26日の日経平均は、570円高の18,376円でした。「日本株は買い場」の判断を継続します。中国経済への過度な懸念と、アメリカの利上げ強行観測がなくなれば、世界的に割安となった株のさらなる反発が見込めると考えています。

中国経済への不安が世界的な株安の引き金をひきましたが、それだけで今回の株安が起こったとは考えていません。アメリカFRB(中央銀行)が「利上げ時期が近づいている」と繰り返し示唆していたことも、世界的な株安を招いた背景にあります。今日は、アメリカの利上げ観測について、私の考えを述べます。

(1)アメリカは年内の利上げ方針を撤回すべきと考えます

世界経済を見渡すと、アメリカが今、利上げできる環境にないことは明らかです。利上げすべきでない理由は2つあります。

  • 原油急落によるデフレ圧力
    原油急落によって、世界的にインフレ率がさらに低下する見込みです。「インフレ予防」のための利上げは正当化できません。
  • 世界的な金融システム不安を招くリスク
    利上げ強行ならドルへの資金集中がさらに進み、ドル建て負債を抱える資源国や新興国の通貨がさらに下落します。そうなるとベネズエラ・ウクライナ・ブラジル・トルコ・南アフリカなど対外債務残高の大きい国の信用が低下します。

(2)アメリカも低インフレ国になりつつある

日米インフレ率比較: 総合指数とコア指数の前年比 2015年6月時点

消費者物価指数 日本 米国
総合指数 +0.4% +0.1%
(生鮮食品を除く)コア指数 +0.1% NA
(エネルギー・食品を除く)コア指数 +0.6% +1.8%

(出所:日本は総務省、米国は労働省統計局)

(注:エネルギー・食品を除く指数を日本では「コア・コア指数」と呼んでいる)

エネルギー・食品を含む総合指数で見たインフレ率は、日本が0.4%、米国が0.1%です。エネルギー価格の低下をインフレ率の計算に含めると、米国のインフレ率は、低インフレ国である日本よりも、低いことがわかります。

ところが、金融政策を決定するために、中央銀行が見ているインフレ率は、異なるものです。日本銀行は、(生鮮食品を除く)コア指数を使っています。これで見ると、前年比+0.1%で、日銀がターゲットとしている2%インフレを大幅に下回っています。このため、日銀に対し、「追加緩和が必要」との声が出ています。

一方、アメリカの中央銀行であるFRBは、(エネルギー・食品を除く)コア指数を政策目標としています。これで見ると、インフレ率は1.8%です。ターゲットである2%に近づいていることが、FRBが利上げを検討する根拠となっています。私は、米国経済や米国民の生活への影響が大きいエネルギー価格を除いて、インフレ率を議論しても、意味がないと考えています。エネルギーまで含めたインフレを議論すべきと考えています。エネルギーを含む総合指数で見たインフレ率は、原油急落によって今後さらに低下が見込まれます。この状況でアメリカは利上げを強行すべきでないと考えます。

(3)アメリカの9月利上げはないと予想、12月は五分五分か

一時は9月の利上げもあると考えられましたが、さすがに今の環境下で9月16-17日のFOMC(アメリカの金融政策決定会合)で利上げが実施されることはないと考えます。では、12月はどうでしょうか?12月に利上げする確率は、五分五分だと思います。12月になってもアメリカが利上げをする環境は整わないと予想していますが、それでも、「年内利上げ」を実施と繰り返し示唆してきた経緯から、12月に利上げを実施する可能性は残ります。12月に利上げした場合は、米利上げにともなう世界の金融市場の混乱を招かないために米FRBは、「来年以降に利上げを継続していく環境にない」ことを強調すると考えています。12月にFF金利の誘導水準(現在0-0.25%)を、0.25-0.5%まで引き上げ、その後、同水準に長期的に据え置いて様子見をすることになると思います。利上げが実施されても、1回で打ち止めとの見方が広がれば、世界の金融市場に大きな混乱を与えることはないと考えます。

米FF金利の推移:1971年1月―2015年8月

(出所:ブルームバーグ)