く銘柄です。

13日の日経平均は2.8%の上昇で、TOPIX(東証株価指数)の上昇率2.6%を少し上回っています。やはり、外国人の買いが日経平均先物に入っていたと考えられます。

冷めた見方をすれば、WTI原油先物の上昇と、円安を見て、足の速い海外ヘッジファンドが買ってきただけとも解釈できます。原油先物が反落し、為替が円高になれば、ヘッジファンドは、すぐに売りに転じます。その可能性も現時点では否定できません。

(3)中国経済好転(?)と見て、外国人が日本株を買った可能性も

ここに1つ、勇気付けられるデータがあります。中国経済が足元やや改善しているかもしれないと、思わせるデータです。1つは、IMF(国際通貨基金)が4月12日に発表した世界経済の成長率見通しです。世界の成長率見通しを2016年3.4%→3.2%、2017年3.6%→3.5%に引き下げていますが、中国の成長率は2016年6.3%→6.5%、2017年6.0%→6.2%と逆に引き上げています。IMFが、中国経済が好転する話しを何か、つかんでいる可能性もあります。中国で2兆元の大型公共投資を出すという話もあり、また、中国の3月の輸出が前年比11.5%増と好調であったこともあり、中国経済の構造問題は解決していないものの、短期的に景況が上向いている可能性はあります。

外国人投資家は、日本が中国経済の影響を大きく受けると考えており、中国で悪い指標が出ると日本株を売り、中国で良い指標が出ると日本株を買う傾向もあります。中国経済好転のわずかな兆しに反応して、外国人が日本株を買ったとも考えられます。

(4)推定ばかりの中、手探りで真実を探るのが投資です

今日お届けしている外国人や公的年金の売買の話しは、すべて推定です。推定ばかりで誤っている可能性はあります。ただ、投資とは、いつでも推定の中から手探りで真実を探って行くものです。私が実際にファンドマネージャーをやっていた時、いろいろな情報を見てマーケットを見て、常に外国人が何を考えているか、何をやってくるかを考えていました。

コバンザメのように外国人に付いて行くことを、情けないと考える方もいらっしゃるかもしれませんが、ファンドマネージャーをやっていた時は、そんなことは言っていられません。大きな間違いをせずに、手堅く小さな勝ちを積み上げていくためには、外国人についていくのが、一番確かな方法です。

外国人の買い越しが始まっていることがわかれば、投資資金に余裕のある方は、少し日本株を買うことを考えてもいいかもしれません。私がファンドマネージャーならば、この局面で少し買い増しをします。高値圏にある東証マザーズ株ではなく、安値圏に沈んでいる東証一部の主力大型株を買い増します。

ただし、投資資金にゆとりの無い方は、今しばらく、様子見したほうがいいと思います。外国人の買いが一時的で、今後また、売ってくる可能性も残っているからです。まず、今日の午後3時に発表される、主体別売買動向で、4月4-8日の外国人売買を確認する必要があります。次に、今日からワシントンで開催されるG20で、為替操作についてどういう議論が行われるか、それを受けて為替がどう動くか見る必要があります。さらに、重要なのは、17日に予定されているOPEC・非OPECの主要産油国会議で、増産凍結の合意ができるか確認することです。増産凍結合意を先に織り込んで、原油先物が上がり、それを好感して欧米株が上がっていますが、増産凍結で合意できなければ、原油先物が再び急落する可能性もあります。円高が進み、原油先物が急落すれば、また、外国人が日本株を売ってくるでしょう。

中国経済が本当に好転しているのか、肌感覚では怪しいと思っています。中国経済の現場ニュースをもう少し、たくさん取りたいと思います。これから3月決算の発表が始まります。いわゆる中国関連株の説明会で、あしもとの一番新しい中国経済の現状について、ヒアリングしたいと思います。あまり前のめりでリスクを取りたくない方は、少なくとも日経平均の13週移動平均線が上向きになるのを待ってから投資した方がいいと思います。

今日のレポートは、昨日のレポートをお読みいただいた上で読むと理解が深まると思います。もし、昨日のレポートをお読みでなければ、このレポートの下方にある「前のレポートへ」をクリックしてお読みいただけると幸甚です。