3月1日の日経平均は前日比58円高の16,085円でした。為替をにらみながらの動きが続いています。午前中1ドル112.13円まで円高が進んだので、日経平均は169円安の15,857円まで下がりましたが、午後は1ドル112.70円と円安に戻ったので、日経平均は小幅上昇に転じました。
その後、米国で発表された2月のISM製造業景況感指数が市場予想より強かったことを受け、ニューヨーク市場で円安が進みました。3月2日の日本時間午前6時時点では、1ドル113.90円まで円安が進み、CME日経平均先物は16,530円に上昇しています。
(1)2月のISM製造業景況感指数は市場予想を上回る
3月1日に発表された2月のISM製造業景況感指数は、49.5と前月(48.2)より改善し、市場予想の48.5も上回りました。景況判断の分かれ目である50を割り込んだままですが、製造業に改善の兆しがあるとみなされました。
同時に発表された1月の米建設支出は、前月比+1.5%と、予想以上に高い伸びで、これを受けて、米利上げ観測が復活し、ドル高(円安)が進みました。
米ISM製造業景況感指数の推移:2014年1月~2016年2月
(2)内需株に注目が集まる展開
3月1日の東京市場では、全般上値の重い展開が続く中、「仮想通貨」関連やバイオ関連の小型株に値を飛ばすものもありました。海外経済への不安が続いていることから、海外経済の影響を受けにくい小型材料株に注目が集まっている状況です。
日経平均の乱高下はまだ続く可能性がありますが、中長期投資の視点で、割安になった好業績株から買っていってよいと考えています。まず、建設・土木・情報通信・医薬品・食品・小売り・サービス・不動産・倉庫・陸運などの内需株で、業績が好調なものから選別したいと考えています。
今日は、その中から、まず建設・土木株の注目点について書きます。
(3)建設・土木株を見直し
今期(2016年3月期)は、第3四半期(10-12月)決算の発表時点で、通期業績見通しを下方修正する企業が続出しました。円高進行・中国経済の不振・資源価格急落・米アップル社のiPhone生産調整を受け、電機・機械・造船・海運・鉄鋼・非鉄・商社などの景気敏感株に業績の下方修正が目立ちました。
全般不振の中で、今期、複数回にわたり利益予想の上方修正を繰り返しているセクターがあります。建設・土木セクターです。
建設・土木業主要10社の今期(2016年3月期)経常利益(会社予想):昨年5月時点の期初予想と現在の予想比較
【経常利益予想の単位:億円】
コード | 銘柄名 | 株価:円 | PER:倍 | 今期経常益 (期初予想) |
今期経常益 (現予想) |
増益率 (前年比) |
---|---|---|---|---|---|---|
1719 | 安藤・間 | 518 | 8 | 172 | 190 | 5% |
1720 | 東急建設 | 821 | 9 | 86 | 154 | 92% |
1801 | 大成建設 | 694 | 14 | 620 | 830 | 12% |
1802 | 大林組 | 1054 | 15 | 560 | 850 | 42% |
1803 | 清水建設 | 875 | 13 | 640 | 840 | 49% |
1812 | 鹿島建設 | 663 | 17 | 430 | 620 | 190% |
1820 | 西松建設 | 440 | 10 | 105 | 157 | 58% |
1824 | 前田建設工業 | 792 | 9 | 130 | 200 | 31% |
1833 | 奥村組 | 583 | 15 | 52 | 84 | 50% |
1861 | 熊谷組 | 264 | 8 | 115 | 208 | 33% |
建設土木業は、前期(2015年3月期)に高い増益率を達成しましたが、今期は、人件費や資材費の高騰などで利益が伸び悩む可能性があるとして、期初、会社は保守的な業績予想をたてていました。ところが、中間決算が出るころには利益が上ぶれし、前期並みの高い増益率が達成できる見込みとなってきました。
建築・土木事業の粗利(完成工事総利益率)が予想以上に改善したことが、業績予想を上方修正する主因となっています。人件費の高騰は続いていますが、資材費は低下しました。また、選別受注ができるようになった効果で、建築単価の上昇も続いています。
(4)2020年まで建設・土木業の仕事量は豊富
東北復興・リニア新幹線工事・東京再開発・オリンピック準備・国土強靭化など、建設・土木関連の仕事は2020年まで山積みです。建設・土木株の収益拡大が2020年頃まで続くことが期待されています。
ただし、問題は、2020年以降、仕事量が頭打ちになると予想されることです。2020年までの収益環境は良好でも、そこから先、仕事量が減り、再び過当競争におちいる懸念がつきまといます。2020年より先と言えば、まだ4年以上先の話ですが、それでも、将来いつか利益が頭打ちになるとみなされれば、株価評価が高まらない場合もあります。
私は、2020年より先のことを議論するのは時期尚早と考えます。とりあえず、今来期、世界経済に不安がある中で、利益モメンタムが相対的に高く、PER(株価収益率)で見て割安な水準に低下した建設・土木株の、投資魅力は高まっていると考えています。
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