先週の日経平均は、1週間で205円下がって20,519円となりました。中国経済への不安・原油安ショックが、日経平均の上値を抑えています。先週は、中国人民銀行(中央銀行)が突然人民元の切り下げを実施したことから、中国経済の実態が予想以上に悪いとの思惑が広がり、世界的に株が下がりました。今週も、日経平均は20,000-21,000円の範囲で軟調に推移すると考えています。引き続き、中国景気失速懸念と原油安ショックが警戒されそうです。

ただし、企業業績の拡大によって日経平均が年末に22,000円へ上昇する予想を継続します。下がったところは買い場になると考えています。

(1)今朝8時50分に発表予定の日本の4-6月GDP(速報値)に注目

事前の市場予想では、中国向け輸出不振に加え、消費回復の遅れが影響して4-6月GDPは前期比年率▲1.9%であったと考えられています。7月以降は、景気回復が続いている見込みなので、事前予想通り4-6月がマイナスでも株式市場への影響は限られると考えています。ただし、日本の景気回復の勢いが強くないとの認識が外国人投資家に広がると、外国人の日本買いの意欲に水を差す可能性はあります。

(2)日経平均は20,000~21,000円の範囲で上値が重くなってきている

日経平均推移:2015年2月2日~2015年8月14日

(注:楽天証券経済研究所が作成)

4-6月期決算発表がほぼ終了しました。日本経済新聞社の集計では、4-6月期の経常利益は、前年同期比24%増加しました。4-6月の企業業績は好調であったと言えます。企業業績の拡大期待を背景に、日経平均が2万円前後に下がれば、押し目買いが入ると予想されます。ただし、中国など新興国の景気が予想以上に減速してきていることから、日経平均が21,000円に近づくと、利益確定売りが増えて、上値が重くなる展開が続いています。

(3)先週はサプライズとなる人民元切り下げが世界的な株安を生じる

先週は、人民元に振り回されて、世界の株が乱高下しました。8月11日、中国人民銀行は人民元の対ドルレートの基準値を1.8%引き下げると発表しました。これは、金融市場にとってサプライズでした。「中国政府が、減速する中国景気を支えるために、ついに通貨安を誘導して輸出ドライブをかける方針に出た」との解釈が広がり、世界的に株が売られました。人民元は対ドルで11日から3日続けて合計4.6%切り下げられ、世界的な株安を招きました。ところが、その後、中国人民銀行は、人民元の切り下げの終了を示唆しました。そこで通貨安競争は回避されるとの解釈が広がり、世界的に株が反発しました。

中国人民銀行は、人民元切り下げの目的を「(人民元レートを実勢価格に近付け)人民元の国際化を進めるため」と説明しています。ただし、その説明をそのまま信じる人は少なくなっています。これまで人民元を実質ドルに連動させて調整してきたために、ドル高にともなって人民元が割高になり中国の輸出競争力を低下させていることを、中国政府が懸念していると考える方が自然です。

中国人民銀行は13日、「(旧来の)基準値と市場レートとの食い違いはほぼ是正された」と発言し、元の急落は一段落したとの認識を示しました。人民元の切り下げは一服したと考えられますが、中国景気悪化の不安は払拭されていません。しばらく中国発の悪材料に、注意が必要です。

(4)再び、資源安ショックを警戒

中国景気失速懸念を受けて、原油が7月から再び大きく下がりました。先週は、米WTI原油先物が1バレル41ドル台まで下落しました。原油だけでなく、石炭・鉄鉱石・金など、コモディティ価格が全面安となっています。その影響で、資源国の景気が一段と悪化する可能性が出ています。

日米欧先進国は、エネルギー価格の低下で最終的にはメリットを受けますが、短期的にはデメリットが先行する可能性があります。特に、米国では、シェールオイル業者の破綻や、石油関連産業の業績悪化が出る可能性があり、注意を要します。