3日の日経平均は、前日比559円安の17,191円でした。2日の海外市場で、①WTI原油先物が下落、②欧米株式も下落、③1ドル119円台へ円高が進んだことが嫌気されました。日銀によるマイナス金利導入がサプライズ(驚き)となって、一時世界的に株が上昇し、円安が進みましたが、サプライズ効果は短期間しか続きませんでした。

3日の海外市場ではWTI原油先物が反発しましたが、1ドル117円台に円高が進んだため、CME日経平均先物は17,000円に低下しています。

今日は、裁定買い残高の変化と、マイナス金利の影響について、ご報告します。

(1)裁定買い残高は2.2兆円に減少

東証が3日に発表した1月29日時点の裁定買い残高は2.2兆円で、前週比509億円増加しました。1月22日―29日は日経平均の反発局面にあたり、裁定買いが入っていたことから、裁定買い残高は4週ぶりの増加となりました。ただし、直近のピーク(12月末の3.3兆円)から比べると、大幅に減少しています。投機筋の日経平均先物の買い建て玉はかなり整理が進んだと考えられます。

日経平均と裁定買い残高の推移:2015年10月1日―2016年2月3日(裁定買い残高は1月29日まで

(注:東証データより楽天証券経済研究所が作成)

近年は、裁定買い残高が3.5~4兆円まで増加すると日経平均は天井をつけ、裁定買い残高が1.8~2.6兆円まで減少すると日経平均が底打ちする傾向があります。現在の裁定買い残高は、2.2兆円まで減少しており、裁定買い残高から判断すると、底入れの時期が近づいていると見ることができます。

ただし、裁定買い残高がどこまで減ったら相場が底を打つかは、その時々で異なります。ここからさらに裁定解消売りが出て、裁定買い残高がさらに大きく減少していく可能性もあります。裁定買い残高の変化は、株価指数先物を売買する投機筋の動向を知る、あくまでも参考材料として見る必要があります。

詳しい説明をご覧になりたい方は、1月15日のレポート

裁定買い残高の変化から考える日経平均の下値メド

をご参照ください。

(2)マイナス金利で得をするのは誰か

マイナス金利導入のサプライズで一時的に株が上昇しましたが、長続きしませんでした。冷静に考えると、マイナス金利を導入しても実体経済を改善する効果はほとんどないと、多くの人が感じているからだと思います。金利が下がっても、それを理由に新規に設備投資をする人はいないでしょう。インフレ期待がある中で金利が下がれば投資を刺激しますが、今のようにインフレ期待がない中で金利だけ下がっても投資意欲は盛り上がりません。日銀は、リフレ(インフレ率を高める)を狙ってマイナス金利を導入したと言うが、逆にデフレ・マインドを広める結果を招いていると思います。

マイナス金利導入で、誰が得をして誰が損をするか考えると、マイナス金利導入が、日本経済にとって良いことばかりでないことがわかります。

誰が得をするでしょう?巨額の借金を抱えている機関は、金利低下で恩恵を受けます。それは「国」です。巨額の借金を抱える日本国にとって、10年国債の利回りが0.06%まで低下したことは、将来の利払い負担の大いなる軽減につながります。

(3)マイナス金利導入は、年金基金の財政を悪化させる

それでは、誰が一番損をするでしょう?巨額の運用資金を抱え、将来の給付に備えて国債などによって運用を行っているところが損をします。年金基金がそうです。年金の負債額(現在価値)は、将来の給付額を長期金利で割り引いて求めます。したがって、長期金利が低下すると、年金の負債額が増加します。国が利払い負担の減少で「得」する分、年金基金は負債が増えて「損」することになります。財政状態が良くない基金では、掛け金の増加や給付の削減を検討しなければならなくなるリスクもあります。

国民から集めた巨額の資金を主に国債で運用してきたゆうちょ銀行(7182)やかんぽ生命保険(7181)も、ダメージを受けます。両社とも、これから運用手段や業務の多角化を進めて成長を目指しますが、体制を整えるのにある程度時間を要します。日銀のマイナス金利導入によって長期金利が急低下したことは、両社にとって誤算でしょう。利回り0.06%の10年国債を買っても、もはや経費をまかなうことはできません。運用や業務の多様化が急務となります。

私は、金融セクターでは、運用や業務の多角化で出遅れているゆうちょ銀行(7182)・かんぽ生命保険(7181)を保有するより、既に国内外で幅広い業務を展開している3メガ銀行(三井住友FG(8316)・三菱UFJ FG(8306)・みずほFG(8411))を保有する方が良いと考えます。