3日の日経平均は86円高の18,182円でした。「日本株は買い場」の判断を継続します。ただし、中国経済への不安、米国FRB(中央銀行)による利上げへの不安があるため、今は上値の重い展開が続いています。

米FRBが利上げを判断する上で重視しているのは、米国の雇用情勢です。そのため本日(日本時間21時30分)米国で発表予定の8月の雇用統計に市場の注目が集まっています。

雇用統計が強いと、9月利上げの思惑が広がる可能性もあります。弱めの数字だと、世界景気に不安材料が増えていることもあり、利上げは当面ないという見通しが広がる可能性があります。年内の米利上げがないとの見方が広がれば世界の株式市場にプラスですが、為替市場で円高(ドル安)が進む可能性があることには、注意が必要です。

(1)日米長期金利差で見ると、円安(ドル高)はやや行き過ぎ

日本が異次元金融緩和を続けているのに対し、アメリカは年内に利上げを実施する方針を示しています。日本は緩和、アメリカは引き締め方向という、金融政策の方向性の違いが、これまで為替市場で円安(ドル高)が進む根拠とされてきました。

日米長期金利、長期金利差、ドル円為替レートの推移:2011年9月末―2015年9月3日

(出所:ブルームバーグより楽天証券経済研究所が作成)

ところが、アメリカの長期金利は、FRBが利上げ方針を示しているにもかかわらず、2014年以降は上昇していません。むしろ、低下傾向にあります。そのため、2014年以降は、日米長期金利差は拡大していません。

日米長期金利差と、ドル円為替レートの推移:2011年9月末―2015年9月3日

(出所:ブルームバーグより楽天証券経済研究所が作成)

2013年は、日米長期金利差の拡大にともなって円安(ドル高)が進んでいましたが、2014年以降は、日米長期金利差が縮小しているにもかかわらず、円安(ドル高)が進んでいます。結果的に、日米長期金利差から見ると、円安(ドル高)は進み過ぎと見えます。

別の見方をすれば、ドル円為替レートは、米利上げによる将来の米長期金利上昇を先に織り込んで、円安(ドル高)が進んできたと言えます。市場の思惑通り、今後米FRBが利上げを何回も実施して、米長期金利が上昇していけばこれまでの円安(ドル高)は正当化されます。一方、米FRBの利上げが当分ないと見られる場合には、円高(ドル安)が進む可能性もあります。

(2)購買力平価から見ると、円安はやや行き過ぎ

ドル円為替、購買力平価と実際のレート推移:2007年1月1日―2015年9月3日

出所:購買力平価(企業物価)は公益財団法人国際通貨研究所

ドル円為替レートは、長期的には購買力平価(企業物価)を中心にプラスマイナス20~30%の範囲で動いています。公益財団法人国際通貨研究所によると、2015年6月時点の購買力平価(企業物価)は、1ドル99.04円です。現在の為替レートは、そこから21.5%円安の水準にあります。

(3)当面1ドル115-123円の範囲で推移か

米景気が好調で、米FRBが利上げ方針を維持する限り、9月の利上げが見送られても大幅な円高(ドル安)が進む可能性は低いと考えます。当面、為替は1ドル115-123円の範囲で推移すると予想しています。

なお、前年度(2015年3月期)の平均為替レートは、1ドル109.91円ですから、今後、為替が1ドル115-123円の範囲で推移したとしても、日本企業は今期(2016年3月期)、大幅な円安メリットを享受することができます。