25日の日経平均は前日比152円高の17,110円でした。先週22日の941円高の勢いを引き継いで上昇して始まりましたが、戻り売りに押される局面もあり、気迷いが残る展開でした。「また産油国の大口売りが出ないか」警戒感が残っている印象です。

25日の米国市場ではWTI原油先物・NYダウが下がり、CME日経平均先物は16,840円まで下落しています。今日の日経平均は反落が見込まれます。

最近、米景気が悪化する不安が語られるようになりました。私は、米景気は堅調を維持すると考えています。その理由を、今日は書きます。

日経平均25日の値動き

(1)米国で製造業の景況が悪化

米景気は堅調ですが、好調なのは非製造業で、製造業の景況は悪化しつつあります。ドル高が続いたことから輸出産業が不振です。また、原油急落によって、石油関連産業も不振です。1月4日に発表された12月のISM製造業景況指数が、景況判断の分かれ目である50を2ヶ月連続で下回ったことから、製造業不振にスポットライトが当たりました。

米ISM製造業・非製造業景況指数の推移:2014年1月~2015年12月

(出所:米ISM供給管理公社より楽天証券経済研究所が作成)

(2)非製造業が強いので、米景気は堅調を維持

製造業景況がこれだけ弱いと、製造業が経済に占める比率の高い日本では景気後退寸前です。ところが、アメリカは異なります。アメリカでは50年以上前から少しずつ製造業の空洞化が進み、製造業が経済全体に及ぼす影響が日本ほど大きくありません。

上場株式の時価総額に占める産業別比率を見ると、米国はIT産業および金融業が大きく、製造業は相対的に小さくなっています。つまり、米国は既に、第3次産業(IT産業、サービス産業、金融業など)中心に成長する経済構造に転換していると言えます。製造業が悪くても、サービス業が好調ならば雇用改善が続き、米FRBが「利上げが適当」と判断するほど景気は良くなるわけです。

米雇用統計:2014年1月~2015年12月

(出所:米労働省)

米国在住アナリストによると、サービス産業や消費関連産業の景況は、かつて経験したことのない程、良い状態になっているそうです。私は、米国内で安価なシェール・ガス・オイルが大量に生産できるようになった「シェール革命」の効果が持続していると判断しています。

(3)マークイット米製造業景況指数は、ISM指数ほどの悪化は示していない

英調査会社マークイットが算出している世界各国の製造業景況指数は信頼性が高く、世界中の投資家によく見られています。マークイット社が算出するアメリカの製造業景況指数も、ISM指数と同様に、足元低下しつつあります。ただし、まだ景況判断の分かれ目である50を割り込んでいないので、ISM指数ほど景況が深刻とは見えません。

マークイット米製造業景況指数の推移:2014年1月~2016年1月(速報値)

(出所:ブルームバーグより楽天証券経済研究所が作成)

景況指数は、集計対象の違いによって、異なる値になるのは当然です。一般的に、集計対象となる企業の規模が大きいほど、景況指数は高く出る傾向があります。

なお、マークイット社から1月22日に米景況指数(速報値)が発表されています。速報値では、1月は若干の改善を示しています。

(4)米住宅価格が上昇トレンドを保っていることも、米景気を下支え

アメリカの消費に影響の大きい4つの指標は、以下の通りです。

  • 米住宅価格:住宅価格が上昇傾向にあると、消費に好影響を与えます。
  • 米金利:金利低下は消費にプラス影響を与えます。
  • ガソリン価格:ガソリン価格低下は消費者の可処分所得を増やし、消費にプラスです。
  • 米国株:米国は個人の株式保有比率が高く、株高の資産効果が消費に表れます。

上記4要素を見ると、米国株が下がっていることを除くと、3要素が米国消費を押し上げる方向に働いています。金利とガソリン価格の歴史的低下は、米国消費好調に寄与しています。住宅価格は、以下のグラフでわかる通り、足元上昇率が鈍ってきていることは気になりますが、まだ上昇トレンドを維持しています。

ケースシラー米20都市住宅価格指数:2000年1月~2015年10月

(出所:ブルームバーグ)

リーマンショック時には、米住宅価格の急落が、世界不況を引き起こしました。今、米住宅価格は堅調を維持しています。

<参考:日本の大企業景況指数>

日本は、大企業製造業・非製造業DIともに、景況判断の分かれ目であるゼロを上回っており、好調です。非製造業が製造業よりも良いのは、米国と同じです。

大企業製造業・非製造業DIの推移:2012年3月―2015年12月

(出所:日本銀行)

(5)今年の世界経済も「日米欧先進国が良く、新興国が不振」の構造変わらずと判断

昨年に続き、中国と資源国が不振で、新興国全般に減速感が強まると見ています。一方、資源安の恩恵を受ける日米欧先進国では、ゆるやかな景気回復が続くと見ています。ご参考まで、IMFの世界経済見通しを以下に掲載します。

IMF世界経済見通し:2016年1月19日時点

  2015年 2016年
米 国 2.5% 2.6%
日 本 0.6% 1.0%
ユーロ圏 1.5% 1.7%
インド 7.3% 7.5%
中 国 6.9% 6.3%
ASEAN6 4.8% 5.1%
ブラジル -3.8% -3.5%
ロシア -3.7% -1.0%

(出所:IMF、ASEAN6は、タイ・マレーシア・インドネシア・ブルネイ・シンガポール・フィリピンの6カ国)

なお、楽天証券経済研究所では、中国のGDP成長率(政府公表ベースでなく実態ベース)は、2015年は3.0%、2016年は2.4%に減速すると見ています。