これから始まる9月中間決算発表に注目が集まっていますが、一足先に中間決算の発表を終えたグループがあります。2月決算の小売株です。小売業大手には2月決算が多く、8月中間決算(2015年3月~8月までの6ヶ月)の発表は、既に終わっています。

国内消費の不振が心配されていますが、小売業大手の8月中間決算は、まずまず良好といえます。

(1)2月決算小売業(時価総額上位12社)の8月中間決算実績

 
 

2015年8月中間決算の連結経常利益:実績の期初予想との比較

コード 銘柄名 実績 期初予想 実績/期初予想比
3382 セブン&アイHLDG 1,707 1,770 -3.6%
8267 イオン 729 NA NA
9843 ニトリHLDG 378 345 9.5%
2651 ローソン 408 360 13.3%
7453 良品計画 163 132 23.3%
2670 エービーシー・マート 243 236.4 2.8%
8227 しまむら 187 222.6 -16.2%
3086 J.フロント リテイリング 231 179 28.9%
8028 ファミリーマート8028 291 251 15.7%
7649 スギHLDG 134 126 6.4%
8233 高島屋 162 154 5.3%
8273 イズミ 144 143 0.8%

(出所:各社決算短信より楽天証券経済研究所が作成)
(注:イオンは中間決算予想を公表していない、上期実績は億円未満を四捨五入)

期初予想に足りなかったのは、セブン&アイHLDG(3382)としまむら(8227)だけです。セブン&アイはコンビニ(セブンーイレブン)好調(11%営業増益)、スーパーストア(イトーヨーカ堂など)不振(87%営業減益)が定着しています。百貨店事業(そごう・西武)も上半期は営業赤字で足を引っ張りました。「コンビニだけ好調」が長年にわたって続いています。今上半期もセブンーイレブンは計画を上ぶれた模様ですが、イトーヨーカ堂などの不振で、全体の利益は計画を下ぶれました。

コンビニ好調、スーパーストア不振は、小売業界全体の構造です。コンビニ大手のローソン(2651)・ファミリーマート(8028)の上半期は計画を上ぶれました。

一方、スーパーストアが中心のイオン(8267)は、金融事業(上期営業利益273億円)や不動産ディベロッパー事業(同209億円)が好調で全体の利益を牽引していますが、GMS(大型スーパー)事業は営業赤字(▲87億円)で足を引っ張っています。

しまむら(8227)の上期経常利益が、期初計画に足りなかったのは、夏場の天候不順(6月の気温が低すぎたこと)の影響です。夏物衣料品の販売が不振で、在庫処分にともなう値引き販売が拡大しました。ただし、もともと期初計画が高過ぎたともいえます。しまむら(8227)は、期初に高めの計画を出して、期中に下方修正する傾向があります。

日本企業は、全般に保守的(低め)の計画を公表し、あとから上方修正することを目指すことが多いが、小売業では、ありのままの本音の予想を公表する企業が多くなっています。また、しまむら(8227)やヤマダ電機(9831)のように、高めの予想を出して後から下方修正する傾向のある企業もあります。

インバウンド(訪日外国人観光客の消費)好調の追い風を受けて、百貨店は全般に好調でした。セブン&アイ傘下のそごう・西武は低調でしたが、大丸・伊勢丹を中心としたJ.フロント リテイリング(3086)、および高島屋(8233)の上期実績は、計画を上ぶれました。中国株下落で中国人観光客の買い物が減ることが懸念されていましたが、今のところその影響はほとんど見られず、インバウンド消費は好調を維持しています。

(2)2016年2月期通期経常利益では、最高益更新を見込む企業が多い

 

2016年2月期経常利益、上期(実績)および通期経常利益(会社予想)

コード 銘柄名 上期実績 前年比 通期会社予想 前年比 最高益
3382 セブン&アイHLDG 1,707 2.1% 3,620 6.0%
8267 イオン 729 49.9% 1,650 8.2%  
9843 ニトリHLDG 378 -1.1% 720 6.0%
2651 ローソン 408 3.0% 689 -3.9%  
7453 良品計画 163 37.9% 323 21.4%
2670 エービーシー・マート 243 2.1% 414.5 2.6%
8227 しまむら 187 -7.9% 474 22.8%  
3086 J.フロント リテイリング 231 28.8% 465 15.1%
8028 ファミリーマート8028 291 30.3% 487 14.5%
7649 スギHLDG 134 5.5% 230 5.0%
8233 高島屋 162 14.2% 380 5.8%  
8273 イズミ 144 5.3% 321 7.8%

(出所:各社決算短信より楽天証券経済研究所が作成)
(注:通期経常利益(会社予想)で最高益更新見込みの企業に○印をつけている)

小売業は近年、安定成長産業となっています。成長のドライバーは3つあります。

  • 海外事業の拡大:コンビニ(セブン&アイHLDG(3382))、雑貨(良品計画(7453))など海外で利益を拡大する小売企業が増えています。
  • 製造小売業:家具(ニトリHLDG(9843))など特定分野でPB(プライベートブランド)製品を拡大してコスト競争力を高めた小売業の成長が続いています。
  • ネット販売:上記リストにはありませんが、スタートトゥデイ(3092)・MonotaRO(3064)などはネット販売を主力に最高益更新が続きます。

(3)通期会社予想の達成見込み

 

通期経常利益予想に対する上期の進捗度、通期予想修正の有無

コード 銘柄名 上期進捗率 通期予想修正
3382 セブン&アイHLDG 47% 有 3,680→3,620↓
8267 イオン 44%
9843 ニトリHLDG 52%
2651 ローソン 59%
7453 良品計画 50% 有 302→323↑
2670 エービーシー・マート 59% 有 414→414.5↑
8227 しまむら 39%
3086 J.フロント リテイリング 50% 有 425→465↑
8028 ファミリーマート8028 60%
7649 スギHLDG 58%
8233 高島屋 43% 有 374→380↑
8273 イズミ 45%

(出所:各社決算短信から楽天証券経済研究所が作成)

上期で、1年の約半分が過ぎました。上期進捗率が50%以上ならば概ね順調な推移といえます。季節要因があるので一概には言えませんが、一般的に上期の進捗率が低いにもかかわらず、通期の予想を下方修正していない会社は、通期予想が過大になっている可能性もあります。

具体的には、しまむら(8227)は、上半期の経常利益が会社計画を下回り、進捗率が39%と低いにもかかわらず、通期予想を据え置いていますので、下期の売上げが思うように伸びなければ、計画未達になる可能性もあります。会社側は9月から値引き販売の効果で業績が好調なので、現時点では通期計画を達成できる可能性もあるとしています。

についても進捗率が低い(44%)にもかかわらず、通期計画を据え置いていますので、通期計画が努力目標になっている可能性もあります。イオン(8267)