11日の日経平均は、前日比70円安の15,751円でした。為替を見ながら、神経質な値動きが続いています。午前中は円高が進むのを見て、日経平均の下げ幅が拡大しました。為替は一時1ドル107.60円をつけ、日経平均は一時296円安の15,525円まで下げました。午後は、やや円安に戻り、日経平均は下げ幅を70円安まで縮小しました。

12日の日本時間午前7時現在、為替は1ドル107.96円となっています。11日のCME日経平均先物(6月限)は、15,710円でした。

(1)株式相場は、長期はファンダメンタルズ(企業業績)、短期は需給で動く

日経平均の動く方向を予測する場合、大きく分けて、2つの方法があります。1つは、ファンダメンタルズ(企業業績)を予想し、ファンダメンタルズが改善する場合は上昇、悪化する場合は売りと判断する方法です。

もう1つ、別のやり方があります。需給を見て、毎日の動く方向を考えるものです。テクニカル分析とも言われます。「相場の流れに素直についていく」、「相場は相場に聞く」やり方と言えます。私がファンドマネージャーをやっていた時、ファンダメンタルズ分析とテクニカル分析は、毎日の投資判断に重要な両輪でした。今日は、私が実際にやっていた「きわめて単純な」テクニカル分析について、説明します。

(2)日経平均の13週移動平均線と26週移動平均線を見る

まず、日経平均の週次チャートに、13週移動平均線と26週移動平均線のついているものを見てください。13・26週移動平均線から、以下の通り、きわめてシンプルに強気・弱気を判断します。

日経平均推移:2015年1月5日―2016年4月11日

(出所:楽天証券経済研究所)

まず、見方を説明します。とても簡単です。13週移動平均線と26週移動平均線が、両方とも上昇基調にある時は、「強気」と判断します。両方とも下降基調にある時は、「弱気」と判断します。一方が上昇基調なのに、他方が下降基調の時は、「中立(判断不能)」と考えます。

13・26週移動平均線がともに上向いている時は、投資家は買いの回転が効いていますので、押し目では積極的に買っていきたい意欲を持っている状態と言えます。13週線・26週線ともに下向きの時は、多くの投資家が含み損を抱えていて、戻りがあれば売りたいと考えている状態です。

今は、まだ両移動平均線ともに下向きなので、この分析では弱気局面が継続していることになります。

なお、同じ方法で判断すると、東証マザーズ指数は現在「強気」、ジャスダックは「弱気」となります。今、短期トレーディングを行うには、為替や海外経済の影響を受けない、東証マザーズの小型成長株の方がいいという判断になります。

ただし、東証マザーズ指数は、テクニカル分析で「強気」に変わってから既に20%余り上昇しており、やや過熱感もあります。マザーズは上げるときも下げるときも、派手な値動きになりますので、ここからの投資は、短期売買に徹した方がいいと思います。

日経平均よりも、ジャスダックの方が先に底打ちするかもしれません。ジャスダックの小型成長株を選別し、ジャスダック市場のテクニカル判断が「中立」「強気」に変わっていく過程で、投資していく考えは有効かもしれません。

(3)日経平均の13・26週移動平均線が上向きになるためには、何が必要か

日経平均が急落して日が浅いので、簡単には13・26週移動平均線は上向きになりません。まず、ある程度、時間が経過することが必要です。日経平均が下げ止まってから時間が経過すると、移動平均線は徐々に下向きから横ばいに変わってきます。そこから、日経平均が徐々に底打ちすると、移動平均線は上向きに変わります。

これは、あくまでも一例ですが、ここから日経平均がさらに下がり、その後底打ち上昇に転じて、7月くらいに17,000円をつけていれば、その時、13週移動平均線と、26週移動平均線は上向きに変わります。

その頃には、今、不透明ないろいろなことが、明らかになっているかもしれません。為替のおちつきどころや、2017年3月期の業績見通し(会社予想)、来年の消費増税を延期するかしないか、米大統領選でトランプ候補がさらに勢いづいているか失速しているかなど、いろいろなことに、一定の方向性が見えてきたとき、13・26週移動平均線が上向きになっていれば、「強気」判断に転じることができます。

(4)テクニカル分析の欠点

13・26週移動平均線を使った「強気」「弱気」分析が、いつも良く当たるとは限りません。今回、例で示した期間が非常によく当たっているので、いつでも当たると誤解しないように、お願いします。日経平均が狭いレンジで長期にわたり往来相場を繰り返すときは、この方法を使うと、投資判断が裏目裏目に出ます。

ただし、今回のように、日経平均が上昇下落ともに大きなトレンドが出る時には、非常に有用なテクニカル分析手法となります。

(5)テクニカル分析を補足する手段

「相場は相場に聞く」もう1つの方法があります。外国人の売買動向を見て、それについていくことです。週次の売買データを見て、外国人の売り越しが続いている間は「弱気」と判断します。買い越しが続いている間は「強気」と判断します。外国人の売買動向で、1週間ごとに「買い越し」「売り越し」が変わる時は、「中立(判断不能)」と考えます。

先ほどの、シンプルな13週・26週移動平均線の分析に、外国人の売買トレンドから来る判断を加えると、短期的な投資判断が当たる可能性がより高くなります。

いかなる手法をとっても、必ず当たるという予測は、ありません。ファンダメンタル・テクニカル分析を駆使して、いろいろな形で、皆様に投資情報を提供していきたいと思います。日本株は、配当利回り・PER・PBRなどの株価指標で見て割安と判断される水準にあると考えています。13週・26週移動平均線の分析だけでなく、景気・企業業績の見通し、外国人投資家の動向を含めて、強気に転じるタイミングをはかっていきたいと考えています。