先週の日経平均は、1週間で379円下落し、19,504円となりました。12月3日(木)にECB(欧州中央銀行)が追加金融緩和を発表したものの、内容が市場の期待を下回ったため、3日は欧米株式が下落しました。その流れを受けて、12月4日(金)の日経平均は前日比435円安と急落しました。

今週の、日経平均は反発が見込まれます。4日発表の米雇用統計が好調で、4日のNYダウが369ドル高の17,847ドルと反発したことから、CME日経平均先物は19,710円まで反発しています。 ECBのドラギ総裁は、さらなる追加緩和に含みを持たせる発言をしており、ECBの追加緩和への失望は一時的と考えます。

(1) 節目として意識される日経平均2万円

日経平均週足:2015年1月5日~12月4日

(注:楽天証券経済研究所が作成)

11月後半~12月にかけて日経平均2万円が上値抵抗線として意識される状況が続いていました。先週は上値抵抗線から打ち返されて下がった形となりました。ECBによる追加緩和内容が期待を下回ったことが、日本株にも利益確定売りが増えるきっかけになりました。ただし、日本にとりたてて悪材料があったわけではありません。先週末NYダウが反発していることから、今週の日経平均は、2万円の節目近くへ戻ると予想しています。

ただし、2万円を抜けての上昇は難しいと考えられます。世界の金融市場が注目するイベントが来週16日(水)に控えているからです。それは、米FOMC(金融政策決定会合)の結果発表です。11月の米雇用統計が好調であったため、9年半ぶりの利上げ(FF金利の誘導水準の0.25%引き上げ)が予想されます。市場予想通り、利上げがあった場合に、世界の金利・為替・株式がどう動くか、世界が注目しています。来週に大きなイベントを控えているので、今週後半の日経平均は再び様子見で小動きになると考えています。

(2)11月の米雇用統計から読み取れること

12月4日(金)に発表された米雇用統計は、事前予想通り、強い内容でした。11月の非農業部門雇用者増加数は、前月比で21.1万人増加しました。景気好調と判断される20万人以上となったことから、米FRB(中央銀行)が16日に9年半ぶりの利上げを実施するためのお膳立てが整いました。

非農業者部門の雇用者増加数(前月比)の推移:2014年1月~2015年11月

(出所:米労働省)

過去2年間、米経済は好調で、中国の景気悪化で不安定になる世界景気の下支え役となってきました。米国内で大量の安価なガス・オイルが生産されるようになった「シェールガス・オイル革命」の恩恵が大きかったと考えられます。ただし、過去2年間でも、一時的に米景気が弱含む局面はありました。それが、上のグラフで赤矢印をつけた①・②・③です。

  • 2014年1-2月:大寒波の影響で米景気が一時的に停滞しました。
  • 2015年3-4月:原油急落の影響で米国内の石油産業の業績が悪化しました。またドル高により米輸出産業の業績も不調でした。この年も米国は大寒波に見舞われ、その影響もありました。4月以降、原油価格が反発したことから、米景気も回復基調に戻りました。輸出産業の不調は続きましたが、米経済は輸出依存型ではなく、内需の復調によって米景気も復調しました。
  • 2015年8-9月:原油価格が再び急落しました。また、中国やブラジルの景気悪化から、世界景気が減速しました。世界的に株が一時的に急落した影響もあり、米景気回復の勢いもやや弱まりました。ただし、10-11月に米景気は復調しました。安価な国産エネルギーの恩恵は大きく、世界的な景気減速の中でも、米景気は好調を保っていることを確認できました。

なお、以下のグラフからわかる通り、米国の完全失業率は、安定的に低下しつつあります。非農業部門の雇用者増加数は、米国の短期的な景況変化を表しますが、失業率は米経済の長期トレンドを示します。米国の雇用環境が改善するトレンドは変わっていないことがわかります。

米国の完全失業率の推移:2014年1月~2015年11月

(出所:米労働省)