奇盛集団を子会社化、うま味の薄い買収で事業戦略に不透明感

現地コード 銘柄名 株価 情報種類
03377 遠洋地産(シノ・オーシャン・ランド・ホールディングス)  5.92 HKD
(07/12現在)
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遠洋地産は7日、貿易・不動産投資会社の奇盛集団(00174)の株式69%を買収する計画を発表した。買収額は4億7400万HKドル(1株当たり1.542HKドル)。これを機に遠洋地産は奇盛集団の事業再編を行い、不動産投資および証券投資を重点事業として貿易事業を分離する。奇盛集団の時価総額は8億HKドル。

取得価格は継続事業の2009年末時点の簿価に対し37%のプレミアムが加算されている。継続事業の簿価は現在の市場価値に近いものとみて、BOCIはこの買収の価値を疑問視。以下の理由を挙げている。
1)投資不動産の再評価益は2009年末の簿価に織り込み済み。2010年上期での変化は期待できない。
2)保有証券の価値は2009年末で1億700万HKドル。遠洋地産の出資比率69%に換算すると7400万HKドルと、継続事業の簿価のわずか21%。また、現在の低調な株式市場において2010年上期の評価改善の可能性は少ない。
以上により、BOCIは遠洋地産がこの買収に過剰なプレミアムを支払っていると判断している。

今回の買収は4億7400万HKドルという小額な投資であるため、同社の財務状況に与える影響は小さく、個人株主の承認を得る必要もない。遠洋地産は奇盛集団を不動産開発および不動産投資の資金調達プラットフォームとして利用する意向を示しているが、BOCIはこの買収理由が納得のいくものではないと指摘。その理由を以下に示している。
1)遠洋地産は住宅開発事業のパートナーを必要とする企業ではない。不足するブランド力や経験を補うためパートナーとともに不動産ファンドを立ち上げるケースは多いが、遠洋地産は不動産開発に豊富な経験を持つ大手国有企業である(主要事業ではない商業施設開発における提携であれば多少意味がある)。
2)遠洋地産はすでに名の知れた上場企業であり、資金調達の実績もある。資金調達能力や過去の実績で劣る小規模企業の奇盛集団の力を借りる必要はない。
3)規模から判断して奇盛集団が今後、遠洋地産の事業に影響を与えるような買収を行う可能性は低い。

BOCIが5月27日付のレポートで指摘したとおり、遠洋地産には現在、株価上昇を抑えるいくつかの要因がある。
1)同社保有用地の資産価値のおよそ50%を占める北京における販売が鈍化している。
2)2010年上期の販売高は推定で75億元にとどまり、通期目標である200億元の達成が不安視されている。
3)同社に16%を出資するコスコ・インターナショナルによる保有株式売却の可能性が取りざたされている。

今回の買収は規模が小さいものの買収目的が不明瞭であり、同社の今後の事業戦略に不透明感が増した。同社の株式は現在、2010年予想NAVに対し50%のディスカウント水準と割安だが、各種の不安要素が株価を抑えている。こうした点を踏まえ、BOCIは同社の株価の先行きを中立の見方に据え置いている。