4月4日の日経平均は、前日比40円安の16,123円でした。さらに下を売りたたく外国人投資家の動きは、今のところ出ていません。日経平均リンク債にかかわる先物売りもこの水準でヒットする分は出尽くしています。産油国から日本株に大きな売りが出て気配も今のところはありません。昨日のレポートで書きましたとおり、目先の下値メドが16,000円という考えを維持します。

ただし、円高リスクには、引き続き警戒が必要です。米国FRB(中央銀行)が今年まったく利上げができない環境になると、1ドル105~110円台まで円高が進み、円高に対応して外国人の売りが増えるリスクは残っています。

最近、為替についての質問を多数いただいていますので、今日はそれに回答いたします。

(1)円が「安全資産」として買われるのはなぜか?日本の経済実態がよくないのに納得できない。

引き続き、掲題のご質問を多数いただきます。改めて、回答いたします。

【窪田から回答】
世界経済に不安が増えると、決まって円が安全資産として買われます。日本の政府債務が1000兆円を超えた状況下で、なぜ円が安全なのか不思議に感じる方が多いのは当然と思います。

国の信用をはかる時、政府の借金だけ見ていても意味はありません。政府部門と民間部門の資産・負債を合算して、日本国が海外からいくら金を借りているか、あるいは貸しているか見る必要があります。それが、対外純資産残高に表れています。日本は、世界最大の対外純資産保有国です。

対外純資産額の上位3カ国:2014年12月末時点

1位 日本 366兆円
2位 中国 214兆円
3位 ドイツ 154兆円
4位 スイス 99兆円
5位 香港 99兆円

(出所:財務省)

対外純資産が大きい国は、信用力が高いので、長期国債の利回りは低くなります。一方、対外負債の大きい国は、信用力が低いので、長期国債の利回りは高くなります。

世界各国の長期金利(10年国債利回り):4月1日時点

世界経済が好調の「リスク・オン」局面では、世界の投資家は、利回りの低い日本の国債を持っていても面白くないので、日本の国債を売って、利回りの高いブラジルなどの国債を買います。円が売られて、金利の高い通貨が買われることになります。

ところが、世界経済に不安が増えて「リスク・オフ」局面になると、投資家は信用力の低いブラジルなど低信用国の国債を保有することに不安を感じます。「リスク・オフ」局面では、世界中の投資家が、高金利通貨を売って、安全資産である「円」に逃げ込んでくるわけです。こうなると、ブラジル・レアルなど高金利通貨は急落しますので、ブラジル国債を保有していると高い利回りがあっても、損失が発生します。利回りが低くても安全な日本の国債の方が魅力的に見えるわけです。

(2)資源価格下落で、日本の貿易収支が改善すると思うが、為替にどう影響するか?

【窪田から回答】
ドル円為替レートを動かすマネーには、以下の3種類があります。

  • 短期投資マネーの動き

    日米短期金利差・日米金融政策の方向性の差・中央銀行による為替介入その他各種材料に反応して動きます。

  • 長期投資マネー(証券投資・M&A・直接投資)の動き

    日米長期金利差(債券投資に影響)・日米企業業績のモメンタム差(株式投資に影響)、M&A(日本企業の海外企業買収、海外企業の日本企業買収)、海外直接投資(日本企業が海外で工場を建設)などに対応して動きます。

  • 貿易・サービス収支によるお金の流れ、他

    為替レート変動を決めるのに一番影響が大きいのは、①短期マネーの動きです。ついで、②長期投資マネーの動きも大きく影響します。③貿易・サービス収支が為替を動かすことはほとんどありません。貿易による資金移動よりも、短・長期の投資マネーの動きの方が、規模もスピードもはるかに大きいからです。したがって、現在の為替を動かしている最大の要因は、米利上げ観測と考えて、間違いないと思います。早期利上げがあると見られれば円安に進み、利上げが見込めないなら、円高が進む傾向が強いといえます。

    ただし、稀に、貿易収支が話題になって、為替が動くことがあります。短期マネーが貿易収支自体を材料にすれば、そうなります。日本の経常収支(黒字)や、為替政策(円安誘導)に対し、欧米で批判が高まると、それに呼応して、円高を試す動きが出ることがあります。

    今、米大統領選で、共和党の候補に近づいているドナルド・トランプ氏が、日本の為替や貿易政策を批判していることに、注意が必要です。トランプ氏の人気が予想以上に高いことを映して、民主党の候補に近づいているクリントン氏も、日本の為替政策を批判し始めています。大統領選挙が終わり、民主党のクリントン氏が新大統領に選出されれば、日本批判は下火になるかもしれませんが、当面は貿易収支にからめた米要人発言に注意が必要です。