23日の日経平均は381円高の20,809円と大幅上昇し、ITバブル相場(2000年4月)の高値(20,833円)に急接近しました。22日にギリシャが再提出した財政改革案にEUが好意的な見解を示したことから、ギリシャへの金融支援が延長されると見通しが広がり、日本株上昇のきっかけとなりました。ギリシャ問題への不安で6月に入ってから日本株を売っていた外国人投資家が、ギリシャ不安がやや後退したタイミングで日本株を買い戻したことが、日経平均の大幅高につながりました。

(1)日経平均がITバブル高値に接近

日経平均推移:1989年1月~2015年6月23日

(2)6月は外国人の売買で日経平均が乱高下

6月前半は、外国人の売りで日経平均は2万円割れまで下げました。6月後半に入り、外国人が買い戻しに入ると、日経平均は一気に20,809円まで上昇しました。外国人投資家は、売る時は下値を叩いて売り、買う時は上値を追って買ってくる傾向が強いので、日本株の短期変動は、外国人売買で決まることが多くなります。

外国人投資家が、ギリシャの信用不安をネタに、6月前半に日本株を売り、後半にギリシャ不安の緩和で日本株を買い戻したので、日本株もそれに従って乱高下しました。

日経平均6月の動き

私は、本欄で述べてきた通り、ギリシャ問題がどうなろうと、日本への影響は小さいと考えています。したがって、ギリシャ問題で日経平均が2万円を割れた後、6月19日に「日経平均2万円割れ、ここは買い場と判断します」と意見発信しました。ただ、その後の上昇の速さは、私の想定を上回っています。日本株の組み入れが低い外国人投資家が、少し焦って日本株を買ってきている印象です。

(3)2015年末の日経平均見通しを引き上げ

日経平均の年末予想を、21,000円から22,000円へ引き上げました。企業業績の見通しが想定以上に改善していたので、もう少し早く引き上げるべきでした。見通し引き上げの理由は、以下の3点です。

  • 日本の企業業績見通しを引き上げ
    2016年3月期の東証一部(除く金融)経常増益率予想を、+15%から+18%へ引き上げました。円安・原油安の恩恵が顕在化し、日本の景気・企業業績の回復がより鮮明になりつつあることを考慮しました。
  • 米利上げがあっても世界金利のさらなる上昇余地は小さいと考えられること
    年内に米利上げが想定され、その前に世界的に株が調整するリスクを警戒していましたが、アメリカの成長率・インフレ率低下に伴い、米利上げによって引き起こされる世界の金利上昇余地が小さくなったと判断しました。米利上げは引き続き警戒材料ですが、日本株への影響は、当初想定よりも小さくなると考えます。
  • コーポレートガバナンス向上が日本株への外国人投資家の投資意欲を引き上げていること
    ROE(自己資本利益率)引き上げを目標として、自社株買いを実施する企業が増えてきたことが好感されます。ROEが継続的に低すぎる企業の経営者再任議案に、機関投資家が反対票を投じるようになった効果が出ていると思います。また、日本企業の財務改善が進み、実質無借金になる企業が増えていることも、株主還元に前向きになる企業が増えている背景にあります。