11日の日経平均は336円高の20,382円と大幅に反発しました。日本の景気回復が鮮明になりつつある中、押し目では日本株を買いたいという需要の強さを再確認しました。世界的な長期金利上昇、ドル円為替レートの乱高下など不安材料はあり、一本調子の上昇にはならないと思いますが、押し目では日本株を買い増し方針でいいと思います。

(1)乱高下するドル円為替レートは、引き続き、要警戒

ドル円為替レートの動き:2015年1月1日-6月11日

ドルは、5月25日のイエレン米FRB議長の発言「予想通り年後半に米景気が回復すれば年内利上げが適切」から上昇ピッチを強めました。ところが、6月10日の黒田日銀総裁発言「ここからさらに実効レートが円安に触れることはありそうにない」から、ドル安(円高)に反転しました。6月11日は、ややドル高(円安)に戻しました。6月12日の日本時間午前6時時点では1ドル123.45円となっています。

円安が、今期の日本企業の業績を押し上げる重要なドライバーなので、為替乱高下は、日本株を乱高下させる要因となります。楽天証券経済研究所では、1ドル120円を前提に、今期(2016年3月期)に東証一部3月期決算企業(金融を除く)の経常利益が15%増加すると予想しています。1ドル120円前後を越える円高が進まない限り、企業業績の拡大加速の方向性は変わらないと考えます。なお、為替は当面、1ドル120~125円のレンジで推移すると見ています。

(2) 米金利のさらなる上昇余地は小さいと考える

イエレン発言「年内の利上げが適切」を受けて、米長期金利が上昇しています。米国および欧州の長期金利上昇が、世界の株式相場を不安定にしています。

私は、米長期金利のさらなる上昇余地は小さいと考えています。それは、原油安を受けて、アメリカの消費者物価指数(エネルギーを含む総合指数)が、4月時点で前年比▲0.2%とマイナスになっているからです。日本と同様の低インフレ国になっているアメリカで、長期金利がどんどん上がっていく余地は小さいと考えています。

(3)アメリカも低インフレ国になりつつある

アメリカには2つの消費者物価指数があります。エネルギー・食品などすべて含む総合指数と、エネルギー・食品を除くコア指数です。

アメリカの消費者物価指数、総合指数とコア指数の前年比:2010年6月-2015年4月

(出所:ブルームバーグ)

どちらの消費者物価指数を見るかによって、アメリカのインフレ率のイメージは異なります。米FRBが金融政策を決定するに際して見ているのは、コア指数(上のグラフの緑の線)です。一般的にエコノミストが、アメリカのインフレ率を議論する際に引き合いに出すのも、コア指数の方です。これで見ると、アメリカのインフレ率は2012年以降1.5~2%で安定しています。

ただし、エネルギー・食品を含む総合指数(上のグラフの青い線)で見ると、イメージが大きく異なります。エネルギー価格乱高下の影響で、総合指数で見たインフレ率は、足元マイナスに落ち込んでいます。国民生活や経済活動に直接影響を及ぼすのは、総合指数のほうなので、私は、こちらのインフレ率もしっかり見ていく必要があると思います。

原油価格が今、リバウンドしているので、先行き総合指数もある程度、反発すると思います。ただし、原油は下げ過ぎの反動で上昇しているものの世界的な供給過剰は簡単には解消せず、原油は当面1バレル60~70ドルで推移すると見ています。原油の1バレル70ドルを越える上昇はないと予想していますので、総合指数で見たアメリカの低インフレは今後長期化すると思います。

(4)米長期金利の上昇にはいずれ歯止めがかかると予想

アメリカも低インフレ国になりつつあることが十分に理解されれば、長期金利の上昇にもいずれ歯止めがかかると思います。アメリカの長期金利が反落した場合に、日本株に与える影響は2つ考えられます。

  • 米金利低下を好感して世界的に株価が上昇→日本株にもプラス
  • 米金利の先高観解消で、ドル高(円安)局面が終わり円高に→日本株に短期的にマイナス

ただし、1ドル120円を越える円高とならない限り、日本株の上昇トレンドは変わらないと思います。