5日の日経平均は、前日比17円安の15,715円でした。前日のNY市場で、一時1ドル109.94円まで円高が進んだことが嫌気され、小幅続落となりました。ただし、5日の東京市場ではドル円が、1ドル110円台前半に戻っていたので、日経平均をさらに大きく売り込む動きにはなりませんでした。
昨日は、4月に見込まれるニュースフローが、日本株にネガティブであることをお話ししました。今日は、5月以降に期待される材料について書きます。昨日のレポートをお読みいただいていない方は、昨日のレポートからお読みいただけると幸甚です。
(1)売り越しが続く外国人が、いつ買い越しに転じるかが鍵
日本株の動く方向を決めているのは、外国人投資家です。外国人は、売る時は下値を叩いて売り、買う時は上値を追って買ってきます。日本人がいろいろ考えても、結局は外国人の売買で日本株が動く事実は変わりません。
今後の相場見通しを、需給面で言えば、話しは単純です。外国人の売り越しが続く限り、日本株の低迷が続き、外国人が買い越しに転じるときが、相場が反転に転じるタイミングとなります。外国人の売買動向をじっと見ている必要があります。
4月は、外国人が日本株を積極的に買ってくる材料は出にくいと考えています。それを、昨日のレポートに書きました。ただし、5月には、外国人の売買動向が変わる可能性もあると考えています。一番重要なのは、為替です。
(2)4月に入って円高トライが続いているが、5月には円安に戻る可能性も想定
今のドル円為替を動かしている最大の材料は、米FRBの利上げ判断です。イエレン米FRB議長が利上げに慎重なトーンで発言したため、4月26・27日のFOMC(米金融政策決定会合)での利上げはないと考えられ、それが円高トライにつながりました。
ただし、米景気が堅調に推移し、米コアCPI(消費者物価指数)が2月に前年比2.3%上昇していることを考えると、6月14・15日のFOMCで利上げを見込む声が強まる可能性はあります。6月の利上げが意識される環境になれば、5月に為替は円安に反転する可能性があります。円安が進めば、外国人が再び日本株を買い越してくるでしょう。
私は、今年、米FRBが1回利上げを行うことを前提に、今年のドル円は、1ドル108-115円のレンジで推移すると予想しています。4月円高トライの後、5月に円安に反転するイメージです。外国人は、円高で日本株を売り、円安で日本株を買う傾向が強いので、円安反転が、外国人の買いにつながると考えています。
ただし、5月になっても、米利上げの見通しが広がらないと、さらなる円高が進むリスクもあり、注意が必要です。
(3)資源安ショックが一巡し、原料安メリットが出る
2016年1-3月の日本の企業業績は不振であったと考えられます。資源安ショックが日本企業の業績に大きなマイナス要因となりました。①資源権益の減損、②急落前の高値で購入した原料在庫の在庫評価損、③資源国ビジネス悪化が、1-3月の業績を押し下げています。
2016年3月期の連結純利益(会社計画)を1月以降に大きく引き下げた5社
(金額単位:億円)
コード | 銘柄名 | 12月末時点 | 4月6日時点 | 下方修正額 | |
---|---|---|---|---|---|
1 | 8058 | 三菱商事 | 3,000 | ▲ 1,500 | ▲ 4,500 |
2 | 5020 | JX HLDG | 450 | ▲ 3,300 | ▲ 3,750 |
3 | 8031 | 三井物産 | 1,900 | ▲ 700 | ▲ 2,600 |
4 | 6502 | 東芝 | ▲ 5,500 | ▲ 7,100 | ▲ 1,600 |
5 | 8053 | 住友商事 | 2,300 | 1,000 | ▲ 1,300 |
上記の表でわかる通り、純利益見通しの下方修正額が大きい5社では、東芝を除く4社が、資源安が原因の下方修正となっています。
4月以降は、減損、高値在庫の在庫評価損が一巡すると考えられます。日本の企業業績に、ようやく資源安がプラス効果を及ぼすと考えられます。資源安ショックによる業績押し下げが、原料安メリットによる業績押し上げに変わってきます。日本の企業業績が、1-3月が目先の底となり、4-6月から回復に向かうという見通しを持てるようになるか否かが、鍵になります。
(4)景気対策の議論が強まる
日本では、来年の消費増税を控える中で、景気が腰折れするリスクが出てきたことから、政府が景気対策を強化する議論を始める見込みです。また、現時点で予想に織り込むことはできませんが、2017年4月に予定される消費増税(8%→10%)を、さらに延期する議論が広がる可能性もあります。
消費税については、以下の2つのシナリオで考えています。
- 予定通りに消費増税を行う代わりに大型の景気対策を発動する
- 消費増税の時期を2年程度延期する
(5)米大統領選の動向
その時になってみないとわかりませんが、私は、過激発言を繰り返す共和党の大統領候補者ドナルド・トランプ氏の人気が、今後徐々に下火になると想定しています。予備選挙の序盤に、過激発言で圧倒的な人気を誇ったトランプ氏ですが、本選が近づくと、米国の選挙民が徐々に現実路線に引き戻され、人気がピークアウトすると見ています。共和党の主流派が結束してトランプ降ろしに動いていることも、影響するでしょう。トランプ氏が共和党の大統領候補になると、本選で民主党のクリントン氏に勝てないという、危機感があります。
米国の選挙民も、トランプ発言にやや食傷気味になっている可能性もあります。「日本と韓国から米軍を撤退させ、両国に核兵器保有を認める」可能性に言及するなど、過激発言はさらにエスカレートしています。「メキシコとの国境に延々と壁を築き、そのコストをメキシコに負担させる」など、現実に立ち返ると、実行できない話ばかりということに米国民が気付き始めると考えられます。
日本・中国・メキシコを敵視する発言の目立つトランプ氏の影響力が少しでも低下すれば、日本の先行きへの不安もやや低下します。
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