9月中間決算の発表が始まりました。まだ発表済みの会社が少なく全体像はつかめませんが、個別銘柄では早くもポジティブ・サプライズ(良くて驚き)やネガティブ・サプライズ(悪くて驚き)があり、決算発表直後に株価が急騰・急落する銘柄が出ています。今日は、昨日に引き続き、注目の決算内容についてコメントします。

(1)マイナンバー関連株が上昇

22日にはマイナンバー関連株が上昇しました。マイナンバー・法人ナンバー関連の業務増加で好業績を発表したオービックビジネスコンサルタント(4733)の株価が、前日比10.1%上昇しました。その親会社のオービック(4684)も7.4%上昇しました。

また、米ヒューレット・パッカード社の情報セキュリティー事業の一部を約3億ドル(約360億円)で買収すると発表したトレンドマイクロ(4704)の株価は3.3%上昇しました。

  • 中小企業向けに強いオービックビジネスコンサルタント(4733)

    「勘定奉行」のCMで有名なオービックビジネスコンサルタント(4733)の特徴は、中小企業向けビジネスに強いことです。マイナンバーへの対応は、大企業で進んできていますが、中小企業にはほとんど手付かずのところが多数あります。既に、10月から個人へのマイナンバー通知が始まっています。勤務先企業は、従業員のマイナンバーを預かり、来年1月からの制度開始に備えなければなりません。今、最後の駆け込みでマイナンバー管理対策を講じなければならない状態にあります。中小企業向けに強いオービックビジネスコンサルタント(4733)に追い風が吹いています。同社が21日に発表した中間決算内容は以下の通りです。

  • オービックビジネスコンサルタント(4733)の9月中間決算実績と通期予想修正

    (金額単位:億円)

      中間決算実績 期初予想比 前年比
    売上高 103 +12 +7%
    営業利益 42 +8 +27%
    経常利益 50 +9 +21%
    純利益 33 +5.6 +3%

    (金額単位:億円)

      通期計画 期初予想比 前年比
    売上高 230 +23 +16%
    営業利益 365 +12 +19%
    経常利益 370 +13 +12%
    純利益 240 +8.5 +21%

    (出所:同社開示資料)

  • 情報セキュリティー技術強化が好感されたトレンドマイクロ(4704)

    従業員からマイナンバーを預かって管理しなければならない企業では、個人情報管理のセキュリティー対策を一段と強化する必要が生じます。トレンドマイクロ(4704)は、もともとパソコンやサーバーへの不正侵入を防止する技術を持つが、今回、米ヒューレット・パッカード社の情報セキュリティー事業の一部を買収することで、よりセキュリティー技術を強固にすることができると期待され、マイナンバー関連株としての期待が高まりました。

(2)プラント建設業には逆風

原油など資源価格が下落した影響を受けて、プラント建設業には逆風が吹いています。22日は、今期業績見通しの2回目の下方修正を発表したIHI(7013)の株価が前日比▲10.6%と急落しました。同社が21日に発表した中間決算内容は以下の通りです。

 

IHI(7013)の9月中間決算(会社予想)の推移

(金額単位:億円)

  5月8日時点 8月4日時点 10月21日時点 前年比
売上高 7,000 7,000 6,800 +14%
営業利益 320 200 0 ▲31%
経常利益 230 140 ▲40 赤字転落
純利益 140 60 ▲40 赤字転落
 

IHI(7013)の2016年3月期通期決算(会社予想)の推移

(金額単位:億円)

  5月8日時点 8月4日時点 10月21日時点 前年比
売上高 15,800 15,800 15,800 +9%
営業利益 900 750 500 ▲21%
経常利益 750 630 380 ▲33%
純利益 490 390 180 +98%

(出所:同社開示資料より楽天証券経済研究所が作成)

2度にわたる業績下方修正は、海外プラント工事の採算悪化が原因です。ノルウェー企業向けの石油生産設備の建造、シンガポール企業向けの資源掘削船などで追加コストが発生し、採算が大幅に悪化しました。IHI(7013)は、前期にもトルコやブラジルの案件で特別損失を計上しており、受注時の採算見通しの甘さを露呈しています。

は、2008年にも、海外で採算を度外視した無理な受注を続けた結果発生した損失を適切に計上していなかったことが判明し、監理ポストに入れられたことがありました。この時は、過年度遡及修正で、営業利益を約800億円も引き下げました。その後、体制を一新し、上場を維持しました。ところが、近年、プラント工事採算の大幅下方修正が続いていることを見ると、いまだに、採算度外視の受注活動を行う体質が変わっていないと考えられます。IHI(7013)