先週は、米利上げ発表(日本時間17日午前4時)、日銀による金融緩和「補完策」発表(18日午後12時45分)と2つのイベントがあり、日経平均は激動の1週間となりました。

今週の日経平均は、週初は続落が見込まれます。18日にWTI原油先物が1バレル34.73ドルまで下がったことを嫌気して、NYダウが367ドル安の17,128ドルと約2ヶ月ぶりの安値まで下がったからです。CME日経平均先物は18,780円(18日の日経平均終値比▲206円)まで下がっています。

(1)日銀の緩和補完策発表で乱高下した18日の日経平均

18日は、日銀が緩和「補完策」を発表した12時45分から「追加緩和が出た」との解釈が広がって、日経平均は515円高の19,869円まで買われました。為替市場では1ドル123.53円へ円安が進みました。ところが、追加緩和と言えない内容の乏しさから日経平均にはすぐ売りが集中し、大引けは366円安の18,986円となりました。為替は1ドル121円台まで円高が進みました。

黒田日銀総裁は、「これは追加緩和ではない」と補完策であることを強調しました。

(2)日銀が発表した金融緩和「補完策」の中身

最大の目玉は、ETF(上場投資信託)購入額の年3000億円増額

現在、日銀は日本株のETFを年3兆円購入していますが、今回、それに3000億円の追加をしました。これまで日銀は、株価指数に連動するインデックスファンドを中心に購入していましたが、今回追加する3000億円は、設備投資や賃上げに積極的な企業の株式を組み込んだETFとしています。民間企業が設備投資や賃上げに積極的になることで、インフレ期待が高まるという意思をこめたものと思われます。

たとえ年3000億円であれ、金融資産の買い取り額を増やすわけですから、厳密にいえば、追加の金融緩和と言えないこともありません。発表直後は、「追加緩和が出た」との解釈から、円安株高が進みました。ただし、緩和内容が小粒であったことから、その後、円高株安に反転しました。

黒田日銀総裁は、緩和補完策であることを強調しました。この日銀のクセ球の読みに混乱が生じて、市場は乱高下しました。追加緩和が「あり」なら株高、「なし」なら株安と、単純に考える短期筋が、発表直後に株を買い上げ、その直後にあわてて売り急ぐ結果を生みました。

緩和補完策のもうひとつの柱は日銀の買う国債の平均残存期間長期化

これまで日銀は平均残存期間7~10年の国債を買っていましたが、それを7~12年に広げました。償還まで20年の超長期国債の買い取りを増やせるようにしました。

これで、10年金利(新発10年もの国債利回り:現在0.265%)だけでなく、20年金利(現在0.977%)のさらなる低下を促すものと考えられます。

このほか、REITの買い取り額増加なども、発表されましたが、いずれも追加緩和といえる内容とはなっていません。

(3)原油安が再び不安材料に

原油が下げ止まりません。原油だけでなく、銅・鉄鋼石・石炭など、資源価格が全面安となっています。資源安によって、世界景気が一段と悪化する不安を生じています。資源安は、資源を輸入する日本経済に本来プラスですが、短期的には、日本でもマイナス効果が先行します。海外に資源権益を多数保有する大手総合商社では、高値で購入した資源権益の減損が再び増える懸念があります。また、高値の原油在庫を保有する石油精製会社では、在庫評価損の拡大が、業績を悪化させる見込みです。

大量のエネルギー消費国である米国でも、急激な原油安は、短期的にマイナス効果を及ぼします。シェールガス・オイル産業で破綻が再び増加する懸念があります。

資源価格全体がいかに大きくさげているかは、CRB指数の動きを見ると、わかります。

CRB指数の動き:2000年1月~2015年12月(18日まで)

エネルギー・貴金属・鉱物資源・農産物などの価格から構成されるCRB指数(ドル建)の動きに、過去15年の天然資源の需給関係がよく表れています。2002年から2008年まで、新興国の成長によって天然資源への需要が急増しましたが、供給に制限があったために、資源価格が急騰しました。2008年には、リーマンショックが起こり、世界の需要が一時的に急減したために、価格が急落しました。ただし、リーマンショックから世界が立ち直り、需要が元に戻ると、2009年から2011年まで、資源価格は再び大きく上昇しました。ただし、2012年から2015年にかけて、資源価格は急落しました。現在、リーマンショック直後の安値を大きく下回り、2000年代初頭の水準まで落ちています。

中国など新興国の成長鈍化で、需要の伸び率が鈍ったことが資源価格が下がった理由とよく言われますが、それだけで、ここまで大きく下がったわけではありません。需要鈍化よりも大きな影響を及ぼしたのは、供給の増加でした。資源価格急騰は、資源開発の技術革新を招きました。世界中で、これまで取ることのできなかった資源が取れるようになりました。原油で言えば、深海やシェール層からの原油やガス採掘が可能になりました。今の資源価格急落の要因は、需要(鈍化)要因よりも、供給(増加)要因のほうが、より大きな影響を及ぼしています。

(4)日本株が下がったところは買い場と考えます

結論は、これまでと同じです。短期的には日経平均の下値リスクが払拭されていませんが、下がったところは買い場になると、考えています。