5月29日の日経平均は11円高の20,563円で、ついに11営業日連続の上昇となりました。日経平均の11日連続上昇は、27年ぶりです。ただし、11連騰中の1日の平均上昇幅は90円(0.45%)と、あまり大きくありません。全員強気の急上昇相場ではなく、気迷いがある中でじりじりと上昇が続く「匍匐(ほふく)前進」相場となっています。

日経平均は、目先、調整すると考えられます。5月29日のCME日経平均先物は20,455円と、先週の日経平均終値より108円安くなっています。

(1)過熱感の出ない11連騰

日経平均日足:2015年1月4日―5月29日

ご覧いただくとわかる通り、毎日の日経平均上昇幅が小さいので、11連騰でも25日移動平均線からの上方かい離率はあまり大きくはなっていません。5月29日で2.9%です。過熱感の出にくい上昇になっています。

(2)先週のドル建て日経平均は4日連続安

日本株の上昇を牽引しているのは、外国人投資家です。先週も、一旦下げていい局面で日経平均が上がり続けたのは、外国人投資家の買いが続いたからです。

外国人投資家にとって重要なのは「ドル建て日経平均」です。【注】先週後半は、円安が進んだために、ドル建て日経平均が下落しました。下がることで、外国人の押し目買いを誘発しました。

日経平均とドル建て日経平均の前日比騰落率:5月29日までの11営業日

日付 日経平均 ドル建て日経平均
5月15日 0.83% 0.48%
5月18日 0.79% 0.67%
5月19日 0.68% 0.41%
5月20日 0.84% 0.03%
5月21日 0.03% -0.10%
5月22日 0.30% 0.61%
5月25日 0.73% 0.01%
5月26日 0.11% -0.47%
5月27日 0.17% -0.33%
5月28日 0.38% -0.17%
5月29日 0.05% -0.16%

表を見ればわかる通り、日経平均は11営業日連続で上昇しています。ところが、ドル建て日経平均は、11営業日中の5営業日で下落しています。日経平均が上昇しても、円がドルに対して安くなったため、ドル建て日経平均はマイナスになることがありました。特に先週、火曜日から金曜日は、ドル建て日経平均は4日連続安となっています。下がることで、外国人の押し目買いを誘いました。

【注】外国人投資家は手持ちのドルを円に転換してから日本株に投資するのが普通です。投資を終了する時は、日本株を売って再びドルに転換します。したがって、ドル建てで見た「ドル建て日経平均」のリターンが、外国人投資家にとって大切です。円安になると、ドル建て日経平均は下がります。

(3)米景気失速が続くリスクに要注意

目先、とりたてて悪材料はなく、日経平均の「匍匐(ほふく)前進」が続く可能性もありますが、好事魔多し。相場のムードを悪化させる要因がないか、目配りが必要です。今一番警戒すべきは、米景気の失速が長引くリスクです。

先週末発表された米国の1-3月GDPの改定値は、前期比年率▲0.7%でした。今年3%の高成長が期待されている米国が、なんと1-3月はマイナス成長だったわけです。現時点で、市場コンセンサスは「1-3月の米景気失速は一時的で、4月以降、米景気は高成長に戻る」となっています。米景気はすぐ回復に向かうことを前提に、NYダウは大きくは下がらずに済んでいます。

ところが、米景気失速が、長引くリスクも出てきました。もし、そうなると、米国株の下落リスクが高まります。米国株の足元の平均PERは19.5倍とやや割高になっているからです。4月以降の米景気回復→米企業業績のモメンタム回復期待からNYダウは値を保っていますが、力強い回復が見込めないとなると、下落に転じる可能性があります。

NYダウの日足:2015年1月6日―5月29日

(4)1-3月の米景気を失速させた要因

4月以降は続かない一時的要因と、4月以降も続く構造的要因が、あります。

  • -3月の大寒波の影響 → 4月以降は続かない。
  • 北米西岸の大規模港湾スト → 既に終息
  • 原油急落による米シェールオイル・ガス業界の悪化 → 4月以降も継続しそう
  • ドル高による輸出業界の悪化 → さらなるドル高の進展で悪化が続きそう

果たして、4月以降の米景気回復は期待通り実現しつつあるのか、今週発表予定の米景気指標に注目が集まります(以下に掲載)。

  • 6月1日:5月のISM製造業景況指数・4月の米消費支出
  • 6月2日:5月の米新車販売台数
  • 6月3日:5月のISM非製造業景況指数・4月の米貿易収支
  • 6月5日:5月の米雇用統計