最近、大手銀行株の上昇が目立ちます。割安な高収益株として、引き続き大手銀行株に注目できると考えています。

(1)出遅れの大手銀行株

日経平均は2万円台に乗せていますが、個別銘柄では、まだ上昇率が低い「出遅れ株」が多数あります。中でも、私が投資対象として有望と考えているものに、大手銀行株があります。

 

3メガ銀行のリーマンショック前からの株価推移、日経平均との比較:2007年1月~2015年5月20日

(注:2007年1月末の値を100として指数化、楽天証券経済研究所が作成)

リーマンショック前の2007年からの相対株価を見ると、大手銀行の株価が出遅れていることがわかります。日経平均はリーマンショック前の高値(2007年7月9日の18,261円)を越えて2万円台まで上昇していますが、大手銀行株は2007年台の株価を大幅に下回る水準にあります。

(2)株価バリュエーションの低い大手銀行株

大手銀行株は、PER(株価収益率)・PBR(株価純資産倍率)・配当利回りなどの株価指標から見て、割安です。

 

大手銀行の株価バリュエーション:5月21日時点

コード 銘柄名 株価:円 配当利回り PER:倍 PBR:倍
8306 三菱UFJ FG 906.8 2.0% 13.4 0.8
8316 三井住友FG 5,405.0 2.8% 9.7 0.8
8411 みずほFG 248.8 3.0% 9.8 0.8
8304 あおぞら銀行 482.0 3.8% 13.1 1.4
8308 りそなHLDG 682.7 2.5% 9.4 1.0
8309 三井住友トラストHLDG 562.3 2.5% 9.4 1.0

(注:PERは各社予想利益から計算、三菱UFJ FGおよび三井住友FGは両社目標利益から計算、楽天証券経済研究所が作成)

 

 

【比較】 株価指数 21日 配当利回り PER:倍 PBR:倍
東証株価指数(TOPIX) 1,646.80 1.7% 17.4 1.4

東証株価指数(TOPIX)の配当利回りが1.7%であるのに対し、大手銀行株の配当利回りは2~3%台と高めです。大手銀行のPER・PBRは、TOPIXより低く、株価指標から見た大手銀行株は割安といえます。

(3)大手銀行の高収益体質を改めて見直し

2015年3月期決算で、3メガ銀行の収益力の高さが改めて見直されました。

  • 三菱UFJ FG(8306):純利益が1兆337億円で前年比5%増加して最高益を更新
  • 三井住友FG(8316):純利益が7,536億円で、前年比10%の減益
  • みずほFG(8411):純利益が6,119億円で、前年比11%の減益

大手銀行は成長性は必ずしも高くありませんが、それでも収益力の高さと、健全な財務内容が注目できる局面になってきています。

(4)3メガ銀行に、成長の芽も出ている

3メガ銀行には、新たな成長の芽も出てきています。2015年3月期決算でわかったことは、海外利益が成長しつつあることです。3メガ銀行は、健全な財務を活用して、海外での事業拡大を進めてきました。前期は大幅な円安が進んだために、海外の外貨建て利益の円換算額が膨らみ、純利益の拡大に寄与した面もあります。

三菱UFJ FG(8306)では、買収したタイのアユタヤ銀行が382億円、米金融大手モルガン・スタンレーが748億円、米持株会社が892億円、それぞれ連結純利益に貢献しています。三井住友FG(8316)では、国際部門の業務純益(注:連結粗利益―営業経費+持分法投資損益)が17%増の3,669億円となりました。国内で預貸金利ざや低下が続いていますが、海外では高めの利ざやが取れることが貢献しています。みずほFG(8411)も海外での利益拡大を目指しています。

今後、3メガ銀行は、以下の2つで利益を拡大させていくと予想します。

  • 海外事業利益:アジア・米国などで金融事業拡大を進める見込み
  • ノンバンク事業利益:証券・リース・消費者金融など含めユニバーサルバンクとして成長

欧州の銀行は今、不良債権問題で苦しんでいますが、日本の3メガ銀行は、財務内容が安定し攻めの経営に転じつつあります。欧米やアジアで業務を拡大するとき、財務内容で優位にたっていることが有利に働くようになってきています。