4日、日本郵政(6178)・ゆうちょ銀行(7182)・かんぽ生命保険(7181)の3社が東証1部に新規上場しました。初値はいずれも公募価格を大きく上回り、好調なスタートとなりました。配当利回りが2~3%と高いことが評価されました。

(1)3社とも公募価格を大きく上回る

 

郵政グループ3社の4日初値と終値

(金額単位:円)

コード 銘柄名 公募価格 4日初値 公募価格→初値 4日終値 初値→終値
6178 日本郵政 1,400 1,631 +16.5% 1,760 +7.9%
7182 ゆうちょ銀行 1,450 1,680 +15.9% 1,671 ▲0.5%
7181 かんぽ生命保険 2,200 2,929 +33.1% 3,430 +17.1%

(注:楽天経済研究所が作成)

日本郵政(6178)は+16.5%、ゆうちょ銀行(7182)は+15.9%、かんぽ生命保険(7181)は+33.1%も公募価格を上回る初値をつけました。初値をつけた後も、買い優勢の展開が続き、日本郵政(6178)は、初値から終値まででさらに+7.9%上昇しました。かんぽ生命保険(7181)は、初値から終値まででさらに+17.1%上昇しました。ただし、ゆうちょ銀行(7182)の終値は初値対比▲0.5%と、初値とほぼ同水準でした。

(2)配当利回りの高さに注目が集まる

好スタートとなったのは、配当利回りが評価されたためです。日本郵政(6178)とゆうちょ銀行(7182)は、2018年3月期まで、純利益の50%を配当金として支払う方針を表明しています。かんぽ生命も、概ね純利益の40%程度を配当金に回す見込みです。

日本の上場企業は、平均すると連結純利益の30%くらいしか配当金を払っていませんが、郵政グループ3社は、株主への利益還元に熱心な会社ということができます。その結果、公募価格で見ると配当利回りの魅力が高くなっていました。

 

日本郵政グループ3社の予想配当利回り

コード 銘柄正称 公募価格での利回り 4日終値での利回り
6178 日本郵政 3.3% 2.6%
7182 ゆうちょ銀行 3.4% 3.0%
7181 かんぽ生命保険 2.5% 1.6%

(注:配当利回りは、会社が予想する配当金を年率換算して求めている。日本郵政とゆうちょ銀行は、2016年3月末に約半期分の配当金として、予想純利益の25%を支払う予定である。2017年3月期以降は、中間配当金と期末配当金を合わせて予想純利益の50%を支払う方針である。ここで、両社の配当利回りは、予想純利益の50%を配当金とする前提で計算している)

4日の株価上昇で配当利回りは低下しましたが、日本郵政(6178)とゆうちょ銀行(7182)については、まだ3%前後の高い利回りとなっています。

(3)過去の大型民営化上場では日本たばこ産業を除き初値が公募価格を上回っている

 

 

過去の大型民営化上場の初値騰落率

(金額単位:円)

上場年月 コード 銘柄名 公募価格 初値 初値騰落率
1987年2月 9432 日本電信電話 1,197,000 1,600,000 +33.7%
1993年10月 9020 東日本旅客鉄道 380,000 600,000 +57.9%
1994年10月 2914 日本たばこ産業 1,438,000 1,190,000 ▲17.2%
1996年10月 9021 西日本旅客鉄道 357,000 360,000 + 0.8%
1997年10月 9022 東海旅客鉄道 359,000 383,000 + 6.7%
1998年10月 9437 NTTドコモ 3,900,000 4,600,000 +17.9%

(注:楽天証券経済研究所が作成)

過去の大型民営化上場は、資金吸収額の大きさから事前に不安が出ることがありますが、初値では上昇することが多かったといえます。公募株の売りさばきが大変と考えられる大型上場では、公募価格が割安に決まる傾向があるからといえます。日本郵政グループ3社は、初値で15%~33%上昇しましたので、過去の大型上場の中で比較しても、かなり成績がよかった方に入ります。

ただし、1994年上場の日本たばこ産業(2914)だけは例外で、上場初値が公募価格を17.2%も下回ってしまいました。前年に上場した東日本旅客鉄道(9020)が、公募価格を57.9%も上回る初値をつけたため、日本たばこ産業(2914)は上場前から人気が過熱していました。そのために、公募価格が割高に決まりました。そのため、初値では大きく値下がりする結果となったのです。

日本郵政グループは、世界景気に不安がある中で3社合わせて約1兆4000億円もの資金吸収となることに、やや不安もありました。それだけに、公募価格は配当利回りで見て、割安に決まり、初値で順調なスタートを切ることができました。

郵政グループ3社の投資の考え方について、明日、さらに詳しく報告します。