今週の日経平均は、上下とも大きくは動きにくいと考えます。日々の荒い値動きは続きそうですが、上昇すれば売りが増え、売り込まれれば買いが入る展開となりそうです。今週は、16,000円を中心とした値動きとなると予想されます。

(1) 不透明要因が多く、すぐに上値を追うのは難しそう

以下のように、株式相場にとって不透明要因が多く、積極的な買いは入りにくいと考えられます。

  • 米FRBは今年追加利上げを行うか?
  • 円高は一服するか?
  • 原油安は一服するか?
  • 日本の来期企業業績は減益とならないか?
  • 欧州銀行の信用不安は収束に向かうか?
  • ベネズエラなど資源国のデフォルトはないか?
  • 中国の景気は、さらに悪化するか?
  • 南シナ海の米中緊迫化がさらに高まることはないか?
  • 中東・ウクライナの地政学リスクがさらに高まらないか?

(2) 下値をこれ以上、売り込むのも難しくなってきています

以下のように、株価下落により、日本株の投資魅力が徐々に高まってきていることから、下値も売り込みにくい状況です。

  • 急速に減速しつつある日本の企業業績だが、それでも今期(2016年3月期)は最高益更新が見込まれ、日経平均のPER(株価収益率)は約14倍まで低下していること。
  • 日銀がマイナス金利を導入する中で、東証一部の配当利回りは約2.2%まで上昇しており、利回りの魅力が高まっていること。日本企業の財務内容が改善し、日本企業が増配や自社株買いに前向きになってきていることも評価できます。
  • 資源安は今期の日本の企業業績を悪化させる要因になるが、来期には企業業績にプラス寄与すると考えられること。
  • 裁定買い残高が1.98兆円まで減少しており、先物・オプションにからむ投機筋の買い建て玉の整理はかなり進んだと推定されること。

(3)米FRBは、今年、追加利上げを何回行うか?

米FRB(中央銀行)のアクションが読みにくくなっています。米FRBは、FF金利を昨年12月に0.25%引き上げて、ゼロ金利に終止符を打ちました。米FOMC(金融政策決定会合)メンバーの予測(中央値)によると、今年、FF金利はさらに1%引き上げられ、年末の誘導水準は1.25-1.5%となります。3月・6月・9月・12月に0.25%ずつ、4回引き上げられるイメージです。

ところが、市場予想では、今年2回か3回しか引き上げはないと見られています。最近の世界の金融市場の混乱を見て、米FRBは利上げをするのは困難との見方が広がっています。米国の景気にやや減速の兆しがあることも、利上げを難しくする要因です。少なくとも、3月の利上げはないというのがコンセンサスになりつつあります。ちなみに、私は、去年より一貫して、今年のFF金利の引き上げは、年末に1回のみと予想しています。

アメリカが追加利上げを実施すると、新興国通貨が売られ、新興国不安が高まる可能性があります。今年は、追加利上げをすることができないとの見通しが広がった方が、世界の金融市場は安定します。ただし、日本株にとっては痛しかゆしです。アメリカがまったく追加利上げをできない場合は、為替がさらに円高(ドル安)に動く可能性があり、それは日本の企業業績に悪影響を及ぼします。

(4)アメリカのコア・インフレ率が2.1%まで上昇

「3月に米利上げはない」がコンセンサスですが、19日にそうとも言い切れないデータが1つ出てきました。1月の米インフレ率です。米FRBが金融政策のターゲットとしている(エネルギーと食品を除く)コアCPIは、前年比2.2%上昇しました。FRBが考えるターゲット(2%の上昇)を達成しています。

さらに、(エネルギー・食品を含む)総合指数も前年比1.4%上昇しました。エネルギー価格指数は前年比で6.5%下がっていますが、前年比下落率は、徐々に縮小してきています。エネルギーを除く物価が上昇していることから、エネルギーを含むインフレ率も上昇しました。

アメリカの消費者物価指数(コア指数と総合指数)の前年比上昇率:2015年1月-2016年1月

(出所:米労働省)

ただし、CPIの上昇は一時的である可能性もあり、3月の利上げがむずかしいとの市場の見方は変わっていません。CPIの発表を受けて、ドル高(円安)が進むこともありませんでした。米景気指標、および、ドル円為替の動きから目が離せない状況が続きます。