28日の日経平均終値は18,873円でした。年末の日経平均予想を22,000円としていました(11月18日に20,000~21,000円に引き下げ)が、大納会(年内最終売買日:12月30日)で達成できる見込みはありません。今日は、予想が達成されなかった要因を分析します。

(1)日経平均予想値の出し方

日経平均を予想する場合、私はまず、企業業績(2016年3月期の東証1部連結純利益)を予想します。次に、妥当PER(注)はいくらか考えます。そして、(予想利益)×(妥当PER)によって、日経平均(または東証株価指数)の予想値を求めています。

【注】PER: 「ピーイーアール」または「パー」と読みます。「株価÷1株当たり利益」で計算します。株価が利益の何倍まで買われているか示します。株価の割安度をはかる指標でもあります。PERが低いほど株価は割安と判断されます。

(2)日経平均予想22,000円の前提:どこが間違っていたか

日経平均予想を22,000円としていた時、私は、今期(2016年3月期)の1株当たり利益(日経平均換算)を1300円と予想していました。妥当PERは17倍と考えていました。1300円×17倍=22,100円から、年末の日経平均予想を22,000円としていました。

ところで日本経済新聞社によると、12月25日の日経平均18,769円において、今期予想PERは15.3倍です。日経平均に換算した1株当たり利益は1,227円と計算していることになります。日経平均22,000円を予想していた時の私の前提と、1株当たり利益もPERも異なります。

  • 利益予想の相違

日経平均ベースの1株当たり予想利益を、私は1300円としていましたが、日本経済新聞社の予想では1227円と、約6%低い予想となっています。

  • PERの相違

私は妥当PERを17倍としていましたが、現在、PER15.3倍でしか評価されていません。

(3)最大の誤算は、原油など資源価格が2年連続で急落したことです

まず、企業業績の予想が、下ブレしそうになっている要因について、ご説明します。東芝(6502)の赤字転落などさまざまな要因が絡んでいますが、もっとも大きなマイナス影響を及ぼしたのは、2年連続の資源価格急落です。昨年度(2015年3月期)に続き、今年度(20016年3月期)も、資源安ショックが日本企業の業績にマイナス効果を及ぼすことになりそうです。

WTI原油先物価格(期近)の動き:2014年4月1日―2015年12月24日

(出所:シェールオイル生産コストは楽天証券経済研究所の推定)

私は年初、以下の3つが、今年度の企業業績を牽引するという前提を置いていました。

  • 円安効果
  • 米景気好調の恩恵
  • 原油急落効果

①と②はほぼ想定通りでした。想定と大きく異なる結果となったのは③です。原油急落は、短期的に日本企業の業績にマイナス効果を及ぼしますが、長期的にプラス効果を及ぼします。

私は、2014年度(2015年3月期)は、原油および天然資源が急落したマイナス効果が先行するものの、2015年度(2016年3月期)は、資源安メリットが日本企業の業績を押し上げると考えていました。ただし、そうなるためには、原油および天然資源価格が2015年は下げ止まる必要がありました。2015年5月ころには原油価格が順調に反発しており、そのまま原油価格が堅調に推移していれば、2014年に原油が下がった効果が、今期の企業業績を押し上げるはずでした。

ところが、実際には年末にかけて原油および資源価格は再び急落し、結果的に資源価格は2年連続の大幅安となってしまいました。このため、2015年度(2016年3月期)も、資源安メリットは日本企業の業績にあらわれず、マイナス効果が先行することになりそうです。

資源価格が急落した直後に日本企業の業績にマイナス効果が及ぶ理由

日本の石油産業には、70日間の原油備蓄義務が課せられています。膨大な在庫を保有していますので、原油価格の急落直後は、在庫評価損が企業業績を悪化させます。高値在庫がなくなり、原料安メリットが得られるようになるために、半年~1年くらいのタイムラグが必要です。

今年は、原油だけでなく、鉄鋼石・石炭・天然ガス・銅など、資源価格が2年連続で急落しました。このため2015年度(2016年3月期)も、石油・鉄鋼・非鉄・化学などの産業では、高値在庫が残っていることにより発生する「在庫評価損」が業績を押し下げることになりそうです。原料安効果が日本の企業業績を押し上げるのは、来年度(2017年3月期)となりそうです。

世界中に資源権益を保有する大手総合商社は、前年度(2015年3月期)に、高値で購入した資源権益の減損をたてなければなりませんでした。減損は前期で一巡したと見ていましたが、今年、資源価格が一段安になったことを受け、これからさらなる減損が必要になる可能性もあります。

(4)日本株の妥当PERは何倍か?

私は、日本株の妥当PERは17倍と考えています。詳しい説明は割愛しますが、PER17倍で配当性向30%だと、配当利回りは1.8%になります。低金利が長期化する日本で、1.8%は十分に魅力的な配当利回りと思います。私は、将来日本企業の配当性向は35%まで引きあげられると予想しています。そうなると、PER17倍で、配当利回りは2.1%となります。PER17倍の評価は妥当といえると思います。

ただし、現時点で、日経平均はPER15.3倍までしか評価されていません。日本は製造業が強いことが特色ですが、世界景気に不安が出てくる中で、世界景気の影響を受け易い製造業の比率が高い日本株に、高いPERが許容されにくくなっているのは事実です。

世界景気への不安が低下しないことには、日本株のPER評価も上昇しない可能性があります。

なお、妥当PER水準は、時代によって変わります。日経平均が38,000円の史上最高値にあった1989年12月ころは、東証一部の平均PERは約60倍でした。日経平均が約20,000円であったITバブルピーク時の2000年2月ころは、平均PERは約40倍でした。近年、平均PERは20倍前後で推移していましたが、今、さらに低下してきているところです。

来年より良いアドバイスができるように努力します。明日、来年の日経平均の見通しについて、書きます。よろしくお願いいたします。